啓蒙活動をしないなら、体感気温に合わせた商品展開を考えてみたら?
2016年12月5日 考察 0
11月下旬の寒波でコートが動いたと報じられている。
この動きは価格帯は関係なく、低価格店でも百貨店でも同様だったようだ。
しかし、11月の寒波もほんの数日で終わり、下旬から12月5日まではかなり暖かい日が続いている。
11月は全般的に平均気温が高かったのではないかと思うし、このままの気温推移なら12月も暖かいのではないかと思う。
業界ではいまだに「低価格品は実用衣料、中高価格はファッション衣料」と主張する人が多いのだが、実際の売れ行きはともに体感気温に即した実用衣料的になっていると言わざるを得ない。
もちろん、季節先取りで買う人もいまだに存在するが、その人数は限られており、「ファッション」を標榜するブランドはこの少ないパイを取り合うことになる。
そのファッション層の財布も無限ではないので、必然的に選ばれるブランドと選ばれないブランドが出てくる。
本当に「ファッション」を標榜したいなら、季節先取りで購入するファッション層の人数を増やす努力をする必要があり、それをしないままだと永遠に少ないパイを奪い合うことが続く。
とはいってもそういう啓蒙活動は難しいし、成功する可能性もない。
よほどに優れた経営者やデザイナー、プロデューサーでなければ成功は難しいだろうと思う。
世の中の大半以上の凡人が取り組むなら、実需に即した対応が無難だろう。
上場しているセレクトショップ、大手百貨店は月次売上を公開するが、要因分析の大半を天候要因が占めている。
「猛暑で」「暖冬で」「雨が多くて」「気温が高くて」「気温が低くて」などなど。
衣料品の役割の一つに体温調節があるから、天候要因に左右されることは当然と言えるが、「ファッション」を気取っているこれらが天候要因のみでしか好不振を語れないのは情けない限りではないか。
だったらもっと気温に即した商品投入時期を模索してみてはどうか。
どうせ、大半以上のファッション企業が啓蒙活動などできないのだから。
例えば、気象庁のこんなデータがある。
1981年~2010年までの月別の横浜の平均気温である。
9月の平均気温は23・3度となっている。
これは6月の平均気温である21・3度よりも高い数値である。
となると、9月はまだ長袖の秋物を着る気温ではないということになる。
ちなみに12月の平均気温は8・5度で、世間が想像するよりも高い気温ではないか。
そして3月の平均気温は9・1度で12月とほぼ同じである。
こう考えると、常に天候要因を好不振の最大理由として挙げているアパレル、セレクトショップ、百貨店はこういうデータに基づいた商品投入時期を再設定すべきではないか。
ナントカの一つ覚えみたいに8月21日に秋物が、10月21日に防寒コートが立ち上がるなんていうことを続けていて一体何の意味があるのだろうか。
気温に即して考えるなら9月は夏服だし、3月は冬服である。
繰り返すが、仮にも「ファッション」を標榜するブランドは天候要因に左右されない売り方を考えるべきだというのが大前提だが、それができないなら、気温に即した商品展開を考えるべきではないか。
それを放置したままで「猛暑が」「高気温が」「暖冬が」などと天候要因を嘆かれても、自業自得としか言いようがない。
いくら嘆いても天候は、業界人が望むようには変動しない。
嘆くばかりで何の工夫も凝らさないのは、怠慢以外の何物でもない。
そして怠慢な業界が衰退するのは当然である。