衣料品におけるデザイナーズブランドにはあんまり興味もないし、判別する知識もない。
それでも衣料品業界に20年以上もいると、何らかの接点もできてしまっているし、展示会やコレクションショーを見る機会もある。
個人的に交流していただいている方もいる。

そういう外野の人間から見て、デザイナーズブランドというビジネスは成功するのが難しいと感じる。
まあ、どんな分野にせよ成功するのは難しいのだが、デザイナーズブランドで一般のサラリーマンの平均収入を得るのはかなり難しいと感じる。
東京コレクションに10年以上も出品し続けて、知名度もそれなりにあるブランドでも実際は売上高は極小なうえに収益はまったく赤字で、親の会社から回してもらっているカネで暮らしているというデザイナーもいると聞く。

それほどに厳しく、10年以上のベテランがこのありさまなので、若手ブランドのビジネスはもっと厳しい。
もし自分ならそんな仕事は絶対にやらないなと思う。

なんでこんなしみったれた話を朝から書いているのかというと、台東デザイナーズビレッジの鈴木淳村長のフェイスブックの書き込みに激しく賛同したので、それを紹介したいからである。

このルームサービスの元記事はどうでもよい。
論調としては冷静だといえるが、そこには鈴木村長が指摘された事柄がない。
今更、サカイと若手ブランドのビジネスを比較して「若手がなってない」といったところで何か状況が変わるのだろうか。
じゃあサカイが海外で売れた理由をもっと取材してそれを分析してみてはどうか。

クリックするのがめんどくさい人のために抜き出してみる。

■コレクションの取材記事は
1)ショーの実況
2)ショーの感想 ←ここまではある。評価軸はない。
3)ブランドへの評価 ←これもある。どうしてそうなったのかという背景をもっと取材してほしい。
4)ブランドへの改善提案 ←これはあまりない。ビジネスの仕組みがわからないからではないか。
5)自分、自社は業界のために何をするか←ほとんどみたことがない。
日本の若手ブランドに対して「現実を見るべきである」と突き放すのではなく、取材できる立場を活かして多くの成功・失敗事例を分析したうえで、そうならざるをえない理由、できない環境に切り込んで、どうしたらよいかという指針と具体的な方策ぐらいは示してほしいものです。

川久保玲のコム・デ・ギャルソンが欧米で売れた理由は何もクリエイションが評価されただけではあるまい?
金融の話やら、現地のエージェントや人脈の話やら、川久保玲のパートナーの話やらいろいろあって海外で「売れる」に至っている。
サカイだって同じだろう。商品のデザインが評価されただけではあるまい。
そのあたりを何も分析せずして、「若手はなってない」と言ったところで若手にはどうしようもない。

商品のデザインが評価されれば売れるなんていうのは、産地のおっさんが「良い物を作れば必ず売れる」と言っているのと同じ神話でしかない。

現在の若手デザイナーズブランドを見ていて思うことは、20年前に創業した人たちよりも環境が厳しいなあということである。
個人的にはクリエイションのことなんてちっとも興味がないから、ビジネスのことのみを書く。

20年前の創業組もたいがいが厳しいビジネス環境だった。
インディーズデザイナーズブームに沸いたのは98年ごろまででそのあとはひっそりと消えたブランドも数多くある。
当時のデザイナーでまったくの異業種に転職してしまっている人もいる。

当時のデザイナーたちが糊口をしのげたのは、大手アパレルブランドからの「外注デザイン」が受けられた部分が大きい。
年間数百万円くらいの仕事料が支給される。
たとえ、自分のブランドが売れなくても、その契約料だけで最低限度の生活は送れた。

しかし、この「外注デザイン」は現在ではほとんどない。
受けているという若手デザイナーも見たことがない。

これがなくなっていることが大きい。
しかし、理由は単純だ。デザイナーに外注デザインを頼むより、OEM/ODM業者に依頼した方が便利で商品品質が安定するからだ。

デザイナーにデザインを外注しても、実際に商品を作るのはアパレル側である。
アパレル側が工場を手配して生産管理を行わねばならない。

しかし、OEM/ODM業者ならデザインも請け負ってくれるし、工場の手配や生産管理も請け負ってくれる。
アパレル側は丸投げで済ませることができる。

アパレル側から考えれば外注デザインなんていうめんどくさいことよりも、OEM/ODM業者に依頼した方が楽チンである。
当然、そちらを使うようになる。

今のデザイナーズブランドが厳しいのは、販路がないからだ。
自社でネット通販をすれば良いという声もあるが、乱立するネット通販という世界で知名度のないブランドがどれほど集客できると思っているのか。
集客するためにはそれなりのノウハウが必要とされている。もう、「ネット通販を始めましたというだけ」では売れない。

地方の有力専門店が仕入れてくれるのが最も現実的な成功だといえるが、地方の有力専門店も資金も店舗スペースも有限である。
だから、すべてのデザイナーズブランドがその恩恵を被れるわけではない。
当然、取引してもらえないブランドが多数生まれてしまう。

20年前なら大手セレクトショップやアパレルが小手先の観測気球みたいな扱いで、インディーズデザイナーズブランドを扱うことはあったが、アパレル不況でチビってしまっている彼らがそんな売れるか売れないかわからないようなブランドは取り扱わなくなっている。
彼らがほしいのは、「すでに有名で、仕入れたら今すぐ確実に売れるブランド」だけである。

偉そうなことをいうなら、ユナイテッドアローズの上席なんたらという役職のオッサンが自社店で若手デザイナーズブランドを取り扱うようにしてやれば良いのである。

それを棚に上げてメディアも「化石みたいな業界有識者」も上席なんたらのオッサンも何を虫のいいことを言っているのかと思う。

若手デザイナーズブランドが伸びない最大の理由は売り先・販売店がないからだ。
そういう状況を作ってきたのは偉そうに論評している高齢化して化石化した業界有識者たちである。

若手デザイナーたちが「国内は販路がないから海外へ」となるのは当然だ。
しかし、海外こそ「クリエイションだけ」では売れない。金融やらコネクションやらが重要になる。
若手デザイナーが直視しなくてはならないのはその部分である。

NOTEを更新~♪
知名度だけに胡坐をかいたタレントブランドは売れない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n4a8a67be3a89
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