そろそろ暑くなってきた。嫌な季節が始まった。
筆者は暑さが苦手である。できれば夏がない方が良い。
そうはいっても夏はやってくるから、我慢するしかない。

暑くなると、各社はこぞって「吸水速乾機能」を持った洋服を発売するが、個人的にはあまりこの機能が夏に必要だとは思っていない。

というのは、以前にも書いたが、吸水速乾機能を持った肌着を着用するとたしかに汗は吸うが、逆に吸い過ぎて肌着の上に着たシャツが汗でびしょ濡れになってしまうからだ。
吸水速乾肌着を着るなら、上に着るシャツもジャケットもすべて吸水速乾製品でそろえないと意味が無い。

しかし、吸水速乾機能は重宝であることは間違いない。
洗濯をすると乾くのが早い。

ありふれた機能に対して、別の角度からの見方を与えると、それは新しい商品になり、新しい需要が生まれる。
ありふれた吸水速乾機能でも、「洗濯をしたら早く乾きます」という売り方なら新しい需要が生まれる。

こういう売り方が上手いと思うのは、「ディーパーズウェア」ブランドを展開するオールユアーズである。

それについて、ウェブメディアのインディペンドに先日寄稿した。

「必要」に気づき、「形(かたち)」にする “ALL YOURS”
https://independ.tokyo/?p=3091

ブランド立ち上げ時から親しくさせてもらっているが、このブランドはそういう「売り方」が上手い。
このブランドのヒット商品に速乾の「ファストパス」というラインがある。

キャッチコピーは

「真冬に部屋干ししても3時間で乾きます」

というものである。

IMG_2584

(ファストパスのツナギ)

真冬の部屋干しにそれほどの需要があるのかと疑問を感じたが、都心で独り暮らしをする人や、二人暮らしの共働き夫婦などは、洗濯物は部屋干しすることが多いから、ありがたい機能ということになる。

祖父母や大きくなった子供と同居していれば、洗濯を外に干しても雨が降ったり日が暮れりすれば、誰かが取り入れてくれる。
しかし、一人暮らしや共働き夫婦はそうはいかないから、必然的ににわか雨なんかを警戒するなら部屋干しすることが増える。

真夏だと室温も高いから部屋干しでも5時間くらいすれば洗濯物は乾くが、真冬はそうはいかない。
たまに自分も冬の雨の日に部屋干しするが、なかなか乾かない。

そういうときに、この機能は便利だからヒット商品になっているという。

じゃあ、わざわざ洗濯用に新素材を開発したのかというとそうではない。
実は、これは既存の吸水速乾素材なのである。

「吸水速乾素材ですよ」というと夏場しか売れないが、「部屋干し用の速乾素材ですよ」というと一年中売れる。

現在のアパレル業界に欠けているのはこの「視点の転換」「売り方の工夫」だろう。

多くのブランドは固定概念に凝り固まっているから、視点の転換なんてできずにいる。
「売り方の工夫」ということになると、規模やシステムを無視してユニクロに価格追随するか、伝わらない広告をファッション雑誌に掲載するか、どこぞのブランドみたいに低価格な日本製を打ち出すか、くらいしかない。

あとは、マニア・ニッチ層に向けた「物作りの取り組み」を過度にクローズアップするかである。

そしてそのどれもが効果が出ていない。

この4つの手法はありきたりになっており、ちょっとやそっとでは消費者の注意を喚起できない。
それはやっているブランド側が痛感しているだろう。
痛感していないとしたらそれはブランドの構成員と経営者の認識力が著しく低いというしかない。

国内のアパレルブランドの場合、粗悪品は除いて、低価格品とはいえそれなりの品質になってしまっているのだから、ミクロな縫製仕様を過度にアピールしてもよほどのマニア以外には響かない。

ありきたりな既存の「吸水速乾素材」を、新たな切り口で「部屋干し専用素材」にするような発想力、売り方を身に付ける必要があるのではないか。

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