新年が明けても相変わらず百貨店を取り巻く状況は厳しく、良くないニュースが相次いでいる。

三越伊勢丹、新たに5店舗リストラ…札幌や新潟
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20170109-OYT1T50008.html

5店舗を閉鎖するのではなく、縮小や業態変更で対応する考えのようだが、今後の商況如何ではその対応も変わる可能性が高いと見ている。

近鉄百、営業利益が8割減の6600万円 衣料品が不振
http://www.sankei.com/west/news/170110/wst1701100065-n1.html

 近鉄百貨店が10日発表した平成28年3~11月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比82・6%減の6600万円だった。消費者の節約志向などの影響で衣料品が振るわず、百貨店事業が苦戦した。

 連結売上高は1・7%減の1919億円。純損益は2億円の黒字(前年同期は6億円の赤字)となった。

 衣料品は紳士服や婦人服などが不振だった。
 「あべのハルカス」に入る本店単独の売上高は1・0%減の694億円にとどまった。

とのことである。

近鉄百貨店の苦戦の原因の1つには、人目を惹くような店舗が少ないことが挙げられるだろうか。
例えばかつての本店だった上本町店だが実に小ぢんまりとしている。
向かいに、新歌舞伎座に併設された「上本町ユフラ」というファッションビル?商業施設?があるが、衣料品を買うならユフラの方が使い勝手が良い。

これはもちろん好みの問題だが、グローバルワーク、ユニクロ、無印良品とそろえているユフラの方が30代~50代の人間にとっては使い勝手が良いし、親しみのあるブランドが集まっているといえるだろう。

増床改築された「あべのハルカス本店」は確かに人目を惹くが、モダンすぎて天王寺という街には合わないのかもしれない。
何より、かつての阿倍野近鉄はJR天王寺駅から直結する2階陸橋入口すぐに常に「お買い得コーナー」があって、それがいかにも天王寺らしかった。
「5000円・3000円均一パンプス」とか「3000円ハンドバッグ」とか、そういう「お買い得コーナー」が常にあった。

あの界隈で育った筆者の元妻も、「お買い得の靴を買いたいときは阿倍野近鉄へ行く」と言っていたが、増床改築後、入口にはそういう「お買い得コーナー」がなくなった。

IMG_2202

(JR天王寺駅と直結する陸橋入口)

恰好は良くなったが、そういう地元顧客からすると「親しみにくくなった」と感じられるのではないか。

「お買い得コーナー」がなくなったわけではない。
JR天王寺東口を見下ろす2階部分にはそういう「イベントスペース」が設けられているが、この入口はJR駅とは陸橋で直結していない分、目立たず利用客が少ない。
この部分は専門店街「ソラハ」との連絡通路に当たるが、ここからの入場客数は2階の陸橋口に比べると圧倒的に少ない。そんなところでひっそりと「お買い得品」が売られている。

洋服、服飾雑貨に限っていうと、低価格ゾーンは「あべのキューズモール」に客を取られていると思う。
で、もう少し上の価格帯のファッションブランドということになると、天王寺MIOに客を取られていると思う。
それを打破する目的もあり、ソラハを作ったと思うが、誘致テナントのラインナップを比較すると天王寺MIOの圧勝である。

それと、以前は、月に1度くらいは定休日に「会員様優待販売会」みたいなものを開催していた。
その日はクローズドで会員だけが入場でき、全品が10~30%オフで買えた。
バーゲンではない時期に開催することが多かったので、バーゲンに先んじて値引き価格で新作が買えるため、けっこうな人気のイベントで、かなりの売上高を稼いでいたといわれている。

改装オープン後はこれの開催がめっきり減った。
正確にカウントしていないので、間違っているかもしれないが、ほとんど開催されていないのではないか。
これがほぼなくなったことも業績の低迷に大いに関係しているのではないかと思う。

これまでの強みをすべて捨てて、外見だけを洗練させたのが「あべのハルカス本店」であるように見えて仕方がない。

正直に言って、近鉄百貨店に対して即効性のある施策は思いつかない。

三越伊勢丹HDの大西洋社長は、常々さまざまな機会において「今のままの百貨店が、全店そろって売上高を回復できたり、ピーク時に戻すようなことは難しいと思う」というようなことを発言しておられるがまさしくその通りだと思う。

外商と化粧品、地下の食品はさておき、1階~4階までを各ジャンルの婦人服、5階・6階が紳士服、7階子供服というような洋服一辺倒の売り場構成のままでは到底売上高を回復させることは不可能だろう。
ファッションに特化した伊勢丹新宿本店は別格としても、それ以外にそういうファッション売り場が日本全国にどれほど必要だろうか。おそらく今の半分程度で十分ではないか。

別格といわれる伊勢丹新宿本店だって、これ以上に売上高が大幅に伸びるとは個人的には見ていないし、あれと同じものは他の地域には必要ないと思っている。

一般人は業界関係者が思っているほど、ファッションにそこまで興味は持っていない。
そこそこに恰好が良くて、そこそこに安ければそれで十分なのである。
百貨店に納品しているアパレルブランドの商品デザインもクオリティも、低価格ブランドと変わらなくなってきている現状では安い方が支持されるのは当然のことだといえる。

先日、ふと、そういえばここ7年間くらいは百貨店で買い物をしたことがないことに気が付いた。

これでも2000年代前半くらいまでは、夏冬のバーゲンでは百貨店で1枚くらいは洋服を買っていたのである。
当時はユニクロをはじめとする低価格ブランドのデザインは激ダサだったし、完全SPAに転換したばかりのアダストリア(当時社名ポイント)の商品は激ダサな上にクオリティも最悪だった。
必然的にファッションビルか百貨店で買わざるを得なかった。

しかし、2005年くらいから百貨店で買うことが減り、2010年以降は確実に百貨店で1枚も服を買っていない。
もちろん食品なんて買ったことがない。雑貨類も皆無だ。

しいて挙げれば、大丸梅田店に入店しているユニクロで2~3度買い物をしたことがあるくらいである。

若者どころか、業界関係者(底辺の片隅にいるだけだが)の初老のオッサンでさえ「百貨店離れ」を起こしている。

筆者と同様の人は業界関係者が考えている以上に多いのではないか。

そこを直視しないと百貨店の業績低下は止められないだろう。
あと、外国人観光客は今後も増えると考えられるが「爆買い」現象は二度と起きない。
二度と僥倖に期待してはならない。

〈写真集〉昭和の大阪
青木 茂夫/杉田 米行
アーカイブス出版
2007-03-13