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南充浩 オフィシャルブログ

全国展開の仕入れ型ジーンズカジュアルチェーン店の限界点

2017年3月29日 企業研究 0

 ライトオンの17年8月期第二四半期決算が発表された。
いわゆる中間決算というやつだ。

結果は減収大幅減益で当期赤字である。

ライトオンが3月28日に発表した2017年8月期第2四半期の業績は、売上高428億3000万円(前年同期比7.7%減)、営業利益2億3300万円(92.0%減)、経常利益2億2700万円(92.2%減)、当期損失1億6000万円(前年同期は16億8400万円の当期利益)となった。

そして、通期予想は営業赤字、経常赤字に転落し、当期赤字幅がさらに拡大する見通しだ。

通期は、売上高810億円(6.3%減)、営業損失20億円、経常損失21億円、当期損失34億円を見込んでいる。

とのことで、全国展開の仕入れ型ジーンズカジュアルチェーン店は3社とも苦戦が続いているといえる。

ライトオンは15年8月期、16年8月期と増収増益を達成していたが、15年8月期は8年ぶりの増収増益だったので、苦戦続きと評される範疇内ではないか。

ジーンズメイトは売上高100億円を割り込んでしまい、全国チェーンとは呼べない規模にまで縮小しているし、マックハウスも売上高400億円を割り込んで減収基調は止まらない。

去年の今頃のメディアの主流となっていた「ユニクロ失速、ライトオン復活」という論調は完全に事実誤認に基づくものだったといえる。

小島健輔さんが、ブログでインディテックス社(ZARAを展開)、H&M、ファーストリテイリングの3社の決算を比較して「ファーストリテイリングの脱落」と評されているが、個人的には「インディテックス社の独走、H&Mの足踏み、ファーストリテイリングが少し後退」というのが正しいのではないかと思っているが、数字面に関しての比較はまったくその通りだし、ファーストリテイリングと同等の比較対象はこの2社とあとはGAPなど数社を加えたグローバルSPAしか適当ではなく、売り上げ規模が10分の1以下のライトオンや、3分の1以下のしまむら、6分の1以下のアダストリアなどと比較するのは、規模的に無理がある。

おまけにファーストリテイリングは減益とはいえ、黒字額が巨額であり、赤字スレスレの企業の増益とは比較する土台が異なる。

昨年の今頃盛んだった「国内ではユニクロ一人負け」の論調は意味が分からなかった。

今回のライトオンの苦戦の原因は、

https://ryutsuu.biz/accounts/j032802.html

気温、気候の環境要因、その他外的要因の影響もあったが、前年からの持ち越し商品の消化が進まなかったこと、前年の売れ筋商品を踏襲した商品群が多くなったことで、売場が新鮮味に欠け、集客が大きく落ち込んだ。

と発表されており、ライトオンの売り場を見ているとこれはかなり実情を正直に語っていると考えられる。

なぜなら、前期・前々期の増収増益当時に、業界では「ライトオンはかなり売れ残り在庫を貯めこんでいる」と噂されていたからだ。
当時、2014年後半から2016年春までライトオンは珍しく、店頭での最終投げ売りがほとんどなかった。

だから2014年から2016年春先まで、筆者はライトオンで商品を買っていない。

現在の国内において、セール末期に投げ売り無しで売り切ることができる大規模チェーン店は皆無である。
個店や中小チェーン店なら投げ売りなしでの売り切りは可能だし、現実にそういう店がある。

なぜなら、顧客と密接に結びついており、顧客一人ずつの好みを把握して商品仕入れすることができるからだ。
そうすると投げ売りせずとも商品をある時期までには完売することができる。

しかし、全国規模のチェーン店でそういう仕入れは無理だ。
顧客の数も多すぎて、誰がどんな好みなのかを把握することは現時点では不可能である。

従って大勢が好みそうな商品を仕入れたり、企画製造するほかない。

だから売れ残りは必ず発生するし、それを期末で投げ売りしてでも処分する必要がある。
ユニクロしかりジーユーしかり無印良品しかりライトオンしかりジーンズメイトしかりである。

そういう構造であるにもかかわらず、ライトオンはその時期投げ売りをしなかった。定点観測していると完売していないことはわかる。おそらく倉庫へ格納したのだろうと推測したが、そうなると翌シーズンに再投入するにしても在庫過多に陥ることは当然といえる。

2016年3月以降に通常の処分セール品がライトオンの店頭に増え始めた。
だからその投げ売り品を昨年はそこそこ買ったし、今年もまた買ってしまうと思う。

例えば、2015年秋冬にライトオンは、丸八真綿とコラボしたダウンジャケットを店頭投入した。
定価はだいたい1万4000円くらいだった。

これまでのライトオンならこのダウンジャケットは2016年の1月のバーゲンで9900円くらいになる。
2月か3月まで待てば残っている商品は7900円くらいにまで下がる。
ところが、そこまで下がらずに早々に格納されてしまった。

2016年秋冬に再投入されたが、年末には7900円くらいまで値下がりした。
もちろん7900円に下がったときに1枚買った。

「好調」といわれていた2期はこういう商品が多かった。

だから「前年からの持ち越し商品の処分が進まなかった」のであり、筆者が見てきた商品はその一部だと考えられる。

現在の店頭にも前年からの持ち越し処分品が並んでいる。

全国展開する仕入れ型のジーンズカジュアルチェーン店は現在、本当に岐路に立たされている。
仕入れ品のみで全国規模を維持し続けるのは無理で、そのことは全国展開の大手セレクトショップ各社が疑似SPA化していることが立証している。

ライトオンは今回の決算で、「SPA企業」ではなく「品揃え型ジーンズショップ」を目指すことを改めて標榜しており、これは現状のままではかなり実現は厳しいといえる。

ライトオンもマックハウスもほとんど一本足打法である。
従来型の仕入れ型ジーンズショップのままで今以上に規模を拡大するのはかなり難しい。

必然的に新業態の開発が求められるが、これまで全国型ジーンズチェーン店で成功したためしはない。

ライトオンはチャイム、フラッシュリポートを今期で完全撤退する。
代わって新業態「ノーティードッグ」を立ち上げ、今年度だけで28店舗のオープンを予定している。
これはかつて2店舗を出店してから遅々として出店が進まずついにはブランド廃止となった「ソルト&ペッパー」の失敗を繰り返していないといえる。
ただ、この業態が売れるかどうかは未知数だ。

マックハウスも新業態「スーパーストア」を打ち出しているが、こちらも売れるかどうかは未知数だ。

ジーンズチェーン店は、似たようなジーンズカジュアルショップを派生させてしまう傾向が多いが、それは本体との区別ができにくい。
マックハウスの「スーパーストア」はもっとコンテンポラリーなテイストにしているが、こちらは什器や店内の画像を見る限りにおいてはユニクロとテイストがダブるので、すぐさま大ヒットするということは考えにくい。

かといって、慣れていないテイストの店を始める場合に、ジーンズカジュアルチェーン店各社にはそれに対応できる人材がなかなか少ないから、外部からの招聘が必要となる。

ライトオンも含めた全国展開のジーンズカジュアルチェーン店3社は今後どのように舵を取るのか、注目してみたい。




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