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南充浩 オフィシャルブログ

製造加工業とブランド側の埋まらない需給バランス

2019年2月19日 考察 0

そういえば、以前「経糸バンク」なる構想を聞いた。
ご存知のように(知らない人も多いが)、生地を特注で織ってもらう場合(編みは基準が別)、10メートルだけ織ってもらうなんてことは通常できない。
織物は経糸と緯糸で構成されており、緯糸を10メートル単位で変えることはできるが、経糸は長ければ長いほど効率が良い。逆に10メートルごとに経糸を変えるなんてことは非効率極まりなく、糸を入れ替えるだけで何日もかかってしまう。
だから、どんなにサービスしても1反(50メートル)以下の長さの特注生地というのは織れないし、生地工場も織りたくない。
できれば最低でも3反とか5反くらいは注文をもらわないと、生地工場は特注生地は織れない。
1反で作れる洋服の枚数といえば、用尺2メートルとしても25着である。2サイズ展開なら1サイズ13枚、3サイズ展開なら1サイズ8枚ほどである。
通常規模のブランドならそれくらいは売りさばけるだろうと思うが、それも難しいと嘆く小規模ブランドが国内には珍しくない。
だったら経糸を何ブランドかで共通させて、緯糸を10メートルとか20メートルおきに変えるという構想「経糸バンク」を提唱した会社があった。
これはこれで良いアイデアだったと思うが、結局のところ、止まってしまっている。
極小規模のブランドは、どこかで残反の生地を10メートルとか20メートル買ってきて賄えば良いと思うのだが、それでは嫌だというブランドもある。個人的には何をわがままを言っているんだと思うのだが。(笑)
 
 
小資本で小規模商売を回している経営者はけっこういて、ネット通販草創期のころには、プロルート丸光とか大西衣料などの現金問屋に毎日通って、注文のあった数量だけ購入して帰るという小規模ネット通販業者がいたが、今でも元気にしているのだろうか?(笑)
そういう意味では小ロットの需要というのはある。
国別の生産でいうと、低価格の大ロットは東南アジアやバングラディシュに移りつつある。しかし、手の良さが評価されてそのまま中国でとどまり続ける場合もあるが、中国も以前ほどの大ロット専門ではなくなって1型100枚程度の小ロットでも生産する工場も現れてきた。このあたりは15年前の日本の工場と似たような動きだといえる。
一方、Tシャツやスエットなどで低価格小ロットを求める業者は韓国へ買い付けに行くことが多い。
韓国の繊維製造加工業はあまり詳しくないが、低価格小ロット短納期というイメージしかない。そういう仕事が高利益率だとは到底思えないが、そういう生き残り方もある。
 
日本国内も小ロット生産の業者もいるが、そこには何となくガチャマン時代への未練がまだ感じられることがある。
よほどの「何か」がないと大ロット生産なんて国内には戻ってこないのだから、よほどの「何か」を生み出せない製造加工業は、さっさと未練を断ち切れば良いと思うのだが。
 
そんな中、こんなサービスを立ち上げる企業もあるので、小規模ブランドは利用してみても良いのではないかと思う。ただし、品目は7ゲージと12ゲージのニットのみだが。
 
1型10枚までの超少量のニット製品の生産受注 神戸のOEM会社が開始
https://www.wwdjapan.com/800730

 インプルーヴ(神戸市、鈴木弘美・社長)は2月から、1型10枚までの超少量専門の受注サービス“10ピースニットファクトリー”を開始した。素材選定のアドバイスや編み地のプログラムなども含まれており、生産枚数に関わらず価格は20万円から。納期は45〜75日で、量産に移行する場合は5万円でプログラムデータを譲るオプションもある。
 小規模のブランドやアパレルから小ロット生産のニーズは根強く存在する一方、ニット製品は編み地のプログラムに専門的な技術と時間が必要とされるため、実際には工場側の利益を考えると難しかった。同社は廃業したニット工場から島精機製作所の編み機2台を引き取り、大阪府泉大津市内の小規模工場に設置し、生産を委託。アイテムを限定することで実現にこぎつけた。編み機はそれぞれ7ゲージと12ゲージ(糸の太さを示す単位)

とある。
インプルーヴさんからすると「OEM」ではなく、ニットのデザイン企画だということだが、まあ、それもひっくるめての「OEM」という記事表現なのだろうと思う。
さらに詳しくはこちらを
http://improve-knit.com/information/10pcs-knit-factory/html
 
まあ、賛否両論あろうが、小ロット生産で生き残るということは韓国もやっていることなので、そういうやり方もありなのではないだろうか。
小規模ブランド辺りは利用してみたいのではないかと思うがどうだろうか。
 
しかし、製造加工業とブランド側の需給ギャップというのはなかなか埋まらないままだが、個人的には、小規模ブランドが望むような生産はほぼ不可能だと見ている。
ネット通販会社なんてけっこう生産を簡単に考えていて、サイズ別に受注できれば、すぐに生産できるなんて考えていてそういう論調を見れば笑うほかない。まあ、ネットスラングでいえば大草原とか草不可避とかいう状態である。
 
 
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c6
 

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