多店舗化とオリジナルライン改変の失敗がメゾンドリーファーを全店閉店に追い込んだ?
2019年3月5日 企業研究 0
タレントブランドは長続きしない場合が多いが、その例外として認知されていた梨花さんのメゾンドリーファーの年内全店閉鎖が報道された。
梨花が手掛ける「メゾン ド リーファー」年内で全店閉店へ
https://www.fashionsnap.com/article/2019-03-02/maison-de-reefur-close/
2012年のスタート時から好調が報道されていたブランドだけに多くの人が驚いたようで、当方も驚いた。
メゾンドリーファーはジュングループが運営しており、ジュンという会社の内情はあまり業界内に漏れることが少ないから、メゾンドリーファーの内情もあまり詳細には伝わっていなかった。
で、それを受けていち早く、深地雅也さんがこれについての記事を書いている。
メゾン ド リーファー(MAISON DE REEFUR)全店閉店は多店舗展開が原因か?
https://note.mu/fukaji/n/nc1fd3f6241f0
これを書くにあたって、数年前までの事情に詳しい人からの情報提供があったという。この記事については非常に興味深く読んだのだが、一部に理解しにくい点があったので、深地さんに直接、より詳細に伺ったので、深地さんの記事の補足という形を取らせてもらう。
深地さんの記事によると全店閉店の原因は2つだと考えられるようだ。
1、多店舗展開
2、オリジナルライン改変の失敗
である。
多店舗化について
多店舗展開という点を見てみる。
今でこそ6拠点、カフェ含めて8店舗を展開しているメゾンドリーファーですが、その拡大のタイミングは意外と遅いです。
まずは2016年8月に新業態を3店舗出店。ブランド始まってから既に4年が経過していました。
とのことで、スタート当初に好調ぶりが報道されたものの、2016年まで多店舗展開をしていなかった。以前のブランド統括の方は多店舗化に頑強に反対されていたとのことだが、その方が退いてから多店舗化が始まっており、
どうやらブランド統括の方は反対はしていたらしいのですが、最終的には本部の意向で決められたのではないかと思われます。中の人が反対し続けていたからこそ、このような遅いタイミングでの展開になったようですね。
とまとめられている。
1店舗で10億円弱の売上高を稼ぎだしていたブランドであるため、ジュンとしては強く多店舗化を望んでいたと考えられる。なぜなら、1店舗で10億円弱を稼げるということは単純計算すれば10店舗出せば、少なくとも50億円くらいには到達できると、普通の経営者なら考える。
これが1店舗で3000万円程度の売上高しかなけれれば多店舗化なんて望まない。多店舗化して売れる保証がないからだ。しかし、1店舗でそれほどの売上高があるのなら、多店舗化は成功しやすいと普通の経営者は考える。
そして、売上高拡大以外にも経営者としては多店舗化したい理由はもう一つある。
それは、多店舗化すればオリジナル商品群の生産ロットがまとまるから、製造原価を下げやすくなる点である。
1店舗で仮に300枚売れたとすると、10店舗にすれば3000枚売れるとは言わないまでも、2000枚くらいは売れると普通は考える。
300枚より2000枚の方が製造ロットが大きくなるから、一枚あたりの製造コストを引き下げられる。これに成功すれば利益率は高められる。これを考えない経営者はいない。
しかし、多店舗化による弊害もある。世の中にメリットだけの話なんていうのは存在しない。
多店舗展開の弊害としては、「管理の煩雑化」「人材の担保」や、ブランドの希少性が損なわれるという問題もあるので
とまとめられているが、その通りで、1店舗のカリスマブランドが多店舗化すると「そこらへんにありふれた陳腐なブランド」になってしまいやすい。
例えば、初期のスターバックスは希少性の高いおしゃれなカフェだったが、今ではイオンモールやアピタにも入店している「普通のカフェ」で、なんならマクドナルドやミスタードーナツあたりと変わらない。
こうなる危険性もある。
おまけに店舗が増えれば増えるほどその管理は煩雑になり、管理担当者も増やさねばならない。逆に生産ロットを拡大してももし売れ行きが悪ければ、今度は抱える在庫量が増えてしまうという危険性もある。
そして、売れ行き不振による在庫量の増加は恐らく、オリジナルラインの改変の失敗でメゾンドリーファーの経営を圧迫することになったのではないかと考えられる。
オリジナルライン改変の失敗
2015年にオリジナルライン「メゾンドリーファー」を「リーファー」へと改変しているがこれの売れ行きが不振だったといわれている。業界内の噂によると40%減だともいわれているから、これが事実だとすると相当に売れ行きが厳しかったということになる。
では失敗の理由はなんだろうか。実は深地さんの記事でもそこは触れられていない。
仕方がないので、何人かのファッション好きの女性に尋ねてみたが、彼女らが口をそろえるには
「値段は据え置きで高くもならなかったが安くもならなかった。しかし、モノ自体があまり良い出来ではなかった」
という。
あくまでも内情も何も知らない人たちの感想に過ぎないが、商品が悪くなったと感じたということで、意外にこういうことから売れ行きが暗転する場合はアパレルでは珍しくない。大衆は思っているよりも目ざとい。
値段は変わらないのに物が悪くなったということは
1、利益を増やすために店頭販売価格を据え置きで製造原価を削った
2、商品製造を手掛けていたOEM会社や商社を変えた
この2つの要因のうちどちらか、もしくはその両方ということが考えられる。
1はすぐに理解していただけると思うが、問題は2である。ジュン自体も工場と直接やりとりするタイプのアパレルではないし、タレントである梨花さんがまさか工場と直接やり取りするはずもない。当然、メゾンドリーファーのオリジナルラインは「メゾンドリーファー」時代からOEM会社や商社が製造を担当していたと考えられる。
「リーファー」にライン名を変えることをきっかけに、何らかの理由でそのOEM会社や商社を変更したのではないかと思う。
工場とブランドの仲介をするOEM会社や商社が変わると、それらが抱えている工場も変わることになる。工場が変わると商品の質や見え方が変わってしまうことはこの業界では珍しくない。
ちなみに深地さんの記事でも触れられているが、自社ECは絶好調で、2年目からは10億円前後の売上高があったといわれている。ちなみにZOZO比率は自社ECの2割未満程度とかなり低く、記事でも触れられているように
ZOZOはアウトレット
という位置づけで、これは非常に正しいZOZOの使い方だといえる。
さて、今後だが、自社ECで10億円前後も販売できる力があるブランドの完全廃止というのはもったいない。実店舗はなくなるが、ECは残るのではないかと考えられる。それがジュングループにとどまったままで残るのか、違う会社に移籍して残るのかは当方にはわからない。
それにしても、多店舗化とオリジナルライン改変の失敗というのは、好調と言われ続けてきた人気ブランドでさえも全店閉鎖に追い込むほどの劇薬だといえる。
他のアパレルブランドにとっては他山の石とすべしだが。
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c6
そんなメゾンドリーファーの商品をどうぞ~