エドウインの2016年春夏展示会にお邪魔した。

今回の業界新聞的な目玉は、今秋冬からスタートしたEスタンダードの拡充と、ラングラーの高額商品復活だろう。

まず、Eスタンダード。
Eスタンダードは海外輸出も視野に入れた日本製ラインで、価格は8000~16000円くらいというリーズナブルな設定である。
16000円というのは相当に手の込んだ洗い加工を施した物に限られ、通常の加工商品品だと8000~1万円未満である。これなら欧米に輸出しても200ドル未満の販売価格を付けられ価格競争力がある。

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ここに新型のレギュラーテイパードという形を投入する。
また、ストレッチ性を強化した「ジャージーズ」と中空糸「ミラクルエア」を使った軽量速乾「クール」も投入する。
ちなみにここでいう「ジャージーズ」は以前から展開しているジャージーズとは別で、Eスタンダードのジャージーズラインである。
ちょっとややこしい。

このジャージーズのストレッチデニム生地はすごく伸縮性がある。
以前にカイタックファミリーの「360°ストレッチ」を紹介したことがあるが、それに匹敵する伸縮性である。

しかし、このEスタンダードには懸念がある。
品番数が多すぎるのではないかという懸念だ。
シルエットが細身から太めまで今回のスリムテイパードも含めて合計6型もある。
そこにジャージーズとクール、そして膝丈とクロップド丈。
合計で10品番あり、それぞれの品番に加工による濃淡の色番号がいくつかある。

これはちょっと選択肢が多すぎるのではないかと感じられる。

例えば、スリムテイパードとレギュラーテイパードとレギュラーストレートがある。
それぞれの太さの差異はほんの微細なもので、そこまでの微細な細分化が必要なのかと思うし、反対に消費者からしてもその区別はつきにくいのではないかと思う。

よほど気を付けて販売しないと選択肢の多さがかえってこの商品をスポイルすることになりかねない。
企画としては評価しているので、そうならないことを願うばかりだ。

一方のラングラーである。
10代後半~30代前半の若い消費者にとって、ラングラーは4900~5900円のどちらかというと低価格帯に属するブランドだと認識されているのではないか。

筆者のようなオッサン世代だとラングラーというのはリーバイスやリーと並ぶナショナルブランドだったという認識だが、それもあくまでも過去形である。

このラングラーで1万円前後の商品を復活させる。
こちらも日本製だ。

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ラングラーブランドの日本における変遷をまとめると、かつてはラングラージャパンとして独立した企業だった。
それがVFジャパンへと名称変更し、その1年後にあっけなく解散してしまった。
99年とか2000年ごろのことだったと記憶している。
そして、エドウインの子会社であるリージャパンがラングラーブランドを管理することになって今に至る。

20年ほど前のことだが、筆者は当時のラングラーが好きで4本くらい所有していた。
13MWZという品番である。
ラングラージャパンの製品だった。

来春夏のラングラーの1万円前後の商品は、日本製で非常に手の込んだ洗い加工が施されている。
通常ならもう少し高額な価格設定になるが、エドウインでは「価格戦略商品」と位置付けている。
自社縫製工場ならではといえるだろう。

往年のラングラー好きとしてはぜひとも復活してもらいたい。

ところで、ラングラーの中にはもっと価格戦略商品がある。
日本製で5700円くらいのカラーパンツ類である。
これこそ自社縫製工場を所有するエドウインならではといえるのではないか。

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(税抜5700円の日本製カラーパンツ)

「国内工場の維持」という命題になると、高額化という解答を導き出す企業やブランドが多い。
工賃を上昇させるためにはこれは正解の一つである。
しかし、個人的には日本製ブランドの方向性が「高額化一辺倒」になることに疑問を感じている。
高額化以外のモデルケースも必要ではないかと思う。

着物ほどではないにしろ、「日本製だからン万円」「日本製だからン十万円」という価格の商品ばかりになると、よほどのコアなマニア層しか日本製品を欲しがらなくなる。
それこそ着物のように「別世界」の商品という意識を持ってしまう。

そしてそのコアなマニア層だけで、すべてのブランドの経営が成り立つわけではない。
また富裕層を取り込むためには欧米のラグジュアリーブランドとの競合に晒される。
ステイタス性で比べてみても、宣伝販促の巧みさから見ても、国内ブランドではなかなか太刀打ちできない。
結果的に、日本製ブランドも少数の勝ち組と大多数の負け組に分かれるだろう。

だったら、特別な富裕層とマニア以外でも手の出しやすい価格帯の日本製品も必要ではないか。
その成功事例の一つは鎌倉シャツだろう。

エドウインのEスタンダード、ラングラーの価格戦略商品はそれに近い。

奇しくも価格破壊者として認識されているユニクロのジーンズがついに4990円まで値上がりした。
エドウインの日本製品との価格差が縮まっている。

90年代後半~2010年ごろまでのような圧倒的な価格差ではなくなっている。
長い年月を経て、再びジーンズは5000~8000円くらいの価格帯に集束されつつある。

エドウインには自家工場の利点を最大限に生かした「買いやすい価格帯の日本製品」という分野をぜひとも確立してもらいたい。