限界点が露呈したトウキョウベースのビジネスモデル
2018年7月17日 決算 0
やはりというか、当然というか、「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」を展開するトウキョウベースの業績が崩れた。
もちろん、早晩崩れると思っていたし、同社が発表しているような成長戦略は到底不可能だと思っていた。
2018年2月期の第一四半期決算は
売上高が29億3000万円(前期比0・6%増)
営業利益が3億2500万円(同28・2%減)
と微増収大幅減益に終わった。
さらに、微増収といっても、「出店増加にもかかわらず、売上高が横ばいだった」(WWD)ことから、既存店は前年割れだと考えられる。
このため、連休前の7月13日のトウキョウベースの株価はストップ安となり、連休明けの7月17日の株価は600円台にまで落ち込んでいる。
トウキョウベースの2018年2月期決算の売上高は127億8000万円で、客単価3万円前後の高い洋服を売る商売は、このあたりが成長の限界点だと常々思ってきた。
恐らく150億円か200億円くらいまでは中長期的には成長が可能だろうが、1000億円という売り上げ目標は何十年かかるのだろうかと思うし、今の「高価格帯商品」だけではたどり着くことは絶対に不可能である。
売上高1000億円に到達したユナイテッドアローズが売上高を大幅に伸ばすことができたのは、中価格帯のグリーンレーベルリラクシングを開発したからだ。店舗数もグリーンレーベルリラクシングが圧倒的に多い。
昔の「高価格セレクトショップだったころのユナイテッドアローズ」のファンからは少し馬鹿にしたような目で見られているグリーンレーベルリラクシングだが、お高い本体ラインを買うことに抵抗感のある人からは支持を集めている。
また、スタート当初はクソダサい商品が多かった低価格ブランド「コーエン」だがこちらもそれなりに支持を集めていて、企画内容も向上している。
洋服業界の人やそれを取材するマスコミはいつも考え違いをするのだが、
低価格=利益は薄いが、買う人の人数は多く数量がさばける
高価格=利益は厚いが、買う人の人数は少ない
という絶対的な条件をいつも忘却し、「高価格帯で買う人も多い」というブランドが出現できると考えてしまう。
トウキョウベースの売上高1000億円構想なんてその典型だろう。
トウキョウベースの店頭に並んでいる高価格な洋服が1000億円も売れることは到底あり得ない。
トウキョウベースのスタイルはよくて200億円くらいが限界点だろう。
それに価格帯以外でもトウキョウベースのビジネスモデルには疑問を感じるところが多々ある。
5月に行われた2018年2月期決算発表では、EC(いわゆるインターネット通販)の不振に言及されているが、トウキョウベースのECはZOZOTOWNへの依存度が病的なほどに高い。
依存比率は86%もあり、自社ECはたったの14%しかなく、ほとんどないに等しい。
そのECが崩れた理由は「ZOZOTOWNの低価格化と合わなかったから」とトウキョウベース側が発表している。
にもかかわらず、5月の株主総会では「ZOZOTOWNとの連携を強化する」とも発表しており、価格帯が合わない販路とさらに連携を強化するという意味がまるでわからない。
というより自社ECの比率を上げるノウハウがないから他力本願でZOZOTOWNに任せるという意味にしか聞こえない。
5月の株主総会をレポートしてくれているありがたいブログがある。
http://www.bcjosaka.com/entry/2018/05/26/015947
この方は株主なので期待しておられる書き口だが、その期待は極めて残念なものとなるのではないかと当方は見ている。
その一部をご紹介したい。
2、当面のターゲットを売上高1000億と宣言したが、期間は10年程度と考えている(現在127億)
と売上高1000億円目標の到達時期をかなり後倒しにしている。
まあ、これは賢明な判断だろう。ただし、今のブランドラインナップのままで1000億円を到達できることは永遠にないと当方は見ているが。
また、トウキョウベースの営業・販売姿勢でもマスに売ることは難しい。
トウキョウベースの各店は店長やスタッフによっても差があるが、強引な売り付けが多いことで有名である。(もちろん例外店員もいる)
それが批判されるとトウキョウベースの谷正人社長は決まって「99%に嫌われても1%に好かれればいい」と説明するが、99%に嫌われるようなブランドがマスに売れるはずもない。1%の顧客を捕まえたいなら、そういうニッチでスモールなビジネスを展開すべきで、拡大志向とブランド構築の方向性がちぐはぐで、当方から見ると、学生ノリのまま100億円まで拡大できてしまったようにしか見えない。
また、ここのブランドは、3つか4つあるが、どれも似ており見分けがつかない。
これはアダストリアやストライプも同様の弱点があるのだが、ブランド同士が似ており、イメージの違いが思い描けない。
ユナイテッドアローズなら細かいブランドは置いておいても、本体とグリーンレーベルリラクシングとコーエンの違いくらいはイメージが思い描ける。
屋号だけ変えて似たようなブランドをいくら増やしても、そのテイスト好きな客しか集まらず、支持は広がらない。
だからトウキョウベースはこれ以上売上高を伸ばすことは難しいだろう。
さらにいえば、盛んに掲げてきた「原価率50%」とか「原価率60%」というのは本当なのだろうかといぶかしく思う。
例えば、オンライン通販専用のソーシャルウェアというブランドをここは盛っているが、ZOZOTOWNで10%オフセールを開催している。
原価率60%を公言していながら、10%も値引きできるのはどうしてだろうか。
これが自社サイトなら残り30%粗利益が残るってことになるが、ZOZOTOWNの場合は売上手数料が引かれる。
後発でZOZOTOWNに参加したブランドは35%引かれると言われているが、トウキョウベースの手数料はもう少し安いようだ。
前述の株主総会レポートでは
当社のZOZO取引を決算書から推定するとかなりいい条件で取引していると思われるが、どうか?
有価証券報告書に販売手数料の金額が記載されており、それがすべてZOZOへの支払いだと仮定すると、ZOZO売上高(売上高×EC率×ZOZO率)に対する手数料率17.8%と試算されます。あくまで推定ですが・・・
とのやり取りが記されており、17・8%だとしたら、ほとんど粗利益はなくなる。
17・8%未満としても粗利益は極めて薄くなる。
そして粗利益には「経費」が含まれているから、経費を除けばほとんど利益は残らないことになる。
そんな設定で本当にやっていけるのか極めて疑問しかない。
何にせよ、ノリと勢いだけで127億円まで到達したトウキョウベースだが、そろそろ正念場に差し掛かっている。
これまでのようなノリと勢いだけでは、今後の成長戦略を描くことは難しい。冷静な分析と緻密な施策が必要になるが、現時点で外野から眺めていると、トウキョウベースという会社にそれがあるとも思えないし、今後それらを備えていくとも思えない。
【告知】多数の要望があり、8月24日のマサ佐藤(佐藤正臣)氏とのトークショーを昼間から夜の飲み会へと変更しました。(笑)
ぜひともご参加を。詳細は以下のURLで。
https://eventon.jp/13683/
NOTEの有料記事を更新~♪
トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみたhttps://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n78d0021044a2
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