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南充浩 オフィシャルブログ

発音は同じでも衣料品と医療品は大違い

2023年11月20日 トレンド 0

元々、スポーツが苦手で運動は不得意だったから若い頃に体力があって運動能力に優れていたわけではない。運動能力はどちらかといえば劣っている方だ。

なので、世間一般のスポーツ経験者のように40代・50代になって若い頃に比べてメッキリ体力が無くなったと感じることがない。若い頃から体力が無くて身体能力が劣っているからだ。

若い頃から何となくいつも体はドンヨリしていて気分爽快になったことなどほとんど記憶にないが、40代・50代になると、さらにドンヨリしてきて、そういう意味では「若い頃は少しマシだったのだ」と思い知るわけだが、老化は日々刻刻と進んでおりドンヨリ感は増すばかりで若い頃に戻れるはずもない。

そうなると、サプリでも衣服でも何でもいいから、ドンヨリ感や疲労を少しでも軽減してくれる物が欲しくなる。極上のナンタラ綿で作られた何十万円もするラグジュアリーな服よりそちらの方がよほど魅力的に映る。

 

今の衣料品には機能性素材が溢れている。当方も機能性素材服を好んで買っている傾向がある。

機能と言っても様々な機能があるわけで、ストレッチ性、軽量、防水透湿、撥水、保温、発熱、吸水速乾、防臭などなどだ。これらの機能性はほとんどのブランドが下げ札やPOP、ネット通販の商品解説文などで効果を断言して謳っている。

一応それぞれに科学的なデータもあるし、よしんば、消費者がその効果をイマイチ体感できなかったとしても身体に深刻な害はほとんどない。

例えば、当方の例でいうとヒートテックを始めとする発熱保温肌着を何種類か着用して試してみたが、さっぱり保温効果も発熱効果も体感することができなかった。これには暑がりで寒さがさほど苦にならないという体質も関係あるだろう。だが、実際に発熱保温効果を体感できなかったとしても身体への害は全くない。

だから、当方は訴えようとも思わないし国も厳しく規制することはない。ストレッチしかり防水しかりである。

 

だが、肌荒れ改善とか血行促進とかそういう身体により大きな影響を及ぼすだろうという物については、法的に厳しく規制されている。

先日、某小規模ブランドが自社の衣料品を「肌荒れに効果があります」と断言してSNSにポストしたためにプチプチ炎上したことがあった。薬機法に違反している可能性が極めて高いからだ。

炎上に至らなかった理由は、そのブランドが小規模すぎて知名度が無かったためだろう。繊維・衣料品業界人とマーケティング業界からの指摘のみにとどまった。

この薬機法違反の問題はサプリメントでもたびたび起きている。身にまとうだけの衣料品よりも体内に直接取り込むサプリメントの方がよほど身体に直接的影響をもたらしやすい。

大手の製薬会社や健康食品会社よりも、素人インフルエンサーがスタートアップしたベンチャー的なサプリの方がこの手の問題を引き起こしやすい印象が強い。

 

先の小規模ブランドのプチプチ炎上を見ていて思い出したのが、オーガニックコットンである。

オーガニックコットンで作られた衣料品は一般的に「肌荒れに効きやすい」と認識されている。実際に「効果があった」という人の話を聞くことも多い。

SDGsとかエコとかの理由でオーガニックコットンを使用しているというブランドも近年増加していると感じる。

オーガニックコットン衣料品が肌荒れに効きやすいというのは、すでに当方が駆け出しのころの20数年前から言われていた。

しかし、大手企業や大手小売業は「オーガニックコットン使用」とは謳っていても「肌荒れに効き目があります」とは決して謳っていない。

理由は薬機法に抵触するからである。

科学的な分析データ上では通常栽培された綿花とオーガニックコットンは同一である。何の変化もない。従って「オーガニックコットンが肌荒れに効果があります」とは謳えないのである。

「肌に優しい」とか「敏感肌にも安心」くらいは謳えても「肌荒れに効きます」「アトピーが改善します」とまでは謳えない。

 

以前、他の記事でオーガニックコットンのこのことを書いたところ「肌荒れに効果があるのは周知の事実だから、猛省せよ」という主旨の意味不明な匿名のコメントをいただいたが、全くのナンセンスである。

本当にそう思うのなら、ご自身がそう謳ってオーガニックコットン衣料品を製造販売されてはどうか?一発で処分を受けることになる。大手企業や大手ブランド、大手流通がいまだにオーガニックコットン製品に対して肌荒れ効果を謳っていない理由が理解できるだろう。

 

薬機法とは異なるが、繊研新聞がリカバリーウェアの問題をずっと追跡報道している。

リカバリーウェアとは疲労回復を促す衣料品ということで、本当に回復効果があるなら、日々刻刻と老化が進んでいる当方もぜひとも試したいところである。

ただ、医療機器としての売り方としてどうなのかという問題が挙がっている。

〝リカバリーウェア〟の流通適正化へ、猶予期限迫る 不適切な届け出は取り下げを | 繊研新聞 (senken.co.jp)

今年11月16日の記事である。

〝リカバリーウェア〟と呼ばれる衣類の流通を適正化しようと、厚生労働省が対策を打って1年が経ちつつある。しかし、非該当の製品が今も医薬品医療機器総合機構(PMDA)に届け出がされたままだ。これらは届け出を取り下げたうえで、適切な製品表示に改めるなどの対応が求められる。期限の12月13日が迫る。

問題となっているのは、鉱物を加工して繊維を活用し、遠赤外線による血行促進作用で筋肉の疲労軽減や回復をうたう衣類製品。同類の製品は、一般医療機器の「温熱用パック」(医家向け)の定義に全く該当しない。そもそも医者や医療機関を指す医家向けの一般医療機器は家庭用ではなく、一般に向けた広告は認められていない。

とのことである。

また今年4月にもこんなコラムが掲載されている。

《視点》意識の違い | 繊研新聞 (senken.co.jp)

昨年末から数回にわたり、リカバリーウェアを取り巻く問題を取り上げた。取材を通じて医療に関わる業界と、アパレル企業の意識の違いがはっきりとわかった。

医療機器は何らかの症状に対する効果が期待されて購入される。そうである以上、医療機器に関わるルールは厳格に守られるべき。専門的に医療機器に関わってきた企業にとっては基本的な心構えで、極めて慎重な印象を受けた。一方、業界外の企業はその心構えが当たり前ではない。

アパレル企業がこれまでリカバリーウェアの開発・販売を続けてきたのは、「疲労など体の不調に悩む多くの人の役に立ちたい」から。目的は同じだとしても、責任の重さを自覚し、慎重な医療機器業界に対し、広く訴求しようとしたアパレル企業。消費者に商品価値が伝わりやすい売り方を探るなか、結果的に適切ではない手段を取った。

 

とのことで、医療業界の慎重な姿勢の方を当方は評価する。

アパレル各社がそこまで「利他」の意識があったかどうかは分からない。そういうアパレルもあっただろうが、売れそうだから始めたというアパレルも少なからずあっただろうと当方は思っている。(笑)

通常の衣料品が売れにくくなり、機能性衣料の方が売れやすい状況になっている今、究極の機能性ということで医療的な機能を持った衣料品に着手するのは自然な流れだといえる部分もあるが、身体に大きな影響を及ぼす可能性が高いため、医療業界並みの慎重さや論拠が求められ、法的拘束を受けるということは極めて当然だといえる。

 

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