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南充浩 オフィシャルブログ

言語は共通だが、認識はバラバラ

2015年1月13日 未分類 0

 繊維業界は紡績から撚糸、染色、織布、整理加工、アパレル、独立系デザイナー、OEM/ODM、縫製、洗い加工、問屋、小売店、という風に川上から川下まで多段階にわたって存在している。
それぞれの工程の隙間に怪しげなブローカーやらコーディネーターやら自称プロデューサーやらが跳梁跋扈している。

国内企業の場合、使用言語は日本語なので、意志疎通は基本的にはできている。

「今度(酒でも)飲みに行きましょうよ」「そうですなあ」

という具合である。

しかし、ことビジネスになるとそれぞれの段階で基本的に概念が異なるから、てんでバラバラの認識で仕事を進めている。これでよく業界の分業体制が破綻しないものだと感心するのだが、実際のところは破綻しており、奇跡的になんとか業務が進んでいるだけなのかもしれない。

紡績・合繊メーカーとのかかわりはないが、織布、染色、洗い加工、小規模アパレル、独立系デザイナー、OEM/ODM、小売店とはそれなりにかかわりがあり、それぞれの商談にも同席したことがある。
横で聞いていたり、相談を受けたりする立場からいえば、それぞれがビジネスに関するモデルも、専門用語も自分本位で違った意味合いで理解している場合が多い。

例えば、独立系デザイナーの多くは生地メーカーから直接生地を買ったり、コラボレートで独自生地を作りたがることが多い。
その意欲は良いのだが、一部の例外的デザイナーを除いて、大部分は生地のミニマムロットさえ知らない。
縫製に関しても同様だ。
工場とアイテムによってそれぞれ設定は違うが、だいたい、サイズ込みで1型100枚くらいが国内縫製工場のミニマムロットとされている。
それを知らないデザイナーも多い。

極端に例えると
「オリジナル生地を20メートル作って、10着縫製してもらいたいんですよ~」
なんてことを平然と口にする独立系デザイナーだっている。
まあ、最近はアパレル企業の企画マンも似たようなものではあるのだが。

オリジナルで生地を作るのに20メートルで済むはずがない。
1反の生地は50メートルだから、最低でもオリジナル生地は50メートルは作る必要がある。
そのあたりの基本的な知識がまるでない。

反対に製造側もずいぶんと乱暴な認識のままで物事を進める。

以前、某生地産地の総合展示会にかかわったことがあった。
生地だけではなく、それらを使った製品サンプルもディスプレイ用として製作するために、デザイナーと産地企業との打ち合わせが必ずあった。
デザイナー側は生地を見て、その特性を一応考慮しつつも、これまで産地が手掛けたことのないような色柄を提案する。
会議でディスカッションしたあと、産地側もその提案を了承し、何月何日締切で試験生地を完成させるという「口約束」がなされる。

そして出来上がってきた生地を見ると、会議の席上で提案された色柄とまったく異なった色柄で仕上げられていることがある。

産地側に理由を問いただすと
「あの色柄は売れないような気がしたから『勝手に』変更した」とのことである。

これには苦笑か失笑かをするほかない。

色柄提案に不満があるなら会議の場でなぜ、もっと議論しなかったのか。
また、従来ベースの色柄ならわざわざデザイナーを入れることはなく、産地企業が勝手に作っていれば良いのである。
従来ベースの色柄ではこれ以上の需要が見込めないから新色・新柄の提案がなされたということを完全に忘却している。

小売店だって同じだ。

やたらと「製造原価が高い」と言うが、製造工程を知っていてその言葉が出るのだろうか?
まさか、縫製なんてトヨタの自動車工場よろしくロボットが自動でチョッチョッと縫い上げていると考えているのだろうか?
織布だって全自動だと思っているのだろうか?

縫製はいまだに人間がミシンを踏んでいるし、織布だって人間が何日間もかけてセッティングしないといけない。
決して全自動ではない。

これらはほんの一例だが、業界全体では言語自体が通じているが、基本的な認識が違いすぎて現状以上の協業が難しいように感じる。

中には「他段階のことは知らない方が良い。知りすぎると無茶がいえなくなるから」という意見もあるが、ウソでも建前でも日本製品を打ち出そうというスローガンがあるなら、その考えは通用しない。
また、30年前ほど製造工程の各企業が隆としていればまだしも、製造加工業が減少の一途をたどっているこの時代にその姿勢では却って製造加工業をスポイルするだろう。
最早、無茶を押し付けられるほどの体力は彼らに残されていない。

クールなジャパンを打ち出すことも、パッケージをかっこよくすることも必要だろうが、急務は各工程段階の認識をある程度統一させることだろう。(完全なる統一は不可能)

ある程度認識が共通させた各工程を集めて強力な製造チーム・販売チームを構築することが、日本の繊維業界が生き残るためには必要不可欠なのではないかと考えている。

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