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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション業界にはびこる「過剰なフィクション」と「嘘の神話」

2018年1月16日 産地 0

衣料品をわかりにくくしている原因の一つに、業界の内外にはびこる「過剰なフィクション」がある。
モノ余り状態の現在において、商品を売るには「ストーリー作り」「物語性」が必要であることは言うまでもないが、あまりにも過剰にフィクション性が取り入れられた場合、かえって消費者を惑わせてしまう。
衣料品に関してはこれは今に始まったことではなく、かなり昔から連綿と続いているのだが。
80歳縫製士が最後の挑戦、クラウドファンディングで”究極のシャツ”発売
https://www.fashionsnap.com/article/2018-01-12/teruko-original-shirt/

奈良の縫製工場がシャツでクラウドファンディングに挑戦しており、これはこれでがんばってもらいたいのだが、業界人から一斉に突っ込みが入ったのは、動画で「一生着られるシャツ」という発言の部分にだった。
もちろん、動画の編集工程でカットされた言葉があるのかもしれないが、この動画ではシャツというアイテムの性質自体をミスリードさせる。
断言すると、一生着られるシャツなんていうのは存在しない。
リペア(補修、修理)を加えれば着られるシャツはある。しかし、リペアなしで一生着続けられるシャツなんていうものはこの世には存在しない。今のところ。
まず、長年着続ければ袖口と襟が擦り切れる。
以前にお会いしたことのある積水ハウスのベテラン営業マン(推定40代)はシャツの袖口が擦り切れていた。
それが気になって仕方がなく、何を話したか覚えていないが、袖口が擦り切れたシャツだけは鮮明に覚えている。
またこのシャツのように白シャツは着用を繰り返せば、皮脂がこびりついて必ず黄ばむ。
また襟の内側には「汚れの首輪」が確実に刻み込まれる。
どんなにウタマロ石鹸で丹念にこすっていても、何十年かの間には確実に汚れの首輪は刻み込まれる。
これらを解決しないかぎりは一生着られるシャツなんていう商品にはなり得ない。
衣服の傷みは着用回数と洗濯の回数に反比例するから、年に1度くらいしか着用しないというならもしかしたら一生着られるかもしれないが、デイリーユースで月に何回か着用するのであれば、確実に20年は持たない。
おまけにいえば、「縫製士」なる職業も実在するのかどうかすら怪しい。
40年前とか50年前には存在していたのかもしれないが、少なくとも20年前からこの称号を持つ人には会ったことはないし、見聞きしたこともない。もし、「縫製士」に関してご存知の方が居られたらご教授いただきたい。
この過剰に盛られたストーリー性と「縫製士」なる実在未確認職業がなんとも気色悪い。
最近は「10年持つ服」だとか「100年持つ服」なんていうキャッチフレーズが横行しているが、はっきりいえば、ユニクロの商品は10年持つ。10年持つ服が欲しければユニクロで買えば解決する。
当方のタンスには10年前に買ったユニクロの服が何枚もある。
いずれ画像付きで紹介しよう。
先ほども書いたように、衣服の耐久性は、着用回数と洗濯回数に反比例するから、デイリーユースでも10年持つユニクロの服を極限まで着用回数と洗濯回数を減らせば30年くらいは優に持つだろう。
それだけのことで、そこに過剰なフィクションを差し込むことが気色悪くてならない。
衣料品だけでなく、原料や製造工程にもわけのわからない過剰なフィクションがあふれている。
例えば、
https://ameblo.jp/takukawai/entry-12344165904.html



彼らは「イタリアの素材と日本の素材の大きな違いはエージングにある。イタリアは生産した生地を数年寝かし風合いをだして出荷するが、日本は生産したら直ぐに出荷する。だから、ワインと一緒で滑らかさが違うのだ」という説明でした。
実は、これは大嘘で、日本に二次情報や推測で、このような「嘘」や「神話」がまかり通っています。

とのことで、この「生地のエージング」は素材メーカーや商社、生地問屋などで当方も何度か耳にした。
完全なる嘘っぱちである。
また、ユニクロと契約したことで一挙に注目を集めた完全無縫製のニット製造機、ホールガーメントも過剰なフィクションで彩られている。
一体成型でセーターが編めることが特徴のホールガーメントだが、これの最大の利点は
1、プログラミングが正しくでき、機械の操作を正しくできれば、驚くほどの少人数でセーターが量産できること
2、リンキングが不要であること
3、ホールガーメントでしか実現できないデザインがあること
この3点である。
にもかかわらず「一体成型でフィット感が良い」とか「着心地に優れる」などと言ったまやかしの言説が売り場にもメーカーにもあふれている。
以前、ジーンズメイトで1000円に値下がりしたホールガーメントセーターを購入して何年間か着続けた経験でいえば、そんなものは一切ないと断言できる。
着心地も普通のセーターと変わらないし、そもそもセーターは編み方にもよるが、3センチ~5センチは伸び縮みするので、そこまで厳密な採寸は必要ない。
さらにいえばどうして一体成型だからフィット感が高まるという理屈になるのかも理解できない。それなら丸編みのTシャツのボディはフィット感が良いのだろうか。
セーターは首とか袖や裾部分のリブとかそういうところを本体に取り付ける。
布帛だと普通に「縫製」するのだが、セーターの場合はリンキングという処理を行う。
パーツと本体を目立たないようにつなぐのである。
そしてリンキングにはリンキング専門の工場がある。
リンキング工場はリンキングしかできないため、セーター工場と異なりオリジナル商品は作りにくい。
そのため自立化もできず倒産廃業が相次いでいる。
ホールガーメントはそのリンキングが不要になる技術であり、だからこそ、ホールガーメントが注目を集めているともいえる。
着心地云々ではなく製造側のメリットがあってのことである。
じゃあ、なぜそれを説明しないのかと書いたところ、老年のパタンナーから「そんな後ろ向きのことが言えるか!」と反発を受けたが、だからといって、まったく別のしかも間違ったメリットをでっち上げて良いとはこれっぽっちも思わない。
一体、この人は何を言っているのだろうか。
だったら、人員の削減やら生産効率の上昇やらそこを強調すべきであり、ありもしない着心地やらフィット感をでっち上げることは消費者にとっても業界にとっても何のメリットもない。むしろ害悪だ。
そしてこういう間違った評判が定着し、それゆえに衣料品はわかりにくくなる。
今までからそれを繰り返してきた。
衣料品業界はこういう「過剰なフィクション」にいつまで頼るつもりだろうか。そして過去の「過剰なフィクション」が衣料品をわかりにくいものにし、それが衣料品不振の原因の一つになっているにもかかわらずだ。
ナントカは死ななきゃ治らないといわれるが、まさに衣料品業界は一度完全にクラッシュしてみないとわからないのだろう。

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