昨今では産地企業とデザイナーの協業が増えてきたが、だからといってデザイナーを起用した産地ブランドが成功する確率はあまり高まっていないと感じられる。
もとからすごく成功するという案件ではなかったが、今もその確率はそんなに高まっておらず、従来レベルのままではないかと感じられる。

さて、産地とデザイナーの協業について繊研新聞などでも折に触れられているが、某ベテランデザイナーからは「そんな取り組みは20年前も30年前にもあったけど、どれもほとんどものにならずに終わっているだけ」と辛辣だがなかなか適切な意見をいただいたことがある。

この某ベテランは、筆者よりも年上でおそらく60歳前後だと思われる(正確な年齢を知らない)が、過去に産地企業とのコラボや産地展示会のディレクションを行ったことがある。
実体験に基づいての意見だといえる。

20年以上前のこの業界の実情は知らないが、18年前に業界新聞に入ったときにはすでに、産地とデザイナーの協業はあった。
例えば、産地展示会でデザイナーブランドのファッションショーを開催したり、そのデザイナーが産地で新規開発された特別な生地を使ったりしていた。
90年代後半にはすでにそういう取り組みがあって、成果がほとんど出ていないが、現在まで連綿と続いてきた。
ベテランがいうように、この18年間だけを見ても別に珍しい取り組みではない。

ではなぜデザイナーを起用した産地企業のブランド作りは成果が出ない場合が多いのか。

産地企業や産地全体のブランド会議に何度か出席した経験上からいうと、大きく2つの理由がある。

1、産地企業や産地がデザイナーに丸投げをしすぎている
2、デザイナー側の能力不足

この2つが絶妙なバランスで混然一体となって不幸な結果を招くケースがほとんどである。

まず1である。
産地や産地企業に多いのが「売れるデザインにしてよ」なんていうあいまいな仕事の発注の仕方である。

いやいや、オッサンよ、ブランドコンセプトは?ターゲットは?販路は?テイストは?

これらがクリアにならないとデザイナーはデザインができない。
これらの組み立てまでデザイナーに丸投げするということだろうか?
それならデザイナーの職分ではなく、もはやプロデューサーである。

ブランドを立ち上げたいのだったら、嘘でも仮でも事業主がそのあたりは提示しなくてはならない。
デザイナーとの話し合いの結果修正されるのは構わないが、すべてを最初から丸投げというのはあまりにも無責任である。
丸投げということはデザイナーに全権委任することになるから、デザイナーが好き勝手なデザインを上げても文句は言えない。
それで文句を言うなら、「お前が自分でやれよ」って話になる。

次に2である。

デザイナーという人々は「売ること」にすごく長けていない場合が多い。もちろん例外はいる。
マーケティングとかほとんど気にしていない(ように見える)人も多い。

まあ、ニーズを聞いて追随するのは賢い戦略ではないが、かといって「ニーズを作ってやるぜ」なんてことは、挑戦することを否定はしないが並みの人間には不可能だ。
で、多くのデザイナーの場合、「ニーズを作る」能力に関しては並みの人間と変わらない人が多いように感じる。あくまでも体感的にだが。

変に意気込んでマーケティングに基づかないでモノを作ると、なんやよく分からない独りよがりの製作物が出来上がってしまったりする。

自分の趣味の範疇でやるなら大いにけっこうだが、一応売り物を目指しているならそれはどうかと思う。
あくまでも「デザイン」だから「アート」ではないわけで、売り物にしなくてはならない。
デザインはあくまでも客観性・機能性が求められる。主観的で良いのはアートだけである。

また、「こういうものを作るのはどうでしょう?」という提案の際に具体的なプレゼン物があまりない。
けっこう口先だけで説明する人もいる。

これまで存在しなかったものをプレゼンする際、言葉だけで相手を納得させるのは不可能である。
これまでの見分の範疇から外れたものを人は理解しない。
その範疇外のものをどうやって理解させるのかがプレゼンのコツになる。

そのコツに対しては様々な意見があろうが、先日ご紹介したカルチュアコンビニエンスクラブの増田社長のお言葉を拝借すると、

・リアル化
・実績を示す

が重要になる。

デモ版とかサンプルとか画像とかそういう「リアル化」である。
で、そういう似たような事例を展開した結果どうなったかという「実績」を示す。
自分の過去の実績でも良いだろう。あんまり実績を盛り過ぎると繊維・ファッション業界に跳梁跋扈するアレオレ詐欺になるからご注意を。

これで相手は理解が深まりやすくなる。
もちろん百発百中ではないが、命中精度はこれまでよりは高まるだろう。

デザイナーと産地との協業、デザイナーを起用しての産地ブランド作り、いずれの動きも否定しないし、これでもそれなりに応援はしているつもりだが、以上のようなことをデザイナー、産地側ともに念頭に置いて活動を見直してみてはどうか?

おそらくこれまでよりは成功確率が高まると思うのだが。


情報デザインの想像力―イメージの史学
藤本 貴之
プレアデス出版
2005-02