高感度高価格子供服セレクトショップが大規模では成立しにくい理由
2024年6月21日 企業研究 3
こんな記事を見かけた。
新生「アッシュ・ペー・フランス」会社再編でどう変わる?復活に向けた2つの新戦略 (fashionsnap.com)
新生 アッシュ・ペー・フランスの新戦略は大きく2つ。1つ目は、キッズ市場への進出だ。同社は、キッズセレクトの新業態「アンコー!(encore!)」をスタート。
(中略)
2つ目は、「食」に関する事業の推進。同社は、新体制に移行してから顧客のライフスタイル全般に関わるアプローチとして、「衣・食・住」のカテゴリー提案を進めている。
とある。
ご存知の通り、アッシュ・ペー・フランスは2023年3月に経営破綻し会社更生法を申請している。
2013年2月期には110億円の売上高があったが、2022年2月期には49億6400万円にまで減収していた。売上高の多寡だけでは何とも言えないが、コロナ禍があったとはいえ、たった9年間で売上高が半減未満にまで低下していれば経営はかなり苦しかっただろう。コロナ禍以前にも相当経営が悪化しているとの報道が何度も出ていたため、経営破綻は当然の結果ということになる。
ここで気になるのが、「復活」「再建」というキーワードだが、どのような状態を目指しているのだろうか?具体的に売上高はどれくらいで、営業利益はどれくらいを目指しているのだろうか?
具体的な数値目標が分からないので何ともいえない部分がある。もちろんアッシュ・ペーは非上場企業なので開示義務はない。
仮に、あくまでも仮定の話だが、2013年度の売上高110億円を目指していたり、それ以上の売上高を獲得することを目指しているとするなら、高感度高価格キッズセレクトショップと飲食という2つの新機軸ではその達成は難しいのではないかと思える。
当方はこの2つはビッグビジネスにはなり得ないと考えているからだ。
飲食の方は門外漢なので省きたいが、本文を読むとオシャレカフェっぽい。コーヒーが770円なのだが画像に映っているのはマクドやスタバなどと似たような紙コップである。紙コップのコーヒーがいくらウガンダ産のコーヒー豆を使っているとはいえ770円という価格は高いと言わざるを得ない。この価格設定と紙コップではそうそう店舗数は広がらないだろう。
続いて「高感度高価格キッズセレクトショップ」だが、こちらも店舗数はそう簡単には広がらないだろう。恐らく大人向けの高感度高価格セレクトショップよりも広がりにくいと当方は見ている。
アッシュ・ペー・フランスの広報担当者は「国内を見渡しても、高感度のキッズセレクト業態はかなり少ない。子どもにおしゃれしてほしいという親御さんの需要は感じているので、ここにビジネスチャンスがあると思う」と話す。
とあるが、既存業態が少ないのは、そこに商機が見いだせないからである。焼野原からの復興とか最貧国からの経済発展中とか、そういう状況で「あれが無い」というのは本当に無い場合が多い。しかし、成熟社会において「無い」というのはいろいろ試した結果のすえに上手く行かないから「無い」という場合が多い。
高価格な子供服に需要が無いわけではないが、決して多くない。むしろ需要は少ない。
かつての子育て経験から言うと、現在のライフスタイルと照らし合わせると子供に「高感度」「高価格」な服を着せる回数はかなり少ないといえる。
現在、婚活市場(結婚相談所など)に置いてババア高齢婚活女性が「過剰に専業主婦を希望」して男性から超敬遠されてしまっているという話が婚活掲示板などで出回っていることを見てもわかるように、共働きが標準である。特に子育て世代の若い夫婦なら尚更共働きである。
となると、子供は必然的に週4~6日間は保育園に通うことになるが、保育園では着せ替えしやすく動きやすい服装が求められる。おまけに子供はグランドで遊んだりするので必ず汚れるから洗濯替え用も必須である。
そうなると、ベーシックで安い子供服を買い込むことになる。
子供の休日は週3~1日、この少ない休日のために高価格高感度な服を買い与える若い親はそんなにいないだろう。保育園通いを把握している祖父母も買い与えないだろう。
おまけに子供は身体が成長するので、大きめの服を着せていたとしても1年か2年で必ず買い替えなくてはならない。たった1年しか着られない服に大枚をはたく親・祖父母はそんなにいないだろう。
そういう親・祖父母ももちろんゼロではないが、かなり人数は少ない。そうなると、この高価格高感度キッズセレクトショップの支持者・顧客は少ないということになる。さらに言えば少子化(というより結婚しない人が増えた)で産まれる子供の数は減り続けている。利用人口そのものが減り続けているというわけである。
要は市場規模が大人の高価格セレクトショップよりも格段に小さい。小さいがゆえに各社が挑戦してきて撤退していったというのが現状である。
個人的には高感度高価格キッズセレクトショップというと、かつて大阪を拠点に一時期は拡大路線を走っていたエーキャンビーを思い出す。
難しいといわれたこの市場で店舗数を増やしていったが、創業者がたしか2008年ごろに急死され、2016年に事業譲渡となったがその後、2018年にはインスタグラムで閉店の挨拶が掲載されている。
創業者が急死される前から経営難だという噂があったのだが、死後もよく持ちこたえられたと思ってしまう。
エーキャンビーの経営手法だけが正解というわけではないが、一時期は拡大路線が当たった企業でさえ、経営は悪化していたことを鑑みるとこの市場の市場規模が非常に小さく、かつ全国展開は難しいと言わざるを得ない。おまけにエーキャンビーが好調だった当時と比べても産まれてくる子供の数は毎年何万人かずつ減っているから、さらに市場は厳しさを増している。
もちろん、いろいろとチャレンジすることは悪いことではないが、経営再建とか復活を目指す着火剤程度にはなり得るかもしれないが、売上高や営業利益を多額に稼げるかというと両業態ともそれはかなり難しい。2022年度の売上高49億円が2023年度、2024年度とどのように推移しているのかはわからないが、大幅に伸びているということだけは決してないだろう。
会社再編前に45あったアッシュ・ペー・フランスの店舗数は、現在30まで数を減らしているが、不採算店舗をカットしたことで1店舗あたりの収益性は高まった。
とあるが、1店舗で年間1億円ずつの売上高があったとして会社の売上高は30億円である。ここにあまり店舗数が増えなさそうな両業態が加わっても、年間1億~2億円を増やせるかどうかというところだろうから、経営破綻時の49億円内外に戻れれば恩の字というところの目標設定ではないかと思える。
comment
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キムゴンウ より: 2024/06/24(月) 10:06 AM
あの 俳優の宇梶さんに似た社長 お亡くなりになっていたんですね…
箕面のお店でお見かけしただけですが
あらまぁ~
子ども服といえば フィスとかFOインターナショナルなんかも人気でしたよね
よく 娘に買ったものですただ 原宿プロジェクトフランスのテイストを好む層って
子どもと縁が少なそうだと思うのですがね
独身貴族で気ままに 自分のためだけにお金を使える層というか
そんな層が 子どものためにお金を使うのは回避するんじゃないですかね
もっとも 紙コップの高価なコーヒーは大好きそうな層でもありますが -
ミナミミツヒロ的けち人間 より: 2024/06/24(月) 1:07 PM
キムさんの分析、重要だと思います
ここ25年、細分化された分野でポテンヒットを打った
会社は数しれず。しかし創業者が死んで・ナム~が大半加えて運も大きく作用します
段違いの能力と実行力+運で指数関数的に成長した訳だから
どちらも無くなると、指数関数的に売上が落ちてしまいます>独身貴族で気ままに 自分のためだけにお金を使える層
>紙コップの高価なコーヒーは大好きそうな層100%その通りです。あの手のお店の客層は
隣接業界やフリーという名の求職者wと相場が決まってます手取月収よくて40万程度の層だから、そもそも子供が持てませんw
そしてハイブランドもあまり買えない。だからこの手のお店の客になるちなみに飲食にもまぁまぁカネ落とすんですよね
サテ、がんそ高価紙コップコーヒーの店で2時間あぶら売ってこよ
でも、カップ持ちこみで\358也だもんね~www
今やドトールは90分時間制ですからねそーいや30年前だか35年前は2せんえんランチも
そうめずらしく無かったよな(遠い眼・・・
こどもにおしゃれして欲しい、というのがよく分かりません。わたしも一児の親ですが、あの子の頭の中はお菓子とジュースとYouTubeと友達と学校のことだけで頭がいっぱいです。ファッションなんて二の次で、タンスの中の一番上に入ってる服しか着てません。今日は寒くなるから、その格好じゃ風邪ひくよとか注意するくらい、服に無頓着です。
しかも汚れる日に限って白Tシャツ着ていくので、服にはなおさらお金かけたく無いです。