自社のシステムも顧みずに低価格に追随することが悪である
2015年3月5日 未分類 0
安売りは悪だと言うが、低価格品そのものが悪とは思わない。
結論からいうと無理やりに自社内のシステムも顧みずに低価格に合わせた商品が悪である。
例えば、低価格衣料品だとユニクロがやり玉にあがるが、はっきり言ってユニクロが悪だとは思わない。
低価格衣料品自体はユニクロのはるか以前から存在する。
ダイエーやジャスコ(現イオン)、イトーヨーカドーなどの量販店が低価格衣料品をすでに販売していた。
バブル期にはニチイ(現マイカル)が随分と躍進してハデな打ち出しを行っていた。
量販店価格で百貨店のようなライフスタイル提案、ざっというとこんな感じだった。
これらの量販店向けの卸売りメーカーも多数存在した。
ジーンズというアイテムだけで見ても、小泉アパレル、カイタックインターナショナルなどである。
しかし、バブル崩壊とともに量販店も勢いを失った。
量販店の衣料品は業界の秩序を覆すほどの売上高には至らなかった。
また、DCブランドなどの高額トレンド品と、量販店の低価格衣料品はあきらかにデザイン自体が異なっていた。
低価格品が高額トレンド品のコピー商品を売ったこともあったが、上手くコピーできていなかった。要するに劣化コピーだったといえる。
ところが90年代後半にユニクロの躍進によって、低価格衣料品に注目が集まった。
徐々にではあるが、高額トレンド品との「見た目の差」も縮まり、2000年代半ばにはほぼその差はなくなった。
低価格衣料品のアレンジが上手くなったことと、高額トレンド品の感性の低下と両方の要因があるといえるだろう。
低価格衣料品というジャンル自体は80年代からすでに存在しており、各量販店、そこに向けて卸売りする量販店メーカーともに大いに売り上げ拡大を目指していたが、果たせずに終わった。
ユニクロがそれを実現した。
個人的にはそのように見ている。
このあたりの見方に関してはファッション業界の人とはあまり合致しない。
別に全員と合致する必要などさらさらないのだが、彼らのいう「低価格悪玉論」は極端すぎて筆者にはお話にならないように感じられる。
で、この「安売りは悪」という意見に関して、上手く説明してくれているブログがあるのでご紹介したい。
http://ameblo.jp/ryokandayo/entry-11996082944.html
旅館を経営している方なので旅館を題材に説明しておられる。
業界では1泊2食付で6000円という低価格チェーン旅館が増えているそうだ。
しかし、ブログ主はこれを「適正価格」だと指摘している。
理由は、すべてセルフに近いからだ。
布団の上げ下げはセルフ、食事はバイキング、チェーン店化で物流を効率化、さまざまなことを簡略化して6000円で利益を上げている。
個人的にはスーパー銭湯に泊まれる機能をプラスした業態だと感じているとのことだ。
スーパー銭湯の入浴料が700円前後だから、そこにバイキングや布団代などを加味しても6000円は逆に高額商品になるとも指摘している。
ただ、個人経営の旅館がここに追随しても勝ち目もないし、してはいけないとまとめておられる。
そう。安売りは悪だが、それは個人旅館が利益を削ってまでこのチェーン店に追随することが悪だという説明であり、この説明は相当に分かり易いのではないかと感じる。
衣料品に翻って見れば、別にユニクロがなくても70年代後半から量販店向けの低価格衣料品は存在した。
90年代半ばになると、量販店にもそこそこ・ほどほどトレンドっぽい商品も並びだした。
また放っておいてもH&Mは上陸しただろうから、衣料品の値崩れは起きただろう。
ユニクロがなければ衣料品が高値を維持できたというのは単なる妄想にすぎないのではないか。
これらの低価格衣料品が悪なのではなく、自社システムを顧みず利益を削ってまで低価格に追随した小規模メーカー、小規模小売店が悪なのだといえる。
生産数量の違いから小規模メーカーはどうやっても量販店メーカーやグローバルSPAと価格で対抗することはできない。小規模店も同じである。
ならばそこで価格以外の何かを打ち出す必要があったが、「並べたら売れる」という状況の高度経済成長とバブル期を経験してしまった当時の経営者の多くはそこに至らなかった。
日本人の全員が高価格衣料品を身にまとうことなどは今後もあり得ない。
当たり前だが、そこまで衣料品に興味のない人も大勢いる。
そういう大多数の消費者はほどほど・そこそこの低価格衣料品で構わないし、そこを狙った商売が成立するのも必然である。
高価格衣料品を売りたければ、そういう少数のファンを如何に作るかが重要になる。
「低価格衣料品=悪」とみなしているうちは、アパレル業界はまだまだ苦戦を続けるだろう。