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南充浩 オフィシャルブログ

知名度の低い案件は報道されにくい

2016年3月4日 プレスリリース 0

 先日、ニュースリリース(プレスリリース)のことで相談された。
相談と言っても雑談程度にアドバイスをしただけであり、もちろん無料である。

内容をかいつまんで例示すると、

「和装系の店が伝統素材を使った新規事業を立ち上げる」

という内容である。

で、この和装系の店は全然知名度のない地方のマイナー店である。
伝統素材も「友禅」とか「〇〇紬」のように知名度のある素材ではない。
かなりマイナーな素材である。

このリリースに対して、「なぜメディアから反応がないか?」という質問を受けたわけである。

結論から言うと「対象物すべてがマイナーだから」である。
文章の書き方とかまとめ方が悪いわけではない。
その点はリリースを読んだ限りにおいては過不足ない。推敲もされている。

一般的に、メディアは「知名度の高い案件」に無条件に反応する。
たとえばユニクロからのリリースだと取るに足らないニュースでも掲載される。
5人くらいで運営している無名の小規模アパレルが経営危機に陥ってもニュースにはならないが、イトキンが経営危機に陥ったらそれは無条件で掲載される。

個人経営の無名のブティックが閉店してもニュースにはならないが、ワールドが500店舗を閉鎖したらそれはニュースになる。

地方の無名和装店が新業態を開発してもニュース価値は低いが、ストライプインターナショナル(旧クロスカンパニー)が新業態を開発すればそれはニュースになる。

メディアの記者、編集者が掲載、放送を判断する基準として「対象物の知名度の高さ」はかなりの比重を占める。
業界メディアなら、無名の会社がニュースリリースを送付すればそれでも掲載される可能性はあるが、一般向けメディアとなると「知名度のハードル」はさらに高くなる。

メディアに縁のない人は、「無名のブランドや人をメディアが発掘して、それをメジャーに押し上げてくれる」という構図を頭に描くことが多いが、それはほとんどの場合幻想である。
もちろん一部に例外はある。その例外は限りなく少数派で、「奇跡」と考えても差し支えないだろう。

その奇跡が実現しやすいシチュエーションを思いつく限り挙げてみる。

1、わかりやすい打ち出し文章が「奇跡」のようにできた
2、ニュースリリースが波長の合う担当者の手にたまたま渡った
3、たまたまネタ枯れの季節だった
4、たまたま時節柄に合っていた
5、メディアと太いパイプを持っていた
6、広告を出稿した
7、誰が見てもわかりやすい画期的な商品・サービスを開発した
  (例:1週間充電不要のスマホとか)

のような場合が考えられる。

そしてもっとも有効なのが5のメディアとの太いパイプがあった、である。

たまに無名のブランドがいきなりファッション雑誌や、そこそこに有名なメディアに取り上げられることがある。
それは編集者、記者が足を棒にして発掘したからではなく、そのブランドの中や関係者にメディアと太いパイプを持っていた人がいたという可能性がきわめて高い。

実も蓋もないがこれが現実である。

じゃあ、どのように対応すれば良いかというと、一番費用がかからないのは、そのままくじけずに定期的にニュースリリースを送り続けることである。

人間というのは不思議なもので、何度もその会社やブランドからのお知らせを受け取っていると、だんだんとその会社やブランドに対して興味を持ち始める。むろん時間はかかる。
10回、20回と続けて初めて効果が出ることも珍しくない。

逆に、初回から効果があるのが珍しいと考えた方が精神衛生上悪くない。

費用をかけても良いなら、

1、広告出稿をする
2、メディアを集めた「会」を定期的に主催する

という手法がある。

広告出稿をすれば確実である。
やっぱり「カネ」は強い。

また、2のように、有力企業の多くが定期的にメディアを集めたミーティング(酒席も含む)やパーティーを開催するのはパイプを太めるという意味がある。

こう書くと、

「メディア側の姿勢は間違っている。それは正すべきではないか」と考える人もいるだろう。
そしてその考えは正しい。

しかし、その意見をぶつけてみたところで、明日からただちにメディアの姿勢が変わるわけではない。
繊維業界、アパレル業界、流通業界だって指摘された悪癖がすぐに変わるわけでないのはご存じの通りである。
徐々に変えていくしかない。いわば啓蒙活動をやり続けるしかない。

話を戻す。「お金をかけられない」「お金がない」なら、心折れずに何回も何十回もニュースリリースを送り続けるしかない。

それでもニュースリリースの作成・送付を業者に依頼するなら、やはり代金は必要である。
どうだろうか、運送料は必要分だけ支払うとして、文章作成料はやはり必要である。
ライターや広報代行者はボランティアではない。
代金はピンキリだろうが、最低でも2万円~5万円は必要だろう。
それを払うのが嫌なら自分で書くしかない。

自分で書くのが無理、でも金を一銭も払いたくない、という業者はそのまま放置されるだけの話である。

筆者もプレスリリースの作成を依頼されることもあるが「無料で」という依頼は絶対に断る。
過剰な値引き依頼もお断りする。

そんなわけで先日の業者は心折ることなく引き続き頑張ってもらいたいと思う。




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