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南充浩 オフィシャルブログ

「機能性」をキーワードにカジュアルとワーキングの融合はさらに進む?

2018年12月17日 企業研究 0

現在、店舗数は少ないものの、好調な売れ行きで注目を集めているのが「ワークマン プラス」である。
そのワークマンが先日、ワークマンプラスの大量出店を発表した。

ワークマン/「WORKMAN Plus」35店出店、来春は「デカトロン」を迎撃

ワークマンは12月13日、新業態「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」を2019年9月までに35店を出店すると発表した。
 

さらには2020年3月期末までに65店舗の体制にするとも発表しており、好調を受けて急激に店舗数を拡大する方針だ。
完全な新店出店だけでなく、既存店の改装も含んでの店舗数拡大である。
 
では、ワークマンもしくはカジュアルアウトドア業態の「ワークマンプラス」は突発的に発生したのかというと、そうでもない。
繊維業界に詳しい方なら誰でもご存知のことだが、ワークマンに限らず、ワーキングユニフォーム業界はもとから低価格・高機能の商品開発が持ち味だった。
なぜなら、ワーキングユニフォームというのは、肉体労働の仕事着として使用されるため、自ずと高機能性が求められる。
ここでいう高機能とは、動きやすさのほか、吸水速乾や防風、保温、耐久性、難燃性など各種の機能性である。これが備わっていない衣服だとまったく役に立たないばかりか、業種によってはかえって邪魔になる。
また、ワーキングユニフォームは絶対に定期的に傷むから、買い替えが必要になる。作業員は着たくて着ているわけではないから、価格は安いに越したことはない。
必然的にワーキングユニフォームは安くて機能的であることが昔から標準となっていた。
このような背景によって、ワーキングユニフォーム各社は、長年にわたって「低価格・高機能」を追求してきたから、あとはデザインを向上させれば、売れる要素を備えていた。
また、デザイン性だけで商品は売れないから、販路の確保、集客力も必要だった。
この3つが完備されれば大衆に売れる「低価格・高機能」カジュアルが誕生することは明らかであり、それをどのワーキング会社が実行するかという問題だった。
もちろん、ワークマン以外の各社も座視していたわけではない。各社ともそれぞれに工夫を凝らしていたし、今現在も凝らしているが、一歩抜きんでたのがワークマンだったということである。
https://www.news-postseven.com/archives/20181216_824485.html
上のポストセブンではそれを一応、説明させてもらっている。
さて、一方で、ワークマンプラスの急拡大を心配する声もあるのだが、これも流通業界やワーキング業界ではだれでも知っていることだが、ワークマンは既存で800店舗を抱えるが、そのほとんどが直営店ではなくフランチャイズである。
2018年3月期の決算資料によると、ワークマンのフランチャイズ店は660店舗あり、全店舗数に占めるフランチャイズ店比率は実に82・8%にも及ぶ。
そのほとんどがフランチャイズ店ということになり、例えばユニクロやジーユーなどのような直営店出店とはまるで背景が異なっている。
 
 
他方、カジュアル業界でも、カジュアルチェーン店やセレクトショップとの取引は伸びにくい状況にあるから、ワーキング店やホームセンターとの取引を拡大する方向性がある。
例えば、今年9月にリーバイ・ストラウス・ジャパン社がワーキング店への参入を発表したのはその例といえる。
また、「ブルーモンスタークロージング(BMC)」というブランドを擁する創業3年のブリッツワークスが、今年11月末で卸売り先が200店舗を越えたのは、ワーキング店・ホームセンターへの卸売りが大半以上を占めており、従来通りにカジュアル店やセレクトショップのみとの取引を目指していたのではとてもではないが、100店舗にすら届かなかっただろう。
BMCが特徴的なのは、カジュアル店にもワーキング店にも同じ商品を同じ値段で卸しているという点である。通常のブランドはカジュアル店やセレクトショップ(いわゆるファッション向き)へ卸す商品と、低価格が求められるワーキング店ではブランド名は同じでも異なる商品を卸す。しかし、BMCは同じ商品を卸すという取り組みをしており、カジュアル店からすると「低価格商品」、ワーキング店からすると「高価格商品」という位置づけになり、両方で拡大することができたが、現在の比重は明らかにワーキング店・ホームセンターの方が大きい。
 
ワークマンプラスの好調は、ワーキング業界のカジュアル進出という現象だけではなく、リーバイスやBMCの取り組みを見てもわかるように「高機能性化」という観点からすると、ワーキングとカジュアルの融合ということが背景にあるといえる。
そもそもカジュアルはワーキングと親和性が高く、現在の著名カジュアルブランドでもその出自がワーキングであるブランドは数多くある。
ジーンズの代名詞ともいえるリーバイス自体がもとは作業服だし、ディッキーズも作業服である。近年、ディッキーズの拡散によって希少性が失われた結果、その穴埋め的にセレクトショップなどに注目されている「ユニバーサルオーバーオール」というブランドも作業服出身である。
 
当方も含めて、消費者は「機能性衣料品」を求める傾向が強まっており、同じ価格なら機能性が高い物の方を好む人が増えていると感じる。「良い素材の良い風合いを手間暇かけて味わいたい」というオーソドックスなファッショニスタからすると我慢のならない風潮ではないかと思うが、当方はめんどくさがりなので高機能なイージーケア衣料品が大好きで、同じ価格ならこちらを買いたい。そして同じ「高機能性」という観点から、スポーツ衣料とも融合しつつあると感じる。
今後、「高機能性」をキーワードとしてワーキングとカジュアルはさらにスポーツとも融合していくのではないかと見ているがどうだろうか。
 

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【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
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