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南充浩 オフィシャルブログ

トレンドの早さや商品の見た目では低価格品との差別化ができない時代

2016年9月6日 お買い得品 0

 繊維・ファッション業界人とメディアはいつもピントがズレていると感じる。

百貨店と百貨店アパレルが衰退した理由を不景気のせいだけにしている。
理由はいくつかある。

1、そもそもオーバーストアで、商品も供給過剰である
2、百貨店ブランドが原価を引き下げて品質が低下した
3、百貨店ブランドも低価格ブランドも商品の見た目にそん色がなくなった

など。だから売れなくなった。

あとピントがズレているという点についてはもう1つある。
それは、バブル崩壊までは高価格品が売れて、低価格品が売れたのはバブル崩壊後だと思っているところである。

しかし、ダイエーにしろジャスコにしろヨーカドーにしろ、一般的にGMSと呼ばれる大型スーパーが急成長を遂げたのは高度経済成長期とバブル期である。
また大型スーパーの衣料品はバブル期には大いに稼いでおり、利益の稼ぎ頭だったのである。
大型スーパーがこれだけ衣料不振に陥ってもいまだにしがみついているのはバブル期の成功体験が忘れられないためである。

ということは、バブル期も低価格衣料品は売れていたということである。
おわかりだろうか。

高額品が売れなくなったのはたしかにバブル崩壊後だが、低価格品はバブル期から売れていたのである。
バブル崩壊後はその低価格衣料品の買い場が大型スーパーではなく、ユニクロやしまむらなどの専門店へ移ったというだけのことである。

ここを踏まえていないからわけのわからない論議に陥る。

で、繊維・アパレル業界人やメディアは現在の状況を打破するために、モノづくり強化とかトレンド品のクイック対応なんてことを提案するのだが、はっきり言って効果はゼロだ。

もうすでに今迄からそれらをやってきているではないか。
さんざんやってきてこの有様なのである。

バブル期にそれでも高額品が売れたのは、明らかに見た目が違ったからである。
たとえば、ポロシャツでもTシャツでもジーンズでもなんでもそうだが、バブル期は明らかに安物とブランド物が見た目も使用している生地も違った。

ジャスコに納品されていたわけのわからないブランドの1900円のジーンズと、リーバイス501は明らかに使用している生地さえも違った。

何度も書いているが94年に略礼服ではない黒のスーツを買おうとしたら、洋服の青山や紳士服のはるやまには売っていなかったのである。いやでもDC系の店に行かなくては買えなかった。
今なら10000円も出せば西友でも売っているが、この当時は最低でも5万円くらいは出さなくては売っていなかった。

それほどに商品の見た目が隔絶していたのである。
だから嫌でも高い商品を買わざるを得なかった。

ところがいま、そんな洋服があるだろうか。ほとんどない。

そこらへんの1万円くらいするSPAブランドのジーンズと3990円のユニクロのジーンズはほとんど見た目が同じである。もしかしたら品質もユニクロの方が高いかもしれない。
だったら消費者は安い方を買う。当たり前の話であり、これが呑み込めないなら衣料品関係の仕事なんてやめてしまったほうが良い。

先日、西友の洋服平場に行った。
掘り出し物があるからGMSの洋服平場は好きである。

西友では50円に値下がりしたビーチサンダルを見つけた。
あまりの安さに驚愕したのだが、それと同時に3800円のMA-1タイプのブルゾンも発見した。

IMG_1682

(西友の平場にて)

一昔前の量販店平場に納入されている商品は、トレンド商品でもシルエットがやたらとダボついていたり、丈が短すぎたり長すぎたりした。

トレンドそのままの形で商品がほしければ百貨店やファッションビルのブランドショップに行くしか手がなかった。
だからみんな百貨店やファッションビルのブランドショップで買っていたのである。

しかし、この3800円のMA-1ブルゾンは、シルエットも大きすぎず、ストンと落ちたシルエットといい、使用している素材といい、ファッションビルブランドとほとんど変わらないように見える。

背中に「アヴィレックス」とか「アルファインダストリー」とかのロゴが入っているのがほしければ別だが、無地でよければこれでなんの問題もないし、黙ってきていたら西友の商品かどうかすらわからない。

そうしたらほぼ同時期にユニクロからメルマガが来た。

こちらもMA-1ブルゾンを押している。
価格は3990円で、画像で見る限り形もトレンドに沿っている。

IMG_1685

(ユニクロの商品)

そして西友の平場で見た商品は、ユニクロともあまり変わらないように見える。
どちらを着ていてもユニバレ・西友バレはない。

低価格ブランドの見た目はここまで向上しているのである。

だったら安いほうで良いと考える人が増えても不思議ではない。

もうモノづくりやらトレンドの早さでは低価格ブランドに差をつけることはできなくなったと見るべきである。

じゃあ、どうやって差別化・独自化して売るのか。
そこを問われているわけであって、モノづくりだとかトレンドの早さなんていくら努力しても無駄に終わる状況に突入している。

だから、モノづくりだとかトレンドの早さで状況を打破するという言説をまったく評価しないのである。

物の見た目は最早、西友の平場商品でさえ区別ができないほどに高まっている。
それを踏まえた上で考えないと、時間と労力の無駄に終わる。




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