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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズの国内販売市場規模は?

2011年1月21日 未分類 0

 ジーンズ売り上げが低迷(反対にチノパン、ワークパンツ類は伸びている)ということを良く書いてきたのだが、ジーンズの年間国内販売数量というのは、だいたいどれくらいかと言うと、はっきりした統計はないのだが、一般的に「9000万本~8000万本」と言われている。

売り上げが好調な場合は9000万本、場合によっては9000万本を越えるが、1億本には届かない。一方、不調なら8000万本。過去7000万本台にまで落ちたことはないと言われているが、もしかしたら2011年は7000数百万本に低下するかもしれない。

大雑把に分けて好調不調で約1000万本の販売数量の差がある。

1000万本というと大きな数字だが、全体数量が3割減になったり、半減したりしないところが、ある意味で「ジーンズの底堅さ」があるともいえる。

このうち、ユニクロのジーンズ年間販売数量が1000万~1200万本と言われており、国内市場の7分の1を占めているから驚く。

一口に「1万本」などと、自分も簡単に口にしてしまうのだが、実際には莫大な数量である。
エドウィン、リーバイス、ビッグジョン、旧ボブソンなどの大手ジーンズ専業メーカーのヒット商品と言われる基準は、品番やメーカーによっても異なるが、だいたい「2万~5万本」ではないだろうか。とくに2000年に入ってから「1型で10万本売りました」などという話しは聞かず、ここ数年なら1型1万本でも十分にヒット商品と言えるのではないか。

で、ここから売上高を計算してみたいのだが、
1本の店頭販売価格がだいたい9800円~13000円くらいまでの商品が多いので、仮に1万円だとしておく。
その1万円の商品が大ヒットして2万本生産した。

そうすると1万円×2万本(10,000×20,000)で2億円の売上高になる。
これは店頭売り上げが2億円であり、通常、メーカーはお店に卸売りするので、当たり前の話しだが卸売り価格はもっと安い。
昔は「6掛けで卸す(店頭の60%の価格が卸売り価格)」と言われたが、今はそんなことはない。55%とか50%とか45%になっており、場合によってはもっと低い掛け率で卸している。
1万円の商品なら6掛けだと卸売り価格は6000円ということになる。

ここでは卸売り価格を50%として計算すると、先ほどの商品は店頭売り上げは2億円だが、メーカーは1億円で卸していることになる。

こう考えると、大手ジーンズ専業メーカーは2万本のヒット商品があっても、その売上高は1億円にしかならない(我々庶民には1億円は莫大な金額だが)。しかも、大手ジーンズメーカーの中では、エドウィンとリーバイスが年間売上高100億円を越えている。
単純化すると、この店頭価格2億円分の商品が、あと99種類ないと年間売上高100億円にならない。

こう考えると、年間100億円以上の売上高があるジーンズ専業メーカーのすごさが改めてわかる。

ジーンズ専業メーカーは、売上高を作るために過去はとにかく品番を増やした。10年くらい前のリーバイスで言えば501があり502があり、503、504、505があり、511、512、515、517がある。さらに646とか702とかその他デザインパンツ類があった。
正直、品番とシルエットの違いを覚えるだけでも一苦労だったのだが、品番数を増やさないと売上高100億円以上を維持することは不可能だったのだろう。

それから、これは年始の繊研新聞でも言及されていたのだが、ジーンズ専業メーカーは売上高と売り場シェアを高めるために、ジーンズチェーン店に積極的に納品していた。それは構わないのだが、ほとんどの場合、それは店の買い取りではなく、売れた分だけメーカーに支払って売れ残った商品は返品するという委託販売だったため、期末の返品受け取りによる利益ロスも大きかった。
通常、期末に返品された商品は、値引きされて再出荷されたりするので、そこでもまた利益は低下するという図式となる。

常々、ジーンズ専業メーカーは売上高100億円を維持しようとせずに、30億円くらいの売上高を維持しながらブランド力を高める方が良いと考えているのだが、上記のような図式のままで無理やり売上高を拡大するよりも、思い切ってダウンサイジングした方が利益も高くなる。ただしその場合は、余剰人員の首切りが必要となるため、軽々しくは動けないという事情もあるのだが。

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