MENU

南充浩 オフィシャルブログ

メディアの「何でもユニクロ病」「何でもゾゾ病」はミスリードを引き起こすだけ

2018年1月30日 メディア 0

仕事らしい仕事にもなっていないのに、一応、衣料品関連の記事は目につく限り読むようにしている。
繊維・アパレル業界はそれはそれなりに混迷し続けているが、記事を読んでいるとメディア側も相当に混迷している。
というか、メディア側は少なくとも20年前から混迷していて、ステレオタイプの紋切り型の報道が多い。
今のメディア側のトレンドでいうと、「なんでもユニクロ」「なんでもゾゾ」である。
業績好調な新興アパレルがあれば「第二のユニクロ」、衣料品のネット通販関連なら「第二のゾゾ」とか「ゾゾと比べて云々」である。
少し前まではストライプインターナショナル(旧社名クロスカンパニー)も成長途中はずいぶんと「第二のユニクロ」とか「ユニクロを追撃」なんて報道があったが、ストライプインターナショナルのどこが第二のユニクロなのか当方にはさっぱりわからない。
メンズ服をほとんど手掛けないストライプと、メンズ服の売上構成比が大きいユニクロは土台がブランドスタンスが異なる。
どこぞの経済記事で、「ユニクロはなんとメンズ売上高が4割を占める」というのを見たが、昔から知っている人たちからすると「何を今更」だし、逆に「メンズ売上高が4割まで低下したのか」と驚かされる。
ユニクロは元々メンズ服の方が強かった。
2005年ごろでさえメンズ服の売上高が6割強あったとも聞いている。
低価格・高機能性・高品質というユニクロのキーワードは、レディースよりもメンズの方が響きやすい。
ユニクロというブランドは極めて男性的な思考で構築されていると思う。
だから、当方はユニクロが好きなのかもしれない。
感性だとか共感だとかカワイイだとか雰囲気だとかそういう女性的な判断基準のブランドは当方の好むところではないからだ。
手の届く範囲の価格でそれなりの見え方をする洋服を提供するというところは共通しているかもしれないが、それなら、コックスもパレモもキャラジャも第二のユニクロといえる。
低価格でそれなりの見え方をする洋服を提供しているSPA型企業は全部「第二のユニクロ」ということになる。
第二のユニクロ、どんだけあんねん?!

20年前後、記者会見に出席してきた経験からすると、業界紙や業界雑誌ではなく、朝日・読売・産経・毎日などの「大手一般紙」(部数が激減しているのでそろそろ大手でもなくなりそうだが)の記者は、会見の場で見ている限りにおいては、繊維・ファッション業界に詳しくない人が多く、質問が的外れなことが多い。
これも以前に書いたが、グランフロント大阪のオープン会見に出席したときのことだ。
記者会見場では質疑応答の際、記者は所属会社と名前を述べてから質問する。
読売新聞経済部の若い記者が質問をしたのだが、その質問内容に驚かされた。
「グランフロント大阪にはアウトレットモールに入店しているブランドが多数入店していますが、グランフロント大阪の競合相手はアウトレットモールでしょうか?」
という質問で、傍から聞いていて失笑を禁じ得なかった。
これに冷静に丁寧に回答されたグランフロント大阪側の人は流石に大人だと感心した。
当方なら、アホらしすぎて質問を却下しただろうから。
この記者は正規店とアウトレット店の関係すら知らないのである。
デスクによる手直しがあるとはいえ、こういう記者が記事を書いている。
だから、一般紙のファッション記事がおかしいのは仕方がないとして、業界紙・業界雑誌・経済誌・経済紙と呼ばれる媒体が、一般紙よろしく「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」という報道姿勢はいかがなものか。
このブログの改装でもお世話になり、ウェブ関連の仕事でもお世話になっているスタイルピックスの深地雅也社長がこんな記事を書いている。
メディアはわかりにくい指標を使わないでください
https://note.mu/fukaji/n/n3eacc37e63a0
これは先ごろWWDのウェブに掲載された

ユークス ネッタポルテの2017年通期決算 売上高2800億円で「ゾゾ」に拮抗か
https://www.wwdjapan.com/536735

という記事に対しての意見である。
ユークスネッタポルテというのはリシュモン傘下(そこからの売却が先日発表されたが)で、ラグジュアリーブランドECの最大手企業である。当然、国内企業ではない。
一般にECには直販型とモール型があり、さまざまなブランドをテナントとして入店させているゾゾはモール型である。
早い話がファッションビルといえ、それぞれのテナントから出店料やら手数料やらを徴収していて、それがゾゾの「売上高」である。
テナントの売上高合計は「取扱高」として表される。
当然のことながら、仮に「取扱高」が1兆円を越えようと、それはゾゾ自体の売上高にはならない。おわかりだろうか。
1兆円の何%かがゾゾの売上高ということになる。
一方、ユークスネッタポルテは今のところ直販型である。
そうすると売上高は直接的な売上高であり、取扱高ではない。
しかも取り扱いブランドがまったく異なる。
方や欧米ラグジュアリーブランド、方や国内ファッションブランド(一部に量販ブランドも含む)。
当然、顧客層も客単価も販売価格も異なる。
これでどうして「ゾゾに拮抗」などという見出しを付けるのかまったく理解できない。
顧客層やらなんやらは置いておいたとしても「取扱高」と「売上高」を並べて「拮抗した」と報道することに何の意味があるのか、いや、ない。(反語的表現)
これこそ、グランフロント大阪とアウトレットモールを並べて論じようとした読売新聞経済部記者と同じレベルといえる。
ゾゾはもしかしたらユークスネッタポルテもベンチマーク対象としているかもしれないが、おそらくユークスネッタポルテはゾゾを歯牙にもかけていないだろう。ラグジュアリーからするとジーンズメイトやタカキューまで入店しているゾゾはまったくの競合相手ではないからだ。
これを知ってて混同させたならWWDの編集方針はおかしいし、知らなくて混同してしまったのなら業界メディアとも思えない。
メディアの「何でもユニクロ」「何でもゾゾ」病は本当に根深く、百害あって一利なしでしかない。

NOTEを更新~♪
大手広告代理店を使って残念な結果を甘受する残念な国内アパレル 企業
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n9a5a776d532a
あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro
昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします


この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ