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南充浩 オフィシャルブログ

我が国が中国工場へ再投資する必要はない

2017年11月20日 産地 0

中国工場に関する不思議な記事を読んだ。
https://senken.co.jp/posts/view-171116
記事というよりはコラムだ。
短いので全文を引用したい。

日本向けが中心の中国のニット工場が「利益が出ない。工場をやめたい」と言ってきた。昨年まで200人規模の工場だったが、現在、合理化を進め人を減らしている。設立して20年、これまでなら20周年記念パーティーなどを考えたはずだ。今、残る職人たちが出資し経営を続けるかどうかを話し合っている。
中国人の工員は4年間勤めると長い方だという。いい職場があればすぐに転職してしまう。工員は育たず職人にまで至っていない。高度な機械が揃っていても使いこなす力がなければ宝の持ち腐れだ。
日本の小規模専門商社やニットメーカーが中国生産を見直し、不良品発生率が低く、CSR(企業の社会的責任)の仕組みが整う工場に切り替えようとしている。

とある。
これはその通りで、中国では繊維関係の工場に工員が集まらなくなっている。
当方が付き合っている国内企業何社もが口をそろえている中国生産の問題点だ。
理由は中国の経済発展である。
経済発展すると、中国に限らず繊維の製造加工業なんていう業種で働かずとももっと儲かる産業があちこちにできる。
重化学工業しかり、IT業しかり、金融業しかりだ。
経済発展前は繊維の製造加工業でもやらないと仕方がなかったが、他の儲かる産業が増えればそこで働いた方が、効率的である。
当然、かつての欧米諸国もそうだったし我が国も、今の中国もそうなっている。
いずれ、アセアン諸国やインドもそうなるだろう。
また、10年前くらいの中国工場にすれば、我が国との取引はあまり美味しいものではすでになくなっていた。
中国は世界の工場として欧米ブランドの生産を請け負っていたが、それに比べると多品種小ロットでうまみが無かったからだ。
おまけに品質に対する注文はうるさい。
欧米ブランドなら1型1000枚、1万枚が当たり前の発注数だが、我が国アパレルは1型50枚、100枚くらいの発注数しかない。
こんなめんどくさい仕事を受けたがらないのは当然である。
最近では中国リスクに備えて、生産をアセアンに切り替える日本企業も増えた。
大ロットはアセアンでという仕組みが出来上がっており、必然的に仕事が減った中国工場が小ロット生産を受け入れることも増えた。
1型100枚で製造を請け負う中国工場も珍しくはなくなっている。
このコラムの前半部分はそういう状況を説明しており、それはその通りだ。
今後、中国工場の廃業や倒産はますます増えるし、工員を確保するのはますます難しくなる。
意味がわからないのは後半である。

日本市場は多品種小ロット短サイクル、ある程度高品質で安価であることが要求される。かつて香港や韓国が生産基地だったが、中国本土に替わられ今はその姿は無い。中国は日本に近く、中国の中小工場も国際認証取得などブランド化ができれば香港、韓国の轍(てつ)を踏まずに済むと思える。日本は経験と教訓を生かし改めて中国生産に再投資する機会かもしれない。



字数が限られているコラムなので、言葉足らずになった部分はあるのだろうが、なぜ今更我が国が中国工場へ再投資する必要があるのだろうか。まったく理解不能な主張である。
この記者は中国人の回し者だろうか。
そもそも、中国で工員が集まらないのは、中国人と中国社会の問題であって、中国人自身がやりたがらない仕事にどうして我が国が再投資する必要があるのだろうか。
また、工員にならないという選択をしたのは中国人自身であり、その判断は他国者がどうこうできるものではない。
さらにいうと、最近ではアセアンの工場が増えているが、その工場の経営者は本土を見捨てた中国人だったり韓国人だったりするケースが多い。ベトナム、ラオス、カンボジアには中国人経営者の工場が多くある。
本土での製造加工をあきらめたのは、ほかならぬ中国人経営者であり、そのあきらめた工場にどうして我が国が再投資する必要があるのか。
我が国企業は我が国の利益を最優先すべきである。
今、日本が投資すべきはアセアン工場、インド工場と国内工場である。
アセアンやインドで小ロット生産は現時点では不可能だから、国内工場を強化すべきであろう。
国内でも工員は集まりにくいから、少人数でも運営できるように限りなく全自動に近い省力化を目指すのが正しい方向性といえる。
個人的には製造加工も機械によって全自動すべきだと思っているが、全自動は不可能なので極力人手が要らないように機械化するのが理想といえる。
またこれは、人手が集まらない中国工場に対しても同じで、それは中国人経営者が機械化を進めるのが正しく、中国人経営者がやらないなら我が国が肩代わりする必要はない。
一方、あと20年以内になくなってしまう繊維の製造加工技術が国内にはたくさんある。
これをどうするかは大きな課題で中国工場に人手が集まらないことなど些末な問題でしかない。
なくなってしまう技術を保存・維持するために投資すべきだとは思うが、なくなってしまっても構わないとして放置するのもそれはそれで一つの選択肢である。
本来であれば業界新聞はこの部分に対して問題を投げかけるべきであり、どうでもよい他国の工場への再投資を呼びかけるというのはまったく意味がないし筋が外れている。
アメリカ、ヨーロッパでも繊維の製造加工業は減っている。欧米工場に対して再投資を呼びかけずに中国のみに呼びかけるのはどういう意味があるのか。なぜそれほど中国に思い入れがあるのか理解できない。
我が国にとっては中国も欧米も等しく外国でしかない。

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