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南充浩 オフィシャルブログ

アダストリアの正月の福袋廃止は英断

2019年2月5日 売り場探訪 0

正月が明けたころ、ファッション専門学校の生徒と雑談をしていたら、この生徒は某大手で長年販売員のアルバイトをしているのだが、「今年は福袋が売れるブランドと売れないブランドの落差が激しかった」と話していた。
商業施設内のテナントでのアルバイトだから他店の状況もわかる。
2015年頃までなら、福袋を発売したらほとんどのブランドで売れていた。もちろん、売れたブランドと鈍いブランドに格差はあったが、それでも最終的には正月3が日くらいでは消化できた。
ところが、2015年を越えると、だんだんその格差が激しくなり、売れるブランドは今年も一瞬でなくなるが売れないブランドはいつまで経っても残っていて、そのアルバイトによると、売れてないブランドは余らせたまま店内に福袋を戻したとのことで、他の商業施設でも似たような状況だったと考えられる。
当方は売れていないブランドは、来年から福袋なんかやめてしまえばよいと考えている。
先日、アダストリアの1月売上速報が発表された。
全店売上高前年比92.7%、既存店前年比94.0%という数字である。
その理由についてアダストリアでは

1月は、月全体を通してセール商戦の勢いが弱く、 加えて、当年は全社として福袋の販売を実施しなかったため

と説明している。
 
この説明は短くはあるが、ある程度状況を正直に開示していると感じられる。
なぜなら、当方はアダストリアの自社ECサイト「ドットエスティ」で年に何度か買い物をしていて継続的にウォッチしているが、12月からの値下げ攻勢(2枚〇%引き、タイムセールなど)が凄まじく、当方も12月に合計4000円分くらい買ってしまった。
また店頭では、SPAの宿命としてユニクロと同様に常に「セールコーナー」がある。
ドットエスティを見て、店頭を見ていたら、「絶対に正月バーゲンで買いたい」とはならなくなる。毎月それなりに値下げされた物を手に入れればよいという考えになる。
これはユニクロとて同じだが、ユニクロの場合、もう少しベタに「創業祭」とか「感謝祭」とかそういう数日限定のイベントがあり、現低価格の目玉商品がある。
正月と夏のバーゲンに関してはユニクロ顧客は関係ないが、創業祭とか感謝祭にはユニクロ顧客は大挙して押し寄せる。
アダストリアもベタに「創業祭」とか「感謝祭」とか「〇〇ブランド誕生何周年祭」とかをやってみてはどうか。多分、正月バーゲンに期待するよりもそちらの方が確実に集客できて売上高が伸びるのではないかと思う。
 
しかし、今回のアダストリアの発表で注目したいのは

「福袋を廃止した」

という部分である。
前半にも書いたように福袋を出せば全ブランドが売れたという状況ではなくなっているから、この方針は英断だといえる。
また、よく知られているように、今の福袋は「福袋用の商品」をわざわざ作って詰め合わせており、採算的にも怪しいものが多い。
それこそ2005年頃までは本当に売れ残り品を各ブランドが福袋に詰めていたから、集客効果と同時に不良在庫の現金化に大きく寄与していた。
2003年頃に当方も一度買ったことがあるが、夏物の半袖ばかり詰め込まれていて、そのブランドのよほどのファンでもない限りはあまりお勧めできる内容ではなかった。
そういう声が多発したのだろう。
2010年頃からは各ブランドが、正月にふさわしい冬物で、サイズもS,M,Lを揃え始めた。なんだったら、さらに色別にまで分けることもあった。
消費者の利便性は格段にアップしたが、本来在庫品なのにあんなにキッチリと色別・サイズ別に分けられるのか?という疑問が噴出したのは当然だといえる。
メディアに多く書かれるようになったのだが、それは各社が福袋用の商品を「わざわざ」作るようになったからだった。
しかも5つセット1万円とかの販売価格に合わせるように、製造コストも抑えているから、ブランド側にもうまみはないし、製造業者のうまみもなかった。
おまけに内容が少しでも悪ければ「鬱袋」といわれてネットにさらされるリスクもあるわけだから、収益面でも広報面でも、福袋を売る意味はほぼなくなっていた。
さらにせっかく無理をして作っても売れない場合も珍しくないのだから、一時的な集客以外に福袋のメリットはなくなってしまった。
福袋がなくては本当に売れないのか?
ユニクロはもう何年間も福袋は用意していない。しかし、毎年正月はそれなりに売れている。
1月1日、2日、3日とそれぞれ日替わりの値下げ商品を用意していて、それが集客装置となっている。
普段手が出にくい値段帯のブランドなら福袋を買いたいと思う人は多いだろうが、ユニクロより1000円か1500円高いくらいのブランドなら無理をして作った福袋よりもユニクロ方式に日替わり目玉値引き品を作って告知すれば、それが集客装置になるのではなないか。
福袋を無理して作る経費と、目玉品を値引きして告知する経費はどちらが安いのだろう。
福袋を作る経費をそちらにまわせば賄えてしまうのではないか?
福袋を作らなくなると、さらには「鬱袋」と書かれてネットで晒されるリスクもなくなる。
一時的な店頭集客は減るかもしれないが、浸透すればユニクロのように福袋なしでも一定の売上高が見込めるようになると考えられる。
そういう意味では、アダストリアの今回の福袋廃止の施策を評価したい。
 
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