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南充浩 オフィシャルブログ

新フォーエバー21はアダストリアの1ブランドとして小ぢんまり運営すれば良いという話

2023年2月22日 企業研究 1

当方としては数あるブランドの中の1つに過ぎないとしか思っていないので全く注目していないフォーエバー21の再上陸だが、ウェブ記事を眺めていると予想以上に大々的に報道されていて驚いたので、今回はこの話題を。

旧フォーエバー21も今回の新フォーエバー21も、日本国内での売上規模からも商品面からもそんなに大きな影響力のあるブランドではないというのが実態なのだが、この報道のされ方を見ていると「メディアにとっては訳の分からないネームバリューは高い」ということを痛感させられてしまう。

これだけニュースとして報道してくれるのだから、アダストリアがライセンス生産でフォーエバー21を開始することはそれなりにビジネス効果はあるといえる。

これが、アダストリアとはいえ馬の骨みたいな新ブランドの開始なら、ここまで大々的に報道してもらえることはなかっただろう。よほど知名度の高いデザイナーやタレントを起用する以外は。

物事には何でも賛否両論ある。今回の再上陸?にも賛否両論がある。

当方の結論から言ってしまえば、フォーエバー21に興味が無いからどうなろうと知ったこっちゃないが、アダストリアがわざわざライセンス生産で再開するのは今回の報道だけでも十分に元が取れていると思うし、売上高100億円という新規の目標設定を考えると実現性は高いから、中堅ブランドとして展開するならそれはそれでアダストリアの飯のタネの1つとしてはありではないかと思う。

以上である。

 

さてその上で、今回のメディアの報道姿勢や否定的な意見を見てみよう。

メディアの報道で面白いと思ったのは、正反対の報道が出ている点である。

まず、ファッションイシキタカイ系御用達メディアを目指していると思われるWWDの報道である。

 

「フォーエバー21」期間限定店オープン 復活を待ち望んだファン駆けつける

次に、ブルームバーグの報道記事である。

「フォーエバー21」静かな再上陸、脱ファストファッションへEC中心 – Bloomberg

 

同じ期間限定店オープンに対する記事だが見出しは真逆である。

WWDの記事を読んでみると、実態はブルームバーグの見出しに近いのではないかと思われる。

以下引用する。

平日にもかかわらずオープンの11時には20人ほどが並び、その後も店内は定員の40人前後の客で賑わいを見せた。

とのことである。

これは賑わいというよりブルームバーグの言う「静かな」に近いのではないかと当方には感じられる。

開店前のドアの前に20人くらいが並ぶのは、田舎の国道沿いのジョーシンのガンプラ入荷日と変わらない。何ならワンピースカードの発売日には50人くらいが並ぶからガンプラ人気はフォーエバー21並みだし、ワンピースカード人気はフォーエバー21を越えている、と言えてしまう。

店内40人というのも、ガンプラ再販日のヨドバシカメラのホビーフロアは平日でも優に40人を越えているから、そんなに大きな混雑でもないといえる。

 

今回のフォーエバー21に関して否定的な見方もある。

当方もメディアが使う「再上陸」という言葉には違和感がある。なぜなら、80%の商品を国内企業であるアダストリアがライセンス生産(企画から生産まで)を行う。ライセンスブランドの場合、商品デザインを通すには本国のアプルーバルが必要となる。要は本国のお眼鏡にかなわないデザインはダメということだ。しかしこのアプルーバルの厳格さにはブランド間格差があり、本国でもブランド再建中のフォーエバー21はさほど厳格ではないと考えられるため、実質的にアダストリアの新ブランドというの実態といえるからである。

まあ、それはさておき、このライセンス体制も含めて否定的な見方もある。

再々上陸の「フォーエバー21」は「再上陸ブランドに成功例なし」のジンクスを覆せるか? | セブツーは、世界各地のファッション&ビューティ情報を多言語で毎日配信するインターナショナル・メディアです。 (seventietwo.com)

かなり否定的な意見の記事だが、当方は各論の3分の1くらいは賛成、結論反対である。

ライセンス生産80%という計画である。ローカライズで日本人にフィットした商品がメインと言えば聞こえはいいが、「フォーエバー21」という「昔の名前」に頼ったブランドがそんな簡単に成功するものなのか。

「フォエバー21」はファストファッションとしては「ザラ(ZARA)」「H&M」「GU(ジーユー)」という競合ブランドにメッタ打ちにされて、日本撤退していたブランドだ。

この「フォーエバー21」プロジェクトは好調な同社が手掛けるようなビジネスなのだろうか。

とある。

当方は別段ライセンス生産ブランドは嫌いでもない。物が良くて値段に納得できれば何でもいいと思っている。逆になまじ世界標準物を持ち込まれても何の価値も見出さない。例えば、全世界共通モデルを販売するZARAはトップスの袖が長めなので当方は買わない。そして嫌いである。日本向けに袖丈を短めにライセンス生産しろよと思っている。

逆に業界には、本国物・世界共通商品を異様にありがたがってサイズ感が体格に全く合っていない洋服を嬉しそうに着ている人が結構いる(特に年配層に)が、その判断基準が全く理解不能である。

前回の旧フォーエバー21は世界共通商品を持ち込んで失敗し、2017年~2018年のコロナ禍前にはすでに不良在庫で溢れかえって「セール品を2枚目無料」という驚愕の在庫減らしをしたほどの不振ぶりだったので、世界共通商品に懲りてライセンス生産に切り替えるという判断は間違いではないと思う。論理的に考えて。

 

メディアやその否定論者は新フォーエバー21をあくまでも前回の米国ブランドの延長線上で捉えようとしていると見えるが、アダストリアとしては新フォーエバー21を「看板のある新規参入ブランド」として捉えているのではないかと当方には見えている。

たかが期間限定店をオープンするだけでこれだけのメディアがタダで報道してくれるわけだから、看板の力の大きさの重要性がわかる。そしてその上で、アダストリアの数ある中の1ブランドとして運営していくなら、5年後の売上高目標100億円を達成するのは可能性が高いのではないだろうか。

ブルームバーグの記事内にも

 

運営を担う子会社ゲートウィンの杉田篤社長は「ドーンとバズらせることが目的ではない」と話す。息の長いブランドを目指して3年後の黒字化、5年後の売上高100億円を掲げる。

 

とあり、地に足の着いた認識だといえ、逆に一部のメディアの方が訳の分からない「バズ」を期待しすぎているのではないかと危惧する。

とはいえ、世の中、賛否両論ともに見通しどおりに推移することは少ない。

同じアダストリアでいえば、韓国のエーランドというブランドを鳴り物入りで導入したが、まだ2店舗の出店にとどまっている。

先日、梅田のHEPに5億年ぶりくらいに足を踏み入れたのでついでにエーランドを見に行ったが、夕方で館内は若者で賑わっているのにもかかわらず、広いエーランド店舗には入店者がまばらにしかいなかった。エスカレーターを挟んだ対面の古着も扱っているスーパースピンズのレジには10人くらいの行列ができていたのとは対照的だった。

鳴り物入りで導入し、メディアが報道してくれてもこのようになる可能性もあるわけなので、どうなるのか外野から生暖かい目で見ていきたいと思う。

繰り返すが、アダストリアの1ブランドとして5年かけて100億円に到達させたいという小ぢんまりとした運営なら到達可能だし、飯のタネの1つとしてなら存在意義はあるのではないか、というのが当方の結論である。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/22(水) 5:22 PM

    良いネームを取りましたね

    ・服かういっぱん消費者が持つイメージはゼロ
    ・業界人が持つイメージは無限大(な訳ないw)

    この落差を利用すれば、南サンご指摘のように
    ボクちゃんたち先をいくアタマい~人だと勘違いするw
    業界紙がタダでこぞって取り上げてくれる訳です

    しかも付加価値織り込み済のビッグネームと違って
    ネーム代が割安。なんといっても日本では
    一度大失敗したブランドですから

    そして、この業界、消費者は5年もすれば
    むかしの事なんざ忘れます

    ということは、このネームにつきまとっていた
    安物イメージ・ダメ商品イメージは今では皆無です

    どの商社が間に入ったのやら

    物産ではない。だとすると、いとちゅ~様ですかねぇ

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