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南充浩 オフィシャルブログ

「グッドチョイス・グッドコピー」しか考えられないブランドは無能

2017年5月17日 考察 0

 先日、某OEM企業の人とお会いした。
その人の悩みとは、ポストMA-1ブルゾンが思いつかないということだった。

たしかにMA-1ブルゾンは劇的な復活を遂げた。
復活し始めたのはかれこれ4~5年くらい前となり、この3年間は売れ筋ブルゾンの定番化していた。

90年前後に大ヒットし、当時の男子大学生はほとんど着用していた。
ときどき、大学生のファッションは量産化しているという記事を見かけるが、そんなものは90年ごろも同じだ。
MA-1ブルゾンとリーバイス501というのは当時の量産型大学生のユニフォームだった。

ただ、MA-1ブルゾンの色は様々あった。
オリーブグリーン、シルバーグレー、黒、ネイビー、ワインなどだ。
それぞれの好みに合わせてチョイスしていたが、まあだいたい人気の色は重なる。

それが広まりすぎて現場作業員までが着用するようになり、さらにはタイトシルエットが標準となったことから、身幅もアームホールも広いMA-1ブルゾンはファッションアイテムではなくなった。

昨年秋から今春にかけて猫も杓子もMA-1ブルゾンを着用している。
価格もピンキリで、ユニクロは3990円で販売していて、今春用の薄手MA-1ブルゾンは1990円に値下がりしている。
ジーユーも発売していたが、生地や縫製仕様のクオリティでは格段の差があり、1990円ならユニクロのMA-1ブルゾンを買うことをお薦めする。

IMG_2225

(今年初めに1990円で買ったユニクロの中綿入りMA-1ブルゾン)

さて、ユニクロやジーユーで最終処分価格1990円で投げ売られるようになるとMA-1ブルゾンのトレンドはお終いである。

製造業者もブランド側も次なる飯のタネを探さなくてはならない。

ただし、今秋もまたMA-1はいろいろなブランドから発売されるだろうし、着用者もそれなりに現れるだろう。
大衆に行き渡って、鮮度はなくなるが、だからといって一瞬で消えるわけでもない。

この後何年間かは店頭でも見かけるだろうし、着用者もそれなりに見かけるだろう。
トレンド変化というのはそういうもので、逆に一瞬で消え去る商品の方が珍しい。

近年だと身頃の中ほどで色が切り替えられているバイカラーのジャケットやコートがそれにあたるだろう。
ニットは昨年秋も見かけたがさすがにジャケットやコートは最早店頭では売っていないし、着用者も数少ない。
トッキュウジャーのトッキュウ2号(ブルー)がいつも劇中で着用していたのに。

MA-1ブルゾンが定番アイテムとしてこのまま定着するのか、それとも5年後くらいに再び消え去っているのかはわからない。神のみぞ知るである。

さて、OEM/ODM業者に次のヒット商品を提案しろというのもなかなか酷な話だと感じる。

というのは、いくら腕の良いOEM/ODM業者といえども、販促を仕掛けるのはブランド側の役目である。
例えばミナミ企画(仮名)というOEM業者がいたとして、OEM業者の名前を出して販促を仕掛けたところで一般消費者からすれば「何それ?」である。

先日、繊維専門商社のヤギの決算発表に出席したが、ヤギには大きく分けて3つの商材がある。

1、繊維原料分野 2、テキスタイル分野 3、繊維二次製品分野

である。

要するに原料から製品製造まで手掛けているということになり、売上高はそれぞれ182億円、141億円、757億円となっている。

繊維二次製品分野は757億円もあり、ODM生産の受注を進めたことで微増収となっている。

売上高757億円といえばかなりの企業規模だが、じゃあ、ヤギの名前で販促プロモーションを行ったところで消費者からすると「何?その企業?」ということなる。

OEM/ODM業者はいくら企業規模が大きく成っても消費者からの知名度は低い。
だから彼らが販促プロモーションをやったところで消費者には響かない。販促プロモーションはあくまでもブランド側の仕事なのである。

そして、現在の国内市場において、「物」だけで売れることはほとんどない。

「MA-1ブルゾンがダメになったから、じゃあ代わりにダッフルコートを並べましょう」

なんてイージーな提案で消費者が買ってくれるはずもない。
それは2000年ごろまでの古いアパレルの売り方である。

今は何かのプロモーションと組み合わせないと売れない。

となると、プロモーションも抜きで「次なるヒットアイテムの提案」をOEM/ODM業者に求めるブランド側が無能だということになる。
ブランド側が「こういうプロモーションを仕掛けるからそれと相乗効果のありそうなアイテムを提案してほしい」というのが本筋である。

それができないなら最早ブランドなんて必要なくなる。

これほど衣料品不振が叫ばれ、それが身に染みているはずなのに、いまだに旧時代の「グッドチョイス・グッドコピー」のやり方を製造側に求めるブランドが多いということは、本当にアパレル業界は化石が集まっているとしか思えない。
そりゃ衣料品の売れ行きも悪くなるはずだわ。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/




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