衣料品不振を伝える報道が多いが、衣料品業界の人はどうも、まだ「衣料品、ファッションは特別」と考えているフシがあり、どうにも共感ができない。

バブル期の美味しい時代を過ごしてきた年配業界人の観点の多くは取るに足りないことは言うまでもないが、かなり考えの深い若い世代の人でも、やっぱりどこかに「ファッション衣料は特別」だと考えているフシがあり、驚かざるを得ない。

個人的には、「ファッション=趣味のワンオブゼム」で、ガンプラ、釣り、将棋、囲碁、ドライブ、旅行、美食などの趣味の中の一つだと見ている。

筆者は食にはまったく興味がない。
だから、スーパーの惣菜とサイゼリヤと松屋とコンビニ弁当と鳥貴族が毎日のローテーションでもまったく構わない。
世の中には家族の手料理に対して異常に執着を見せる人がいるが、まったく理解できない。
不味い手料理を食べるくらいならサイゼリヤの方がずっとマシだと思っている。
また、外食でも値段の高低は別にして、店や味に並々ならぬこだわりを見せる人もいる。それもまったく理解できない。

それは完全に「趣味の世界」だと思っているので、自分が巻き込まれないなら、他人の行為は否定しない。

ガンプラを集めるのと同じ趣味の世界で、他人に迷惑をかけない限りは否定されるべきものではない。

ファッションもそれと同じ「趣味」だとしか見えない。

高度経済成長期、バブル期には高額なファッション衣料が飛ぶように売れた。
だから、その幻影をいまだに引きずっている人も多い。

70年生まれの筆者は、高度経済成長期の記憶はほとんどない。
80年代からバブル期なら記憶がある。

このブログで何度も書いているように、80年代に「トレンドのファッション衣料」を買おうと思ったら、いわゆるブランドショップか百貨店くらいしか買場がなかった。

多くの人が勘違いしているが、80年代やバブル期にも低価格衣料品は山のように存在した。
ジャスコやダイエーやイズミヤという総合スーパーに安い服は並んでいた。
今のジーユーやしまむらよりは高かったが、それでもブランド物よりは随分と安かった。

トレーナー3000円くらい、カジュアルシャツ2000円くらいだっただろうか。
これは92年ごろの記憶である。

ジャスコやイトーヨーカドーが衣料品で高利益をたたき出していたのはこのころのことで、この時代も低価格衣料品はそれなりに売れていた。

しかし、現在のような「低価格衣料品ブーム」にはならなかった。
なぜなら、商品の見た目があまりにもブランド物と違い過ぎたからだ。

まったく違う物を作ろうとしていたのではない。
ブランド物をコピーしようとしていたのだが、まったくできていなかった。

見た目のデザイン、色柄、生地、すべてが「何かが違う」という感じだった。
当時の服が残っていないか自宅を探したがさすがにすべて捨てていた。
画像があれば一目瞭然なのだが。

筆者が働き始めて間もない95年ごろでさえ、まだまだ差があった。

例えば、店に「ビッグエイト」という耳慣れないメーカーからGジャンが大量に入荷した。
価格は2900円だったのではないかと記憶している。

どこぞの大手メーカーから独立したオッチャンが立ち上げたメーカーだと聞いたが詳細はそれ以上しらない。
もう今は残っていないのではないかと思う。

リーバイスやリー、ラングラー、ボブソンなどのGジャンも扱っていたが、価格は9800円くらいだった。

価格差を考えると断然ビッグエイトを買うべきだと思うが、色・生地の薄さと風合い、シルエット、すべてが違っていた。恐ろしく「ダサくて安物臭い」商品だった。
だから結局、ボブソンだかリーバイスだかのGジャンを9800円で買った。

今の筆者なら考えられない行動だが、95年当時でさえ、それほどに「商品の見た目」に大きな差があった。

今春に2990円で買った定価3990円のユニクロのGジャンとは比べ物にならないほどの粗末な出来具合だ。

ユニクロのGジャンとて不満はある。
例えば生地が薄いとか、金属のボタンがチャチくさいとか。
しかし、2990円と1万5000円の価格差を考えれば不足はない程度の見た目には仕上がっている。
見るからにダサくて安物臭くはない。

当時のビッグエイトのGジャンは見るからにダサくて安物臭かった。

見た目に差がなくなれば安い方でも構わないと考える人が増えるのは当然である。

食品だって自動車だってパソコンだって自転車だって高性能で低価格な商品はそれなりに売れている。
洋服の買われ方がそうなってもそれほど不思議とは思えない。

http://blogos.com/article/228777/

昨年くらいから話題になっているが、日本におけるアパレル関連の低迷を見ると、もう服の選び方が根本的に変わっている気がする。
で、色んな記事を見ていると、「すべてごもっとも」と思う一方で、「まだまだ業界の人は甘く見てるんじゃないか」という感じもするんだよね。

とある。

この部分には賛同である。業界の人はまだまだファッションを特別なモノとして見ていると感じる。

しかし、実際のところはファッションは趣味の世界のワンオブゼムでしかなくなっていると思う。

「良い物を知れば~」なんて声が業界には多いが、それは興味のない人に「国産のナンチャラ牛を食べてみれば違いが判る」と言ってるのと同じで、余計なお世話でしかない。要らない人にとっては国産のナンチャラ牛なんてわざわざ試す理由がない。

25年前に、ジャスコで買った2900円のなんちゃってジーンズを穿いていた筆者が、リーバイスの501を穿いてみて「ジャスコのなんちゃってジーンズと全く違う」と感動したような「圧倒的な違い」が、今は感じられない。
それはブランド物が劣化したというよりは、低価格ブランドの商品の見た目が向上したということで、その差が感じられない人にとって「良い物を知れ」というのは、海原雄山の食材論と同じで、「知らんがな」としか思えない。

「良い物を知れば」「本物を知れば」という海原雄山理論をぶち上げている間は、衣料品の販売状況が好転するようなことはないと思う。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/