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南充浩 オフィシャルブログ

アパレル各社は全勝するつもりで全ての品番を生産していないか?

2019年2月27日 ネット通販 0

ネット通販を眺めているとけっこうおもしろい。
いろんな商品があるし、値下げされた商品も見かける。個人的には多数のブランドを集めたモールよりも個別企業、個別ブランドのECサイトの方が見やすい。
ただし、Amazonは別で、なんでもそろうので最も見てしまうサイトである。逆に服しかないZOZOTOWNはほとんど見ない。
ユニクロ、ジーユー、アダストリアのドットエスティなんかがよく見るECサイトであり、それ以外はあまり見ない。
そんなにネットで服ばかり買わないし。
Amazonではガンプラや必要備品のついでにたまに服・スニーカー・リュックも検索して見てみる。
 
ECサイトを見ていたら、ずっと表示されている商品がある。また季節物でいつの間にか消えていたのに、シーズンインしたらまた表示される商品もある。
この商品はどれだけの不良在庫があるのだろう?と他人事ながら背筋が寒くなることがある。
とくに自社サイトだとその傾向がより顕著に出ると感じる。
 
例えば、ドットエスティは愛用しているのだが、品切れになった商品が突然復活したり、昨年夏からずっと掲載され続けている半袖シャツがあったりする。
品切れになった商品が突然復活するのは、どこかの店舗で店頭在庫が残っているのが発見されて、それを掲載したのではないかと考えられる。
また、倉庫の片隅から商品の詰まった段ボールが出てきたのではないかとも考えられる。
昨年夏からずっと掲載され続けている半袖シャツについては、作った数量が多すぎたのか、売れ行きが少なすぎたかのどちらかだろうと考えられる。
 
ドットエスティに限ったことではないが、多くのアパレルやブランドが過剰在庫を抱えている。
当方は商品企画やマーチャンダイジングに携わったことがないが、ふと、全品番で売上高を伸ばすために多めに作っているのだろうか?と疑問を感じる。
 
企業活動というのは、高校野球のトーナメント方式の一発勝負ではなく、プロ野球ペナントレース方式で1年間を通じた総合計の結果である。
要は何回か負けても総合的に勝っていればそれでいいということになる。
もちろん理想は全勝無敗なのだが、そんなことは不可能である。
 
商品企画とかマーチャンダイジングも、全品番で大幅に売上高を伸ばすことは理想だが、かなり難しい。それが5品番とか10品番程度なら全勝も夢ではないが、年間で100品番とかを越えてくるとどうしても売れ行きが悪い品番も出てくる。
転売ヤーが大好きなシュプリームとかそういう一部の超人気ブランドを除いては。
 
じゃあ、売りたい品番とそこそこの売れ行きで済ませる品番とを明確に区別して設計してはどうだろうかといつも思う。
この辺りはマサ佐藤氏の専門領域なのでそちらに任せたいと思うが、当方が言いたいのは要は基本的な考え方の問題である。
明確な見せ球と、米の飯として売っていきたい品番とは、積み込む数量にメリハリをつける必要があるということで、そんなことは業界の各社は理解しているのだろうが、ECサイトを見ているととてもそうは思えないところも多い。
 
繊維業界には歴史好きな方が多くおられる。
歴史好きには有名な逸話がある。
兵法で有名な「孫子」だが、実は孫子は二人いて、現在の兵法書の「孫子」を書いた孫武と、その子孫である孫臏である。臏とは見慣れない漢字で、日常的に現在使うことはほとんどない。
そして臏とは普通の人名に用いる漢字ではなく、当時の刑罰の種類で、要するに孫臏とは本名が伝わっておらず、臏刑を受けた孫氏という意味である。まあ、我が国でいうところの清少納言とか紫式部みたいな本名不詳といったところである。
で、この孫臏が斉の国の田忌将軍をサポートして競馬に勝たせた逸話がある。
馬のランクによって上、中、下があって、その三回勝負という競馬である。
 
上馬と相手の上馬、中と相手の中、下と相手の下
 
という実力伯仲の組み合わせとなっていた。
孫臏はこれを
 
下馬と相手の上、上馬と相手の中、中馬と相手の下
 
を対戦させるように進言する。
こうすれば、初戦は負けてしまうが、残り2つは勝つことができ、2勝1敗で田忌将軍が勝てるというわけである。
もちろん理想は3勝だが、実力伯仲の三番勝負をやったところで必ず勝つことは難しいし、場合によっては三戦全敗になってしまう。
トーナメント方式の一回勝負なら、その時に死力を尽くして勝てばよいが、三回勝負とか年間を通じての勝負なら有効に負ける方が得策である。
 
何となくネット上での長期間の展示や在庫処分屋に山ほど同じ品番が入荷するのを見ていると、アパレル各社や各ブランドは全勝するつもりで、全品番を等しく積み込んでいるのではないかと感じてしまう。
もちろん、それなりに品番ごとの生産数量にメリハリは付けてはいるのだろうが、孫臏のアドバイスのように、もっとメリハリを明確に付ける必要があるのではないかと感じてしまう。
2勝できそうな品番はある程度の数量を作り込み、1敗しそうな見せ球品番は本当のミニマムロットだけ作る。
これくらいのメリハリが必要なのではないかと思う。
 
先日、久しぶりにGAPの店頭を覗いたら、冬物最終セールが行われていた。その中に、なぜか無地ファインメリノセーターが定価のままの7990円か6990円で売られていて驚いた。もう2月の末で気温はグングン上がっており、これから大寒波が襲来することは考えにくい。
なぜこの定価のままなのか?
理由は2つ考えられる。
1、最近新たに入荷した
2、定番品なので半年後の秋冬にもう一度売れるためそれまで抱える
である。
しかし、仮に1だとするとGAPのマーチャンダイジングはおかしいし、2だとすると不良在庫を半年くらい抱えることになるから当然、新商品を製造・入荷しにくくなる。
どちらせよ、悪手である。
そして2だとすると、作りすぎて売れ残っており、それを半年間抱えておくという決断を下したとも考えられる。もしこれなら、あまりにも製造数量のメリハリがなさすぎるのではないだろうか。
各社ともに不良在庫で苦しんでいるのだから、「確実に勝てる品番」以外は作り込まないことがこれまでよりもさらに重要になっているのではないかと思う。
 
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c6
 
とてもためになる孫子の兵法をどうぞ~

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