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南充浩 オフィシャルブログ

ドンキホーテのアパレル製品は決してバカにできない

2016年10月21日 企業研究 0

 先日、たまたまドンキホーテの決算が報道されていてその内容を見て驚いた。
連結決算で売上高が7596億9200万円もあり、前期比11・1%増である。
店舗数も341店となっている。

ちなみに営業利益は431億8600万円で、前期比10・4%増だ。

かなりの好決算といえる。

筆者はドンキホーテで買い物したことがないし、そもそも年に何度かしか店を覗かない。
正直なところまったく興味がない。

しかし、10年ぐらい前から若い人には人気が高く、今でもその傾向は変わっていない。

10年ぐらい前は独特のゴチャっとした陳列方法が話題になってよく販促セミナーではヴィレッジヴァンガードとともに取り上げられていた。
しかし、10年が経過した現在、ドンキホーテは成長し続けているのに対して、ヴィレッジヴァンガードは赤字続きで低迷している。

ゴチャっと陳列の代表的な2社だったが、大きく明暗が分かれてしまった。

ヴィレッジヴァンガードが従来からの売り場から脱却できなかったことに対して、ドンキホーテは大型店メガドンキを開発するなどの新しい施策を打ち出せたことがその一因ではないかと思う。

ドンキホーテは生活雑貨、食品、衣料品、家電、コスメ、ブランド品となんでもそろっている。
しかもどれもが安い。

このままドンキホーテの成長が続くと競争に敗れるのは、不振が続く大型スーパーではないかと思う。
そして、衣料品店もまたドンキホーテとの競争にいずれは敗れるのではないかと思う。

大型スーパーとの競合について書かれた記事がある。

ドンキ27期連続増益の秘密は大手GMSと「真逆の戦略」
http://diamond.jp/articles/-/105160

大型スーパー各社がセントラルバイイング方式にこだわり続けて失速しているのに対して、ドンキホーテはかなりの割合で地域対応を行っており、その柔軟さが支持されていると論じている。

 これに対しドンキがやってきた組織体制は実に8割の仕入れ権限を店舗、現場の従業員が持つという対照的な仕入れ体制だ。本部の一律の仕入れ、商品政策は2割程度にとどめ、大部分は店舗が選択し、また仕入れをして値付けをして販売しているのだ。

 本部と店舗は侃侃諤諤の議論をして商品を決める。おのずと店舗は理論武装するために、地域競合店の価格状況や消費者の動向を徹底的に調べ詳しくなり、商品決定の主導権を持つのである。

 店舗に仕入れ権限があるから、時には爆発的な価格設定で競合先を打ち負かす。

とのことである。
小売業というのは基本的にはローカライズで、よほどのステイタス性が高くない限りは、画一的な品ぞろえでは支持されない。
そういう意味でも7600億円弱の大企業になった今でも小売りの基本に忠実だといえる。

そして、ドンキホーテは各地の空き店舗に居ぬきでローコストで入店しているので、続々と閉店し続けるGMSの跡地はメガドンキを出店できる絶好のターゲットだとしている。

GMSの大量閉鎖時代の到来で、ますます居抜き出店のチャンスが広がるとみている。

ドンキはかつて長崎屋というGMS企業を買収し傘下に入れた。長崎屋は現在約40店を展開し、ほとんどがドンキの大型版である「MEGAドン・キホーテ」に業態転換している。長崎屋の店舗の再生には試行錯誤があったが、ドンキの標準的な売り場面積である2500平方mの3倍以上の売り場を持つこの大型ドンキに転換し成功した。

大型ドンキを運営できるノウハウを蓄積しているため、まさに閉鎖GMSの跡地出店は絶好のチャンスともいえる。ちなみに長崎屋の16年6月期売上高は1571億円程度だが、営業利益は39億円を計上、GMS各社が赤字になったり、低収益にあえぐなかで売上高営業利益率は2.5%を達成している。

とある。

ヨーカドー、ユニーなどが相次いで大量閉店を発表しているが、この跡地にドンキホーテが大量出店する可能性はかなり高いのではないか。

もしかすると、大量閉店が続く地方百貨店の跡地もドンキホーテが押さえる可能性があるのではないかとも個人的には見ている。

ここからは個人的な意見だが、ユニクロやジーユー、アダストリア、ストライプインターあたりにばかり目を奪われているアパレル業界だが、もしかすると今後はドンキホーテに足元をすくわれるのではないかとも思う。

341店舗というボリュームがあるなら、自社企画製品を製造する場合、かなりたくさんの枚数を発注することができる。1店舗あたり100枚配布するにしても34000枚の衣類の製造が可能だ。
1枚当たりの製造コストはかなり安く抑えられる。

しかもドンキホーテはすでに何年も前からオリジナルの衣料品を企画製造販売している。

2009年にジーユーが990円を打ち出し話題になったことがある。
それに追随して各社は低価格ジーンズを打ち出した。

雑誌や新聞ではその各社の低価格ジーンズの品評が行われ、筆者も参加したことがある。
その中で、意外に評価が高かったのがドンキホーテの低価格ジーンズだったことを覚えている。

それ以外でもドンキホーテの低価格衣料品の品質自体は悪くないという評価もある。

341店舗というスケールメリットを生かせば低価格・高品質の衣料品を作ることはさほど難しくない。

不振アパレル各社が現実を直視しないまま、物作りだとか、センスだとか、クリエイションだとかの妄想に耽っている間に、ファーストリテイリングやしまむらは言うに及ばず、ドンキホーテにすら凌駕される可能性も低くはないと思う。ドンキホーテは意外な脅威に成長したと思うが、アパレル各社はそれに気が付いているのだろうか。



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