偽エース登板
2014年10月28日 未分類 0
何を書こうかなあと迷っていたら、こんな記事を読んで、深く感銘を受けたのでどうしてもご紹介したくなった。
記事で紹介されている会社はどの業界に属するのかはわからないが、繊維・アパレル業界でもこういう人はかなり存在する。
まさにアパレルあるあるである。
なぜ“エース社長”は期待外れに終わったのか
ねつ造された「社史」を信じた会社の悲劇
http://diamond.jp/articles/-/61186
業績が停滞していたある企業に、新社長が就任した。新社長は、過去に会社の主力事業を立ち上げて成功させた若きエース。
新社長の評価は瞬く間に下がっていった。やり手のエースのはずの人物が、なぜ結果を出せなかったのだろうか。
彼は信長でも秀吉でもなく、家康だったのである。
エース新社長の功績として語られてきた主力事業には、奇しくも他に2人の人物が関係している。最初に、その事業の基本モデルをつくったのは地方拠点のA氏である。
A氏の成功モデルに目をつけ、それを全国的に水平展開させたのが本社のB氏である。彼は、事業モデルを標準化し、わかりやすい指標を作り、リーダーを育成した。そのことによって、地方支社でしか通用しないと思われていたビジネスが、全国規模に広がり始めた。
ここでやっと、件のエースの登場である。彼は、B氏の施策の成果が見えそうなタイミングでこの事業部へやってきた。「私にやらせてほしい」と手を挙げたのである。エースは、成功に対して目鼻も利くし、商売のセンスもあるのだ。そして、A氏とB氏が作り上げた事業に対し、大規模かつ大量の経営資源の投入を行い、CMを使った派手なプロモーションで盛り上げた。結果的に、事業は大成功。エースは「時の人」となった。これが、社内外でよく知られるエースの功績の真実である。
とある。まったくどこかで聞いたようなお話である。(笑)
この真実が知られていないのには、理由がある。それはエース自身が、A氏とB氏の存在を巧みに消したからである。A氏とB氏を含む事業の初期段階から携わってきたメンバーに、一人また一人と冷や飯を食わせて退職に追い込み、ときには別事業に異動させ、ときには独立を促す。
年月を経た後、その事業の成功はエースの“超人的なリーダーシップ”と“独創的なアイデア”によって成し遂げられたことになってしまった。意図的な歴史の改ざんである。
今回のケースでもっとも問題だったのは、歴史を改ざんしたエース自身も、いつのまにか自分は凄い人だと誤解してしまったことだろう。
しかし、よくあることだが、エースのようなタイプの人は、偽のストーリーを語っている間に、自分自身の力で本当に実現させた!と思いこむほどの強い自己暗示力を持っている。
繊維・アパレル業界にも多くの「カリスマ」「エース」が存在する。
もちろん、真実のカリスマがたしかに存在する。
就任した先々ですべて結果を残せるとは限らないが、野球で例えるなら勝ち星の方が負け数より多いとか、必ず10勝以上するとか、そんな人である。
しかし、世間的知名度が高い割には、就任した先々で全く結果を残せない全敗状態とか、成功したのは最初に自分が所属していた企業でのみとか、そういう人も数多く存在する。
こういう人々は、上の記事に紹介されているような「偽エース」だったということだろう。
偽エースには美点が一つだけある。
それは自己ブランディングと自己宣伝が異様に上手いことである。
残念なことに、ほとんどの場合、その能力は「自己」のみに発揮され、自己が属する企業やブランドに発揮されるわけではない。
この美点が自己の属する企業やブランドにまで発揮されれば、偽エースを登板させる意味もあるのだが。
そういえば、先ごろ、連敗記録絶賛更新中の偽エースを登板させて経営破綻した企業があった。
評判のみで飛びつくのは危険だということである。