必ず等しく報道されるわけではないという話
2023年5月16日 メディア 1
メディアには「報道の自由」があると腐るほど言われているが、逆に「報道しない自由」を行使することも多々ある。業界関係で言うと、某業界メディアはなぜかグンゼの決算発表だけは絶対に掲載しない。理由は不明である。
そんなわけで同じようなことをやっていても報じられる企業と報じられない企業が普通にあるし、同じ人と契約していても報じられる企業と報じられない企業がある。
この辺りのメディアの基準はよくわからない。
ただ、基本的には「広く知られている企業やブランドの施策は報じられやすい」ということは言える。反対に「あまり知られていない企業やブランドの施策は報じられにくい」とも言える。
だからユニクロやワークマンは報じられやすいし、他の中小零細アパレルは報じられにくい。例えば、ユニクロがカイハラのデニム生地を使っている(実際はISKOのデニム生地の方が使用比率は高いと言われているが)と頻繁に報じられるが、カイハラのデニム生地を使っているブランドは他にも多々あって、下手をするとマンションメーカーのような小規模零細ブランドも使っている場合もある。しかし、この零細ブランドは報じられることは滅多にない。
とはいえ、ユニクロにせよワークマンにせよ、最初から「広く知られていた」わけではなく、必ず無名だった時代があるので、どの辺りが転機となったのかは皆が考えてみる必要はあるだろう。
先日、9年ぶりくらいに福山に出張した。最後に訪れたのは2014年か2015年の夏である。
福山城と反対側の出口の駅前の風景は結構変わっていた。やたらと大型ホテルが林立していて、今もまた1軒建築中だった。
ホームから降りて改札に向かう途中に自重堂の広告が柱に貼り付けられていた。
新庄剛志氏が大々的に掲載されている。
自重堂とは作業服最大手の老舗メーカーである。作業服業界なら誰でも知っている企業で、一部量販店向けカジュアル衣料もライセンス生産している。
しかし、残念ながら作業服業界以外は知名度が低い。そのため、長年に渡って新庄剛志氏と契約していることも全くと言っていいほど作業服業界以外には知られていない。
ちなみに今春夏物でも絶賛契約中で、2カ月前には新庄剛志氏が登場するYouTube動画を立て続けに4本もアップしている。内容は23年春夏物についてである。
ちなみに再生回数は4本とも1300~2000回程度である。
以前にも書いたが、自重堂がYouTubeを開始したのは2014年のことなので、世間一般からすると取り組みは早かったといえる。この当時、当方なんてYouTubeなんて年に1度か2度しか観なかった。それも懐メロを聞くためである。
だがチャンネル登録者数は9年が経過しようとしている現在も1390人にとどまっている。
2021年に日本ハムファイターズの監督に就任してから元々高かった知名度をさらに高めた感のある新庄剛志氏を起用し続けてここまで話題にならないのは一体何が原因なのだろうか?自重堂の首脳陣は真剣に考えた方が良いだろう。
自重堂以外の業界企業は「超有名人を起用すれば必ず報道されるというわけではない」ことをこの事例から強く認識すべきだろう。
すこし外れるかもしれないが、フォロワー数10何万人のインフルエンサーと契約しても全く売れないブランドも珍しくない。それと共通する要素が少なからずあるのではないかと思う。
そこから、今回は山陽染工へお邪魔したのだが、お恥ずかしい話、訪問するのもじっくり話を聞くのも初めてのことだった。いかに当方の経験が浅いかということである。
岡山・福山周辺というと「デニム生地」というステレオタイプが出来上がってしまっているが、山陽染工はデニムの染色を手掛けていない。
デニム生地を作るための染色は通常は糸の段階でインディゴ染めをするが、山陽染工は糸染めをしていない。生地染め専門である。
だから生地染めのインディゴ染めはできるのである。
祖業が藍染糸を使った備後絣であることは、カイハラその他の周辺企業と同様だが、創業者は生産効率を高くするために備後絣で生地染めで作ろうとしたことがきっかけだそうだ。他の企業は糸染めから備後絣を製造し、今はデニム生地を手掛けている。
備後絣には白い模様が入っている物が多い。生地染めの場合は紺一色に染まってしまうため、抜染してその模様を白抜きするようにしたという。そのため、山陽染工は抜染も得意とする。
あと何故だか、この岡山・福山地区には珍しく柄のプリント加工も得意としている。
岡山・福山地域にあっては結構珍しい特徴なのだが、残念ながら広く世間一般に知られているというわけではない。
創業100年近い老舗工場で関連企業も複数あるグループ企業なのだが、中国紡織という織布工場もその中にある。
この中国紡織は、通常の綿厚地生地や綿デニム生地以外に炭素繊維の生地も製造しているとのことで、炭素繊維は工業用資材や航空機向け資材として重宝されているのだという。
これも知識の浅い当方には初めて聞く話で、業界的にも炭素繊維といえば東レばかりがクローズアップされているのが現状である。
また、都市対抗野球に出場する野球選手を山陽染工と中国紡織は社員として雇用していて、都市対抗野球も支援していることも初めて知った。名だたる大手企業が社会人スポーツチームを手放し続けている中において、こういう支援はもっと知られて評価されるべきではないかと思う。
炭素繊維製造にしろ、社会人野球にしろ、他の企業ならもっと注目され報道されていたのではないだろうか。
メディアは決まりきった特定の有名企業ばかり報道するのではなく、こういう企業や取り組みを広く知らしめる姿勢を持ってほしい。そう思った。
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海藻炭繊維のホレストどうなったのかな?