昨年末にセメントプロデュースデザインの金谷勉社長から、ご自身の初著書を献本いただいた。

日経BP社から12月半ばに発売された「小さな会社が生き残る」(金谷勉著)である。

セメントプロデュースデザインは、もとはグラフィックやらポスターやらウェブなどのデザインを手掛けていたが、それと並行して各地の製造加工業者の新規商品開発も手掛けていた。

今回の本に掲載されているのは、瀬戸焼や熱海の建具業者、京都の竹細工師、鯖江の眼鏡フレーム素材の輸入業者などである。
実は金谷勉社長とは2008年ごろに知り合い、今年でちょうど10年目となる。
スイートテンダイヤモンド

年に数回お目にかかるくらいで、逐一手掛けている製造加工業者のことをお聞きしていたが、この本に書かれている事例の実に8割くらいは存じ上げていた。(笑)
それでもお聞きしていなかった細かい部分や、後日譚、それから金谷社長が各クライアントに抱いている疑問や懸念などが明らかになっていたので興味深かった。

個々の事例はさておき、各地の製造加工業者が苦しんでいる実態とその原因について金谷社長なりの見方が示されている。
このブログの読者は、繊維・衣料品関係の人が多いが、瀬戸焼やヒノキの建具業者の苦境はまったく無関係ではなく、苦境の原因は共通する部分が多く、読めば得るところがあるだろうと感じた。

文字は大きいが239ページもの分量があるので、1回では内容をすべて紹介しきれないので、思いついた部分から順不同で紹介したい。

例えば、

「とりあえず物を作るな」

という部分。

この本では漆器業者の例が出されていたが、これは繊維業者でも同じだ。
とくに繊維の製造加工業者もまるっきり同じメンタリティをしている。

ある漆器業者が「とりあえず作った」新作を持って、金谷社長のところに相談に来た。
市場調査もせずに作った商品である。

「〇〇さん(漆器業者)、この商品はどこで売りたいんですか?」
「銀座です」

理由は銀座には富裕層が多く来るという業者の思い込みでそう答えている。
ちなみにこの話を実際に金谷社長から伺ったのは5年くらい前なので、今の銀座とは少し客の流れが違っている。

「銀座のどこですか?」
「三越とか」
「三越の何階で売りたいですか?」
「行ったことがないからわかりません」

こういう会話が掲載されている。

実は、繊維の製造加工業者も似たようなことがよくある。
国内の製造加工業者もこれまでの下請け業では食っていけないから、生き残りたい業者はオリジナル製品の開発を行っている。
成功するのは1割か2割で、あとは学芸会の発表レベルで終わっている。

2009年ごろからいくつかの産地ブランドや産地イベントの仕事に絡んだことがあるが、当時は中国バブルがすごくて、中国への製品輸出に活路を見出そうとする業者が多かった。

とりあえず作った製品を「富裕層が多い」中国へ高値で売りたいという案件がいくつかあった。
しかし、市場調査をしたわけでもなく、デザインは自分たちの自己流といったものも多く、価格設定も「高い方が売れる(だろう)」というあやふやなものだった。

漆器業者と考え方が同じである。

で、この漆器業者との問答は続く。

実際に売り場を視察して

「売り場を見てきたらうちのとよく似た商品がたくさんありました」
「あなたの商品は売れそうですか?」
「いえ、難しいと思います。でももう100個も作ってしまっていて」

というオチである。

これが「とりあえず」作ってしまうという現象である。
もちろん、試行錯誤するためにサンプル製品を作ることは構わないが、どうしていきなり100個も作ってしまうのかということになる。

しかし、この本には書かれていないが、この逆も製造加工業者には掃いて捨てるほどある。

自社オリジナル製品を展開するとなると、あらかじめ少なくとも展示会用サンプル数枚は作っておくことが必要になる。
しかし、下請けに慣れ切った業者は、このサンプル品すら自腹で作ることを嫌がる。
下請け業なら、ブランドから指示された通りの枚数を作ってその製造加工費がもらえる。
サンプル数枚でも数枚分のカネがもらえるのである。

だから下請けとして仕事をするときはそういう姿勢で良いが、自社ブランドを展開するとなると、そういう姿勢ではやっていけない。

自社ブランドを展開するにはある程度自腹を切らないとやっていけない。

この両方を勘違いする製造加工業者が業種を問わずに多い。
これも製造加工業者の課題の一つといえる。

この本で紹介されている建具屋もとりあえず木工細工品を作って苦戦していたし、瀬戸焼でもパスタ皿を勝手に作って苦戦していた。

一方、逆のケースだと、先日、某アパレル企画マンが顔見知りの縫製工場に声をかけて、企画マンのオリジナルブランドを展開することになった。企画マンがメインで、その製造背景が縫製工場という分担である。
工場の社長も乗り気で「共同展開したい」とまでいうほどの熱意だった。

しかし、下請け気質丸出しの縫製工場は、展示会のためのサンプルを作ったら、それ以上の先行製造をためらった。
先行製造といっても何百枚も作るのではなく、各売り場に持ち込むための数枚とか10枚程度である。
それすら作らないとなると、そのあとの営業は厳しい。

その後、どうなったのか結果は聞いていないが、おそらくこの取り組みは失敗するだろう。
この縫製工場が下請け気質を変えられない限りは。

この本では、「とりあえず作る病」に対して、

僕らからすれば、目的のはっきりしない皿や木工細工を(大量に)つくるほうがよほど「悪」なわけです。

と書かれてあり、「とりあえず作る病」に罹患している製造加工業者はよく味わってもらいたい。

しかし、製造加工業者には先ほどの縫製工場のように下請け気質が抜けない「必要な数量でも自腹では作らない病」も蔓延しており、このあたりが国内の製造加工業者が不振に陥る原因の一つだといえる。

これを治癒することはなかなか難しい。克服できた一握りの業者だけが生き延びれば良いのではないかと思う。

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ウィゴーの筆頭株主が4か月で変更に
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