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南充浩 オフィシャルブログ

大衆は「ファッション」にそれほど興味がない

2017年12月28日 百貨店 0

一口に衣料品というが、実用衣料から先端のモードまでさまざまある。
実用衣料というと作業服などになるが、通常の人が普通に使用している衣料品は実用衣料寄りのファッション衣料ということになる。
先端のモードやそれに追随するような高感度ブランドがいわゆる「本当のファッション衣料」だと思うが、はっきり言ってしまうとそのジャンルを理解できる人は少数派である。
当方はまったく理解できない。する気もないのだが。
先日、ファッションど真ん中の人が

「機能性繊維を使用していると聞くと気持ちが萎える。こんな感覚は少数派なんだろうけど」

というような内容のことをツイートしておられたが、まさしく少数派だと思う。
決してディスっているのではなく、そういう嗜好の人がいてもいいし、当方はこの人が「少数派」だと自覚しているところに好感を持つ。
というのも、アパレル・ファッション業界にはその自覚のない人があまりにも多く、自覚がないだけなら全く問題はないのだが、自覚のないままにその感覚で「大衆向け商品」を作ろう・売ろうとするから話がおかしくなっているのだと思う。
洋服不振の原因の一つはその自覚のなさだと思っている。
70年代~90年代後半くらいまでは、そういう「ファッションど真ん中の人」の発信・発言が重宝されていたし、それに沿って世論というか風潮が形成されていたのではないかと思う。
70年代・80年代は学生だったので実際のところはどうだかわからないが、90年代後半はそうだった。
2000年以降徐々にそういう状況ではなくなっていったし、2010年以降はまったくそうではなくなっている。
にも関わらず衣料品業界はその90年代後半の構図が通用すると思っていて、そこにも衣料品不振の原因の一つがあるといえる。
先日、そごう西武の自社企画商品リミテッドエディションが失敗に終わったことを紹介した。
シャネルなどのトップブランドを担当し続ける超有名デザイナー、カール・ラガーフェルドを起用したにもかかわらずだ。
ファッションに疎い当方ですら、カール・ラガーフェルド起用には感心した。
しかし、結果は惨敗だ。
ツイートを見ていると、カール・ラガーフェルドという人が何者なのかしらないという声が多かった。
大衆からすると「誰?そのオッサン」という状態で、どこの馬の骨ともしらないオッサンがデザインした服になどまったく興味がなかったというわけである。
これは、ファッション業界人と大衆の認識が著しく乖離していることの好例といえるのではないか。
そごう西武と同じセブンアイグループのイトーヨーカドーも自社企画商品にゴルチエなどの有名デザイナーを起用したがこれも惨敗に終わっており、原因は同じだと考えられる。
ファッションど真ん中を嗜好する人や最先端に追随したい人にはこの売り方は効果的だが、百貨店というマス向け・イトーヨーカドーという大衆向けにはこの売り方は不適格であり、今後もその構図は変わらないだろう。
それは他の百貨店の商況を見ても如実に表れていると感じる。
最先端ファッションを売り物にする伊勢丹新宿本店は停滞しているが、最先端ファッションが一切ない静岡伊勢丹は5期連続増益となっている。
また、地味な印象が強く旧来型百貨店の代表といえる高島屋は好調に推移している。
高島屋/3~11月は、百貨店事業堅調で増収増益
https://www.ryutsuu.biz/accounts/j122543.html

高島屋が12月25日に発表した2018年2月期第3四半期決算は、売上高6788億9400万円(前年同期比3.1%増)、営業利益217億1000万円(5.6%増)、経常利益243億7600万円(5.8%増)、当期利益144億7700万円(9.5%増)となった。
百貨店業での売上高は5967億6500万円(4.3%増)、営業利益は80億7500万円(15.4%増)となった。

とのことだ。
三越伊勢丹HDや阪急・阪神のH2Oリテイリングやそごう西武などは地方小型百貨店が苦戦しているが、オチマーケティングオフィスの生地雅之さんのブログによると、

高島屋は全店黒字化と発表されており素晴らしいものです。

とあり、他の百貨店の状況とは大きく異なっている。
「ファッション売り場」としての高島屋の評価はどうだかわからないが、「百貨店」という業態として見れば、現在の「盟主」は三越伊勢丹ではなく、高島屋といえるだろう。
大丸・松坂屋のJフロントは「脱百貨店」を自認しているから、「百貨店」業としていうなら高島屋が業界の最良モデルだといえる。
結局、マスに向けて売らねばならない百貨店という業態は、最先端ファッションでは支持されにくいということだろう。
もちろん需要がないわけではない。
需要があるからこそ伊勢丹新宿本店は2500億円を越える売上高を誇っている。
しかし、その需要はそれが限界だということでもある。それ以上の売上高が欲しければ最先端ファッションだけでは無理だ。
ましてや地方小型店を再生する手段は最先端ファッションの導入ではないことを高島屋と静岡伊勢丹が証明している。
小規模に最先端ファッション層に売るなら話は別だが、マスに売りたい・大衆に売りたいのであれば、90年代後半までのファッション嗜好とは決別する必要があるのではないか。
そして、最先端ファッションを嗜好しながらマスに売りたい・大衆に売りたいというのは虫が良すぎる話で、そんな趣味の延長線上のような活動でマス向けビジネスは実現できない。
マスに売りたいならマスに売れるような「売り方」や「商品作り」が必要になる。そんな当たり前のことがなぜ理解できないのか不思議でならない。

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