先日、ファッション雑誌「CUTiE」の休刊が発表された。
休刊とされているが雑誌の休刊は実質の廃刊である。
何年か後にリニューアルスタートされる場合があるので「休刊」とされる。

8月11日発売の9月号で休刊になるので、最終号はもうすぐ発行ということになる。

http://www.fukeiki.com/2015/07/takarajima-cutie-discontinued.html

休刊の理由は発行部数の落ち込みによる営業常態の悪化である。

ファッション雑誌は購読料よりも広告収入で成り立っている。
部数が減るということはそれだけ読者が減って影響力が低下したと見なされて、広告の出稿数が減る。
広告出稿が減るとたちどころに収益が悪化して雑誌発行が続けられなくなる。

このところ、ほとんどのファッション雑誌は発行部数が減り(発行が減っているということは購買数も減っていると考えられる)、収益が悪化している。
部数を維持できているファッション雑誌の方が少数派だろう。

部数が減って広告が減る、収益が悪化して内容が薄くなってさらに部数が減る。
という悪循環スパイラルに陥っている。

そこで最近では、一定のファンがいるメジャーなアイドルをモデル代わりに起用するというファッション雑誌がチラホラと現れ始め、CUTiEもその一つである。

しかし、日刊サイゾーによると安易なアイドル起用はファッション雑誌の業績低下に何ら歯止めをかけられていないと結論付けている。

http://news.livedoor.com/article/detail/10416725/

「発行部数は公称で17万部としてきた『CUTiE』ですが、実際は昨年の時点ですでに休刊圏内だったそう。リニューアルとして表紙にAKB48系アイドルを起用したものの、むしろ逆効果。部数は落ち込むばかりだったようです」(出版社関係者)

「グラビア誌での居場所が減り、“モデル”という肩書で箔を付けたいと考えるアイドルの所属事務所が、ファッション誌編集部への売り込みに躍起になっている。また、起用する出版社側も、芸能事務所とのパイプを作りたいという政治的目的に加え、ドルヲタの購買を期待し、芸能事務所の言いなりに。そんな中、『CUTiE』休刊のニュースは、アイドルを安易に受け入れている他誌にも、緊張感を与えたといえそう。最近は、モデル志望のアイドルも増えているというが、そろそろ打ち止めとなるかもしれない」(同)

とある。

個人的にはアイドルが毎号毎号モデルとして登場するのは、部数回復にあまり効果がないと感じる。
たしかに一定数のファンを持っているから購読数はなんとか維持できるかもしれない。しかし、そのアイドルのファン以外からは支持を得られない。
これが「ゲスト」みたいに1年に1度くらいならそうでもないが、毎号毎号多くのページで露出されたら、そのアイドルのファン以外は雑誌から離れてしまう。
メンズ雑誌でも同じだろう。

雑誌モデルから人気俳優になった人は多くいるが、人気俳優だからといって毎号毎号大量にその俳優がモデルとして登場したなら、その俳優のファン以外は雑誌を読まなくなるだろう。

モデルからアイドル・人気俳優になる例はあるが、その逆はない。

ファッション雑誌は本当に厳しい状況に置かれており、今後この状況がさらに進むことはあっても緩和されることはないだろう。

そういえば、40代独身女性向けのファッション雑誌「DRESS」も債務超過が続き、身売りしている。

幻冬舎は子会社giftを設立して「DRESS」の発行を開始した。
発行開始は2013年4月だ。

しかし、giftの2014年3月期決算は、営業損失3億4400万円、当期損失3億4200万円の大赤字に終わっている。売上高はわずか6億5000万円に過ぎない。
これをもって、giftは決済代行業や旅行事業などを手がけるパスに売却された。

そして、パスはさらに

その後の2015年5月、買収サイドのパス株式会社はgiftの株式を売却して特別損失を出したというリリースを出した。経営不振は続いているようだ。

とある。

http://netgeek.biz/archives/44087

このDRESSは鳴物入りで創刊された雑誌だった。

なにせgift社の陣容が、

創業メンバーには作詞家やAKB48Gのプロデュースで有名な秋元康、サイバーエージェントの藤田晋、雑誌「STORY」の編集長で「美魔女」という言葉を流行らせた山本由樹、幻冬舎の見城徹、エイベックスの松浦勝人とあまりにも豪華すぎる経営陣が揃っていた。

からだ。
各方面のスターばかりであり、オールスターという感じである。
過去の実績からしてもそこそこにはヒットするのではないかと多くの人が予想したが結果は先ほどの通りだ。

企業は4番バッターばかりでは機能的な組織にはならないということだ。
一時期の読売ジャイアンツと同じである。

このスターたちを持ってしても「売れるファッション雑誌」というのは作れなかった。
先ほどの記事はこう締めくくられている。

このご時世、わざわざ右肩下がりの雑誌に新規参入し、しかもニッチな領域を狙ったのがまずかった。大物たちが集まっても必ずしもうまくいくわけではないと経営の難しさを思い知らされる事例だ。ビジネスというのは決して成功した者が勝ち続ける世界ではない。常にその瞬間瞬間に強い者が成り上がり、少しでも弱ったものは一瞬で淘汰される厳しい世界なのだ。

まさしくその通りである。

ファッション雑誌が全誌そろって何十万部も売れるというような時代は二度とは戻ってこない。
中には1誌・2誌がそういう状況になることはあるだろう。しかしその程度である。
そんなバブル期みたいな状況が戻ってくると考えている人がいるなら相当におめでたいとしか言いようがない。

広く浅く大部数を発行するという形態は最早実現不可能なのではないか。

男性雑誌の場合、ネームバリューのある雑誌でも部数はそう多くない。

ここで各雑誌の印刷部数が調べられるから興味のある方は調べてみてほしい。
http://www.j-magazine.or.jp/index.html

今年1月~3月のLEONの印刷部数は83000部強である。
だいたいLEONはずっとこれくらいの部数で推移している。
印刷部数なので購読者数はさらに減る。
印刷したものすべてが売れるわけではないからだ。

そのほかの雑誌も女性誌に比べると軒並み部数が少ない。

メンズクラブで64000部で、ゲイナーよりも2万部ほど少ない。

それでも雑誌が成り立っているのは、それなりの広告数が出稿されているからだ。
今の男性で、わざわざ雑誌を買うというのは各ジャンルともに相当なマニア客層だといえる。
マニアは趣味にはお金をつぎ込む。
そして男性はなににつけてもマニアになり易い。

したがって、男性誌に広告を出稿して高額商品を宣伝することはそれなりの効果がある。
だから男性誌が成り立つのである。

あんなにマニアックな「ライトニング」だが印刷部数は12万7000部あり、LEONよりもメンズクラブよりもゲイナーよりも多い。

しかし、女性ファッション誌はこういう商売には向いていない。
女性に「ライトニング」みたいなマニアックな内容を喜ぶ層がどれほど存在するだろう。
ゼロではないが、それほど多くはないだろう。
ビンテージジーンズマニアの女性とかピンヒールマニアの女性とか、そういう層はかなり少ないだろう。

なぜ、ファッション雑誌が売れなくなったのかと言われることが多いが、
それはファッション雑誌が広告とタイアップと仲間内の塊だということが知られたからだろう。

ファッション雑誌に掲載されているアイテムのほとんどは、広告出稿があったブランドの商品である。
まれに広告出稿なしでも掲載してもらえることがあるが、その多くはその雑誌のスタッフと仲良しなブランドである。

「〇〇という雑誌にうちの商品を載せてもらいたい」と意気込んで勝手に商品を何度送り付けたところで、可能性は限りなくゼロに近い。

一時期Tシャツメーカーの広報を担当していたが、ファッション雑誌にも何度か広告出稿したことがある。
そうすると、広告代理店を通じて、雑誌の方から「次号で一つアイテムを無料掲載しますから送ってください」という連絡が入る。
すべてのアイテムがそうだとは言わないが、体感的に9割のアイテムはこれまで広告出稿があったブランドであろう。

「雑誌編集者が無名のブランドを探し出して、誌面にデビューさせてビッグブランドに育て上げる」なんてことは90年代後半以降はあり得ない状況にある。
極言すると広告出稿によって雑誌への露出は決まる。
もしくは編集長クラスとよほど仲良しであるかどうかだ。
毎晩一緒に呑みに行くとか、毎週日曜日は一緒にレジャーに出かけるとか、そのレベルの親密さが求められる。

そのカラクリが読者にわかってしまうと、雑誌がいくら「このトレンドが新しい」なんて煽ったとしても、それはブランドと雑誌がタッグを組んだ「企画」としか見えなくなってしまう。
実際に「企画」だから仕方がないが、もう一般消費者が「ワクワク」しながらファッション雑誌のページをめくるなんていうことはありえない。
ファッション雑誌側もそういう体質から脱却することは永遠にできないだろう。

長くなったが、最後に。

一時期オマケ付ファッション雑誌が持て囃された。
今もそれなりに売れてはいるようだが、どこかで「雑誌のオマケがどんどん品質が向上している」という記事を読んだことがある。

雑誌の広告料と購読料が値上がりしていなかったら、それはオマケ商法が末期化しているといえるだろう。
なぜなら、今までと同じ品質のオマケでは購読されなくなっているということである。
品質を向上させるためには製造原価を高くせざるを得ない。
広告料や購読料が値上がりして、そのコスト増を吸収できていれば良いが、それができていないなら出版社からの持ち出しが増える。
となると、収益は悪化して最悪の場合、休刊という名の廃刊になるだろう。

そろそろオマケ付雑誌にも限界が見え始めたと感じる。