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南充浩 オフィシャルブログ

電車の本数が少ない「本物の」地方・郊外の駅前再開発は効果が無い

2024年2月5日 百貨店 0

1月は島根の一畑百貨店と、名鉄百貨店尾張一宮店が閉店した。

2月以降は全国の百貨店店舗数は180店を割り込んで170店舗台に突入することになるだろう。(1月末時点で180店舗)

それを受けてだろうと思うがこんな記事を拝読した。

消えゆく「地方百貨店」 駅前撤退で自治体お手上げ、跡地再生の“処方箋”はどこにあるのか | Merkmal(メルクマール) (merkmal-biz.jp)

島根県松江市の一畑百貨店など地方都市の駅前から百貨店が次々に消えている。地方自治体は駅前が「街の顔」だとしてテコ入れを続けるが、活性化の妙案は浮かばない。

とある。

 

実際のところ、記事で指摘されているように地方・郊外の駅前百貨店の撤退跡地の再開発は非常に厳しいといえる。駅前に商業施設を建てても売れる見込みがあまりない。

理由は様々あるが記事にも書かれている通りに

1、地方・郊外は車社会で駅前には広い無料駐車場・安い駐車場が少ない

2、駅前の百貨店跡地ビルは面積が狭い

3、郊外のイオンモール(他の大型ショッピングセンターの場合も)がすでに多くの集客を果たしている。

が挙げられる。

 

まず、地方・郊外の駅前百貨店はそもそも店舗面積が狭く中小型店ばかりである。広大なイオンモールや、都心の巨大旗艦百貨店を見慣れた今の消費者からすれば「小さくてショボい」建物でしかない。そこにいくら他の商業施設を導入したところで見る目は変わらないだろう。

そして、駐車場が狭かったり、無料・安値駐車場が無かったりするから、車社会である地方では駅前商業施設というのは小さくてショボい上に不便極まりない。

そんなところにわざわざ出向くくらいなら、広い駐車場が完備されている大型ショッピングセンターへ自動車で出かけた方がずっと効率が良い。

極めて当たり前のことである。

 

それにもっと根本的な原因を言うなら、地方・郊外の駅というのは電車の本数が少なくて極めて不便なのである。

大都市のベッドタウン化した地域は通勤・通学のために電車の本数が多い。しかし、ベッドタウン化していない地方・郊外だと電車の本数が1時間に2本とか3本くらいしかない。もっとひどい田舎だと1時間に1本とか1日に数本くらいしかない。

そんな状況だから駅を利用する人も増えない。よって駅前をいくら再開発したところでわざわざ駅前に立ち寄る人など到底見込めない。

そういう地域ではすでに車社会が成り立っていて、大型ショッピングセンターだけではなく、すでに様々な娯楽施設や物販店が道路沿いに立ち並んでしまっている。

ここから客を駅前に取り返すことなどほぼ不可能である。

 

卵と鶏に関係だが、電車の本数が少ないから車社会が発達したのか、車社会が発達したから電車の本数が少ないのかはケースバイケースだろうが、すでに悪循環スパイラルを極めてしまっている。

今更これを覆すことは莫大な予算を投入しないことには無理だろう。

 

一方、そこそこのベッドタウン化した地方・郊外も駅前百貨店は成り立ちにくくなっている。名鉄百貨店尾張一宮店なんかがそうだろう。

尾張一宮から名古屋までは電車でだいたい10分か15分程度である。これほど名古屋が近いのであれば、何も地元のショボい小型百貨店で買い物をする必要が無く、名古屋まで出てJR名古屋高島屋とか栄の松坂屋あたりの都心大型百貨店で買い物をすれば良いということになる。

JR沿線の和歌山や奈良の人が大阪の天王寺まで出て買い物をするのと同じ理屈である。

駅前の小さくてショボい施設で買うより、天王寺に出て近鉄百貨店あべのハルカス本店やあべのキューズモール、天王寺MIOで買った方がずっとマシである。

 

10年くらい前に、仕事で福井に出張したことがある。

JR福井駅は特急停車駅なので綺麗だったが、夜8時になるともう駅はガラガラである。大阪市内や東京23区内の終電が終わったあとの駅くらい閑散としている。

これでは駅前商業施設なんて到底成り立たない。

 

地方・郊外でも駅前に施設を建てて成り立っている事例もある。

例えば、大阪府の枚方とか樟葉はそうだろう。枚方は枚方Tサイト、樟葉はくずはモールがある。どちらも大阪市内からすると郊外だが、人口はけっこう多い。また電車の本数も多い。

大阪市内に通勤・通学している人のベッドタウンとして人口を維持している。

ベッドタウンとしてあまりにも大都市に近すぎると尾張一宮のようにストロー効果で吸い寄せられてしまうが、枚方や樟葉は通勤・通学は可能だが休日にわざわざ市内に足を運ぶにはちょっとめんどくさい距離にある。となると、休日は地元駅前でという人がそれなりにいても不思議ではない。

となると、人口が少なくて電車の本数が少ない「本物の」地方・郊外の駅前では商業施設が成り立たない。商業施設を支えるだけの人数が確保できにくい。

おまけに居抜きで使おうとするとビル自体が小さくてショボいわけだから、見劣りしてしまうこと甚だしい。

 

駅前を訪れる人も自家用車で来るわけで、有料駐車場を探す必要がある駅前より、広い無料駐車場を備えた郊外のショッピングセンターのほうが行きやすい。自治体が駅前の駐車場を無料化しようとすれば、駐車場業者から“民業圧迫”と批判される。

 自治体が身の丈に合わない巨大商業施設を建設して失敗した例は、青森県青森市など全国にある。地方百貨店が

「オワコン」

といわれるなか、駅前再生の処方せんが見当たらず、空洞化が刻々と進んでいる。

 

と締めくくられているように、「本物の」地方・郊外の駅前は再生の方策がほぼ無い。大都市と大都市ベッドタウン以外の駅前は今後さらに寂れることだろう。

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