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南充浩 オフィシャルブログ

大手の「前年実績脳」に無理にお付き合いする必要なし

2017年2月14日 展示会レポート 0

 2月10日、11日と久しぶりに仕事で東京に行った。
多くの人にとって、こんな禿げかけたオッサンの動向なんてそんなに興味もないだろうが、追って詳細は公表させていただく。

また、昨年の10月下旬以来ストップしていた仕事があるのだが、これの再開が決定したので、また3月か4月に東京に行くことになる。

さて、今回の上京のタイミングでも東京では多くの展示会があり、そのご案内もいただいていたのだが、申し訳ないことにすべてを回ることはできなかった。
関西も含めた地方都市と比べると東京は段違いのボリュームがある。

地方なしには東京とて成り立たないことは原則としてはその通りだろうが、アパレルに限らず東京一極集中するのは当然の流れだといつも上京するたびに痛感する。

実際にかつて付き合いのあった地元関西のメーカーやブランドもどんどんと東京へ本社移転したり、展示会を東京のみの開催にしたりしている。

そんな中、アレスという神戸のマフラー、ストールメーカーから久しぶりに展示会の案内をいただいた。

アレスも神戸が本社だが数年前から活動の比重を東京に置くようになっており、神戸にお邪魔するのは本当に3年ぶりくらいのことになる。

事務所には懐かしいカシミヤ山羊人形が置かれていたが、随分と数が減ってしまっている。
かわいいので出入り業者などが「売ってください」というらしく、売っていると、残ったのがこの2匹だけになってしまったらしい。

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新しく作ることはできるが100個とか1000個のロットが必要なので躊躇しているそうだ。
いっそのこと、大量生産してこの人形も販売してみてはどうかと思ったが、どんなものだろうか。

今回、神戸に先駆けて行った東京展示会で好評だったのが梳毛カシミヤの大判ストールだった。

通常の大判ストールは60センチ×200センチくらいだが、これは140センチ×200センチあり、通常の二倍以上の幅がある。

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(生地のアップ)

アレスからするとこの商品発売は大きな賭けだったそうだが、ウール・獣毛の門外漢である筆者には実はその悲壮さは理解できなかった。(笑)説明を聞いてやっと理解した次第だ。

ウール・獣毛を得意とする方には当たり前のことだが、梳毛と紡毛がある。
ウール・獣毛の繊維長の長さをそろえるというのが梳毛で、そろえないのが紡毛である。
一手間加えるので、当然、梳毛の方が高い。
普通のウールでさえ、梳毛にすると原材料費が高くなるのであまり使われなくなる傾向にあるが、そもそも高額なカシミヤで梳毛にするとさらに割高になる。

このため、梳毛カシミヤはよほどの高級ブランドでないと使用されなくなっている。

また幅を2倍以上にするということはそれだけ原料の使用量が増え、原材料費が高くなる。

梳毛+2倍以上の幅ということで、通常のカシミヤストールよりも原材料費が高くなってしまい、果たしてそんな高額な物が売れるのかという心配があったとのことで、そういうふうに説明されると「なるほど」と納得できる。

卸値は1万円だそうだ。

店頭販売価格は企業ごとの設定にお任せだが、2万5000~3万5000円くらいになる。
内モンゴル自治区製だ。

もちろん、カシミヤには等級もあるから、一概にはいえない。
最上級の梳毛カシミヤだともっと高額になるだろう。

現在、ストールブームは一段落している。
マフラーと同様に冬は必需品といえるが、春秋シーズンにおいては不可欠な商品ではない。
以前だとファッションとしての人気が高かったため、春秋でも薄手ストールを巻いた人を多く見かけたが、一昨年くらいからその割合は減った印象がある。

原価が高くなるうえに需要が一段落した商品だから、製造側とすると「大きな賭け」という気になるのも無理はない。

そんなおっかなびっくりで展示したところ、意外にも好評だったという。

とくに地方の好調な専門店やネットショップからの受注が好調で、知名度の高い大手卸売りアパレル各社からは予想通りあまり受注に結び付かなかったようだ。

そういう話を聞くと、なんだかかつての大手アパレルは完全に顧客を見失っていて、それらの企業をさまざまな指標の目安としているメディアも判断基準を誤りつつあると感じる。

大手アパレルのように国内で何百億円規模のビジネスを追求するなら、トレンドから外れた高額商品というのは「売れない」ということになるが、そういう物が欲しいと思っている人はゼロではない。

そういう要望を集めればもしかすると5億円とか10億円くらいの売上高にはなるかもしれない。

それを丹念に拾い集めているのが、逆風下でもある程度の好調を維持できている本当に「売る力」のある地方専門店だろうし、中小規模のネットショップといえるのではないか。

すべてを「前年実績」を基本に考える大手アパレル・大手流通(GMS、百貨店)のやり方は、物が溢れている今の時代には、適合しなくなっている。

また後日、詳しく書いてみるが、以前、ステテコがブームになったことがある。
そうすると猫も杓子もユニクロもステテコを発売する。
複数年に渡って売っていれば、当然どこかで飽和状態になり、売れ行きが鈍る。

しかし、大手肌着アパレルもGMSも百貨店もおバカさんなので、「ステテコ」という項目で前年実績があるため、その項目をいきなり激減させることはできない。

だから、本来、春夏用の商品だったステテコなのに、秋冬向けの保温ステテコなんていう珍妙な物が作られ販売されることになった。春夏のステテコの減りを秋冬でカバーするためだ。まことにバカげた動機である。

冷静に考えてほしいのだが、いわゆる股引、パッチとよばれるズボン下防寒着がすでに昔からあるのに、そんな珍妙な保温ステテコなんて商品を誰が必要と思うだろうか。

結果、珍妙なる保温ステテコは2シーズンくらいで姿を消した。
当然である。

これが業界に跳梁跋扈する「アホな前年実績脳」である。

そうして衣料品業界は活力を失ってきて現在の状況に陥っている。

それはさておき。

そういう「アホな前年実績脳」になっていない中小型専門店やネットショップが存在し、そこでは大手が「売りにくい」と思い込んでいる商品を売りこなせている。そういう先と如何に取り組むか、如何にクローズアップして伝えるかが、今後のこの業界が存続できるかどうかという指標になるのではないかと思う。

何はともあれ、アレスの今回の挑戦はそれなりに評価されたようで良かったのではないか。

サンプルの貸し出しも行っているアレスの受注サイトのアドレスを貼り付けておくので、興味がある方はどうぞ。

http://www.alles-inc.com/wcf/




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