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南充浩 オフィシャルブログ

「作るだけ」ではデザイナーズブランドは運営できない

2018年1月26日 デザイナー 0

今日はちょっと風味を変えて。
現在、漫画を読む層は30代~50代くらいのオッサン(オバハン)世代だと言われていると、何かの統計にあった。
昔、漫画は子供や若者の物という印象が強かったが、その統計によると最近の若い人は漫画離れだと言われている。
たしかに専門学校の生徒と話すと、「漫画を読んだ」というよりは「アニメを見た」という声の方が多いような気がする。
自分で読み進めなくてはならない漫画よりも、自動的に進んでくれるアニメの方が見やすい。
そういう意味では漫画を読むというのは、アニメを見ることに比べると大変な労力を要するといえる。
人間は便利な方を使う生き物だから漫画よりアニメという選択になるのも当然といえる。
当方もオッサン世代、というよりそろそろジジイ世代なので、漫画は好きで、よく読む。
それでも昔よりは読む量が減ったし、買う単行本も減った。
で、今でも週刊少年マガジンだけは買っているが、これも楽しみにしている漫画が減ってきた。
今だと野球漫画「ダイヤのA」とサッカー漫画「Days」くらいだろうか。
そういえば、長らく読んできたボクシング漫画の「はじめの一歩」だが長く続きすぎてグダグダになって、ついに今週号では引退してしまった。
ライバル対決も世界チャンピオンへの挑戦も果たせないままの引退である。
しかも引退の原因となった敗戦相手は、今までからの因縁のある登場人物でもなんでもなく、ポっと出のモブキャラみたいなフィリピン人ボクサーで、主人公とは何の因縁も絡みもない。
実際の人生なんてそんなものかもしれないが、フィクションである物語において、この伏線のなさはちょっと呆気にとられる。
構成としては素人以下で、これでまだ最終回を迎えていないのだから驚くとともに呆れる。
それはさておき。
その週刊少年マガジンに、ファッション業界を扱った「ランウェイで笑って」という漫画が昨年5月から連載が始まった。
女子高生がパリコレを目指す漫画、「週刊少年マガジン」で連載開始
https://www.wwdjapan.com/423066


ファッションを扱った漫画は珍しいと思った人もいるだろうが、ファッション漫画は昔もパラパラとあった。
例えば「こっとん鉄丸」。
どんな内容かというとかなりぶっ飛んでいる。
「包丁人味平」のファッション版というべきだろうか。
詳しくはこの紹介記事をご覧いただきたい。
パクリ度ゼロ! デザイン業界激震の独創的すぎるファッションマンガ『こっとん鉄丸』
https://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20150923/Cyzo_201509_post_19017.html

連載は87年というから今から30年前だ。
そんな荒唐無稽な「こっとん鉄丸」とは異なり、いわゆるデザイナーズブランドをけっこう真面目に描いている。
ファッション業界からもそれなりに評価が高い。
当方も「良く調べて描いているなあ」と思う。
ただし、当たり前だが、フィクションとしてそれぞれの段階が美化されているのは多少割り引かねばならない。
あまりにも「作ること」が美化されすぎているし、百貨店のバイヤーはあんなにスマートで切れ者でイケメンではない。(笑)
今週号(1月24日発売)では、文化服装学院とおぼしき大手ファッション専門学校のファッションコンテストの審査が描かれている。
それぞれの提出作品はそれぞれ、審査員からボロクソに批評される。
「ダサい」だとか「おっさんのポロシャツみたい」だとか「ウエストの位置を高くすべき」だとか、そんな感じである。
それを踏まえた上で、2時間だけ批評を元に手直しできる時間が与えられる。
手直しするために動き始めた生徒は失格で、手直ししないことを選んだ者が合格になった。
その理由は「ダサい」とか「かっこいい」とか「イケてる」というのは個人の主観で、主観はそれぞれ違う。
デザイナーズブランドとして提案する限りは、そういう批評も受けるし、かといって批評をすべて受け入れて修正していては、意味のわからないブランドになってしまう。またトレンドや大衆の好みも変化する。その変化を起こさせるのがデザイナーだから、手直ししないことを選んだ人が合格というワケだ。
ちなみに当方は、ヴェトモンのデザインがちっともかっこいいとは思わない。
でも世の中にはファンがそれなりにいる。
ファッションなんてそんなものだ。
どんな裁定が下されるのかと興味深く読んでいたが、なるほどと唸らされた。
良く調べてそして消化されて描かれていると思う。
しかし、その一方で、今の専門学校や専門学校のデザイン科の生徒は喜びそうで危険だなあとも思う。
審査の基準はまさにその通りなのだが、今のファッションビジネスはそれだけでは不十分だ。
デザイナーズブランドはカネを回してブランドを運営しなくてはならない。
そのために金融だとかファンドだとかのことはさておき、まず、商品(作品ではなくて)を売らねばならないのである。
特定の人からボロクソに批評されようと、特定の人からは強烈に支持されなくてはならない。
当方がちっとも良いと思わないヴェトモンのように。
金融だとかファンドのことは重要だが置いておくとして、デザイナーズブランドを続けるためには、まず、「売ること」と「強烈なファンを作ること」も物作りと並行してできなくてはならない。
これができないなら専門学校生と変わらない。
ファッションは作ってそれだけで「おしまい…。」ではない。
作った限りは売れなくてはならない。
それ故、専門学校では「売ること」「強烈なファンを作ること」も教えねばならないのに、それができていない。
だから「作るだけバカ」みたいな学生を量産しているのだが、そもそも専門学校の講師からして「作るだけバカ」が多いからどうしようもない。
良く調べられて描かれているこの漫画だからこそ、最終的にはそこまで踏み込んで描いてもらいたいと思う。
そうでなければ、単に「作ること賛美」のステレオタイプだし、「作るだけバカ」を増やしてしまう可能性も高い。
そのあたりを今後期待したい。

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値段を3割下げてもシップスは復活しない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n529899609bdc
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