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南充浩 オフィシャルブログ

今後も後期高齢者の消費は大きく伸びることは無いだろうという話

2024年4月9日 考察 1

両親ともに鬼籍に入ったので、生まれ育った実家に一人で住んでいるわけだが、昔から顔だけは知っている近所のおじさん・おばさんと出くわすことがままある。

当方の感覚としては、子供の頃から見知った人たちだが、久しぶりにお見かけすると恐ろしくヨボヨボになっておられてひどく驚くことがある。よく、考えてみれば当方とて今年54歳になるのだから、彼・彼女らはもう80歳前後(もしくはそれ以上)になっている。ヨボヨボになっていても何らおかしくない。

で、何が言いたいのかというと「人生100年時代」とか「今の年寄りは若い」とか歯の浮くようなお世辞めいた言葉が垂れ流されているが、近所の人や自分の親戚を見渡しても80代になればだいたいが足腰が弱ってヨボヨボになるということである。

タレントの大村崑が筋トレのおかげで90歳を越えた今でも矍鑠としていることが報道されているが、逆にいえば、大村崑ほどの筋トレをしなくては維持できないということでもある。

 

ここで、最新の我が国の平均寿命と平均健康寿命を見てみよう。

平均寿命(2023)について厚生労働省から公表されました

2023年7月に発表されたものなので、2022年の実情を反映している。

男性の平均寿命は 81.05 年、女性の平均寿命は87.09年となり、前年と比較して男は 0.42年、女は0.49 年下回っています。

2年連続で前年比を下回りましたが、40年前と比較すると、75歳からの平均余命は男性では約4年、女性では約6年長くなっており

とある。2022年のデータなのでもしかするとコロナ禍による平均寿命の低減があるのかもしれないが、個人的には平均寿命の大幅な伸びというのはそろそろ限界に達してきたのではないかと見ている。

人間の寿命というのは無限には伸びないと当方は思っている。人間の肉体を維持できるのは限界がある。それが証拠に国内最高齢者の年齢は常に120歳前後である。ここから考えられることは人間の肉体を維持できる限界年齢、肉体の使用限界時間は120年前後ではないかということである。

人間の寿命が150歳とか200歳にまで伸びることはないだろう。

 

寿命というのは寝たきりであってもカウントされるので、介護なしで普通に生活できる平均健康寿命について見てみる。

【2023年最新】健康寿命とは?平均寿命との違いと日本のランキング

日本の平均健康寿命は世界1位の74・1歳となっている。

この記事では2019年の平均健康寿命を男女別にも出しているが、男性は72・68歳、女性は75・38歳となっている。恐らく2022年もさほど大きく変わっていないだろう。男性73歳弱、女性75歳強の平均が74・1歳になっていると考えられる。

要するに介護無しで生活できる限界は平均でだいたい75歳くらいということになる。

近所の人たちや親戚が80代になると目に見えてヨボヨボになるというのは当たり前だという話である。

 

当方も老境に差し掛かってきたことを強く自覚しているのだが、それにつれて年々物欲が薄れてゆくことも強く自覚している。

洋服も若い頃ほど強く欲しいとは思わないし、本だって何となく習慣で読んでいるが強く読みたいわけでもない。強いて挙げればガンプラは買っているが、それとても無理に高値で転売ヤーから買いたいほど欲しいわけではない。自動車はもとより興味が無い。スポーツ観戦にも興味は無い。

まだ、あと20年間くらいは生きようと思っているのだが、75歳まで生きることができたら近々くる死後に備えて持ち物を処分を開始せねばならないと思っている。

実際、男性の平均寿命が80歳強なのだから、あと5年くらいしか生きられないと思うと物を買うよりは使わなくなった物を処分することを優先するだろうと思う。

ましてや新しい洋服を毎月買うようなこともしないだろう。あと5年くらいしか着られない物をたくさん買うことは金の無駄だし、高い服を買うのはもっと金の無駄であると当方は思っている。

だから、当方はシルバーマーケットへの積極参入という事業プランには極めて懐疑的である。

【記者の目】注目されるシニアマーケット ポジティブ需要に照準 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

以前よりも行動が活発になっているため市場としての魅力は増しているが、すんなり掘り起こせない難しい市場として見られてきた。しかし、シニア層の分析も進み、シニア層と結びつくことで市場を開拓する動きも出ている。今後、多様な需要開拓が期待できそうだ。

日本の65歳以上の高齢者は23年9月時点で3623万人(総人口に占める割合は29.1%)で、増加傾向が続くとみられる。第2次ベビーブーマーが65歳になる40年以降には3900万人と、総人口の35%前後に高まる見通しだ。65歳以上の高齢者市場規模は25年で101兆円規模と見られ、その半分を生活産業が占める。

読者の数を伸ばし続けている雑誌『ハルメク』は、退職金や相続、投資などで60代以降の資産が大きく増え、70代以降も増えているとみている。日本の個人金融資産約1700兆円のうち、60歳以上が約6割の1000兆円の資産を保有している。ただし、資産に対して消費は弱く、特に75歳以上の後期高齢者の消費は大きく落ちる。

 

とあるのだが、高齢者のポジティブ需要というものは机上の空論に過ぎないと思っている。

団塊の世代を含んでいる今の老人層はたしかに人口も多いし、所有資産も多い。だが、それを消費にあてるかというと今後もあてることはないだろうと見ている。

理由は、年を取れば取るほど物欲は薄くなるからだ。75歳以上が消費しないのは当たり前で、後期高齢者にもなって異様に洋服を買い漁っている人とか高級自動車を何台も持って乗り回している人など、当方は見たことが無い。それ以前に後期高齢者に対しては免許返納のキャンペーンが盛んではないか。

食品はある程度の消費が見込まれるが、年を取れば取るほど食べる量は減る。ということは量も消費しないということになる。

さらにいえば、よく食べる年寄りは長生きすることが多いが、死期が迫ってくると食べなくなり痩せることが多い。今まで見てきた老人は全てこのパターンが当てはまっている。そして年をとっても健啖家という人は驚くほど少ない。

繰り返しになるが、75歳になると死期が見えてくるからあと5年くらいしか着られない洋服を高値を出してたくさん買いたいという人などほとんどいない。

シルバー世代に支持されているブティックオーナーやそこに納めている小規模メーカーの社長を何人か知っていてたまにお話を伺うが口をそろえて「固定客も75歳を過ぎると『高い服を買ってもあと何年も着られないからもったいないわ』と言って買わなくなってしまう」とのことで、このマインドは今後も変わらないだろう。

人間の寿命と健康寿命が圧倒的に伸びない限りは。

 

となると、75歳以上が消費しそうな物を考えなくてはならないが、それは高級衣料品や自動車ではない。

ザックリ考えてみると

1、子供や孫への支出

2、自身の介護用品・生活用品

3、相続などの手続きや保険

4、長年続けてきた趣味への支出

5、医療費

あたりではないか。

そうなるとシルバー市場の開拓というのはこの4点に絞って考えるべきだろう。30代・40代が想像するような物欲は50代から薄れ始め、60代・70代ではもっと薄れているということを認識すべきだろう。

 

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 comment
  • 大阪のオバチャン より: 2024/04/09(火) 12:13 PM

    うちの母はテレビショッピングで、健康食品や化粧品をやたらと注文し、しかも届いても「注文した記憶がない」と言うのです。
    しかも定期コースで注文しているため、毎月のように同じ物が届きます。
    これはいけないと思い、ネットで対策を調べると、同じように困っている家族が多いようです。
    私はいくつもの通販の会社に電話し、母が契約している商品を片っ端から、キャンセルしました。

    テレビショッピングの通販の会社は、こうした認知機能が衰えつつある高齢者向けに、販売しているのでしょう。

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