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南充浩 オフィシャルブログ

今が買収の好機では?

2015年6月15日 未分類 0

 米国のJクルーが昨年から大苦戦しており、巨額の赤字が続いている。

Jクルー、本社の175人リストラ
http://www.senken.co.jp/news/company-news/jcrew-personnel-reduction/

Jクルー(本社ニューヨーク)が、本社を中心に175人を人員削減すると発表した。

Jクルーグループの2~4月期の総売上高は5億8180万ドルと前年同期2%減、既存店ベースの売り上げは8%減で、4億6240万ドルの赤字を計上した。前年同期の赤字3010万ドルと比べて赤字が大幅に拡大し、事態は深刻さを増している。

とある。

今年の四半期決算で、すでに4億6240万ドルもの巨額赤字を計上している。
現在は1ドル125円くらいなので、円換算すると500億円強ということになる。

WWDジャパンでは昨年12月の誌面ですでに、Jクルーが8~10月期に純損失738億4300万円を計上して赤字転落したことを伝えている。

赤字の原因としては繊研新聞の記事では、Jクルーブランドの商品が売り上げ不振であることを挙げている。

そして売り上げ不振の原因として、平山幸江さんはブログで

ところが昨日のWSJでは、多くの顧客が、Jクルーが高いばかりで着たくても着られないブランドになってしまったと嘆いている。WSJオンライン版ではさらに、記事内容に同感する「長年のJクルーの大ファン」のコメントが次々寄せられている。以下が不満の内容だ。(そしてカッコ内が筆者のコメント)

*生地や縫製がお粗末になった。数回洗っただけで穴が開いたり、ボタンが取れたりするようになった。(筆者のTシャツも、必ず脇の下の縫い目から穴が開く)

*同じサイズでもデザインによって大き過ぎたり、小さ過ぎたり統一性がない。また、同社は最近サイズ000を香港およびオンラインに導入し、他ブランドではサイズ10(日本のサイズ13)がJクルーではミディアムとなっている。(典型的な「実寸よりサイズを小さく表示すればお客が喜ぶ」方式?)

*数年前まではどのデザインも素敵で、私のワードローブは全部Jクルーだったのに、この数年はお店に行っても実際に着られるものがない。どのスタイルもスキニー過ぎるか、ダボダボか。(スキニー過ぎるというコメントはここかしこに登場している)

*CEOはメンズ部門は好調と言っていたが、どのスーツも細身過ぎる。(お腹周りに自身の無い人には無理)

*靴やハンドバックはクオリティに対して値段が高過ぎる。(確かに179ドルも出せば、アウトレットストアやフラッシュセールでいくらでもデザイナーバッグを買うことができる。)

*全般的に値段が高過ぎる。これなら、ニーマン・マーカスやノードストロームに行った方がいい。(反論無し)

*着られないような色が多すぎるゴールド、オリーブ、ポピー、蛍光色!?手持ちの服に合わない。(そこがおもしろい、という反論もあった)

*昔に比べて、腕丈が妙に長かったり、ズロっとした服が多くなった。職場に着ていけない。(今の若い層のトレンドに媚を売っているのか?しかしJクルーの顧客はどんなに若くても大学生なので、いかがなものか?)

*Jクルーはアバクロより大人っぽくて、バナナ・リパブリックより洗練されていたのに。(立ち位置が不透明になったということか)

というアメリカの消費者の声を紹介している。
http://www.apalog.com/sachiehirayama/archive/55

ここに挙がっている批判すべてに対応することは不可能だと思われる(ブランドの立ち位置がより不鮮明になるから)が、いくつかに対しては対応しなくてはならないだろう。
どの批判を選ぶかによって今後の施策の成否が決まってしまう。

筆者も含めた古い業界の人にとってはJクルーというブランドはレナウンがライセンス生産していたあのアメリカントラッドカジュアルなイメージが強いのではないか。
LLビーンやらエディーバウアーと似たようなちょっとオッサン向けのトラッドカジュアルである。そして価格は微妙に高かった。

筆者もバーゲン時にはよく店頭を覗いていたが、オッサン向けのダボっとしたシルエットと競合ブランドに比べて微妙に高い価格が嫌だったので、結局一枚も買ったことがない。

日本から撤退してからブランドイメージを刷新して復活したが、どうやら再び踊り場に乗り上げてしまったのではないだろうか。

ファッションブランドは、シーズンを追うごとによりテイストを先鋭化させる場合と、テイストを平凡化させて大衆化させる場合がある。
どちらの場合もやりすぎると大規模な顧客離れが起きる。
平山さんはJクルーの凋落は前者が原因だと考えておられるようだ。
後者の代表事例はワールドではないかと筆者は思う。
90年代にはトガっていたオゾック、インディヴィ、タケオキクチ、ボイコットなどは見る影もなく大衆化されており、ベーシックゾーンのSPAブランドとあまり変わり映えがしなくなっている。
そうなると価格競争が起きて、多くの人はより安い方のブランドを買う。
ワールドに今、どれだけ個性的なブランドが残っているのだろうか。

ユナイテッドアローズの成長停滞の原因は人によって分析が異なる。
前者だと判断している人もおれば、後者だと判断している人もいる。

さて、昨年春先にはユニクロを展開するファーストリテイリングが米国のJクルーを買収するのではないかという報道があった。
この報道は即座に否定されたが、今ならファーストリテイリングはそれほど労せずしてJクルーを買収することができるのではないか。

またJクルーも赤字転落したとはいえ、ブランドステイタスはまだ高い。
この巨額赤字がもう少し続けば、ブランドステイタスは徐々に下落していき、最終的には「不振ブランド」のイメージが定着してしまう。
ならばブランドステイタスが高い今、ブランドの売り時ではないかとも思う。

買収攻勢を、もしかけるとするなら今がチャンスではないか。



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