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南充浩 オフィシャルブログ

「オシャレは我慢」ではなくなった

2015年10月27日 考察 0

 現在のファッショントレンドの移り変わりにはある程度、便利さとか機能性も関係しているような気がする。

今年6月に倒産した「ブルーウェイ」ブランドのブルーワークスカンパニーだが、以前、ここの古参の部長がこんなことをおっしゃった。
「もうブーツカットジーンズには戻らないんじゃないかな。なぜなら裾がバサバサして邪魔だから。当分はスキニーのままですよ」と。

この部長は倒産する前に定年を迎えておられ、今は悠々自適ではないかと思う。

ジーンズのトレンドの移り変わりを振り返ってみる。

2005年はブーツカットジーンズがトレンドだった。
その傾向は2007年末まで続き、2008年からスキニージーンズがブームとなる。

2008年からはスキニージーンズを基調としながらも、その流れがタイツやレギンスにまで派生し、ジーンズ離れも引き起こした。
ジーンズにとって金城湯池だったメンズもスキニーに始まり、チノパンやワーク、ミリタリーパンツへとシフトし、すっかり細身シルエットが定着した。

この2008年以降で変わったことはシルエットだけではない。
丈の長さも変わった。

基本的にそれまでは、足首に少したまるくらいの長さが主流だった。
ストレートだとワンクッションあるくらい、ブーツカットだと靴を脱げば引きずるくらい、が主流だった。
ブーツカットパンツを穿いた女性は靴を脱いで座敷へ上がると、まるで江戸時代の長袴のようにズボンの裾を引きずっていた。
男性にもそういう人が少なくなかった。

ところが、2008年のスキニーブーム以降、現在まで、ズボンの丈はくるぶしが見えるくらいの短めが主流である。
足元がすっきりと見える。
また、履いている靴がむき出しになる。
これは、コーディネイトの主役が靴に移ったともいえるかもしれない。
それまでのワンクッションの長さだと靴は先端しか見えない。
先端しか見えないからメンズもレディースも恐ろしいばかりにつま先が延長され、尖って反り返っていたのである。

そうでないとズボンの裾に隠れて靴が見えないからだ。

ズボンの丈が短くなるとそんな靴は売れなくなる。
普通の靴でも十分に見えるからだ。

そして、靴は全体がむき出しとなる。
スニーカーならブランドロゴもはっきりと見えるようになる。
だからスニーカーブームが起きたのかもしれない。

アディダス、ナイキ、ニューバランス、プーマ、アシックス、とくるぶし丈のパンツならブランドロゴがバッチリとむき出しになって他者からも認識されやすい。
今までみたいにつま先だけしか見えないなら、靴流通センターあたりで買ってきた謎ブランドの安いスニーカーでも良かったかもしれないが、全体がむき出しになるならブランドスニーカーを穿いていた方がカッコイイ。

そんな理由もあったのかもしれない。

閑話休題

丈の短いズボンと、ワンクッションあるほど丈の長いズボンを穿き比べてみると、丈の短いズボンの方が穿きやすい。
動きやすいと言った方が正確だろうか。

裾がバタバタしない。
自転車に乗っても裾がチェーンにひっかかりにくい。
便利である。

また座敷に上がっても長袴のように裾を引きずることもない。
便利である。

来年春以降、どこかの時期に再びフレアシルエットがトレンドになるのではないかと言われている。
いわゆるブーツカットという商品だ。
場合によってはもっと裾幅の広いベルボトムを指す場合もあるようだ。

じゃあ、2005年当時に逆戻りかというとそうではない。

それらのフレアは丈が短いのだ。
ちょうど今のトレンドと同じくるぶし丈だと言われている。

IMG_3703

ワイドシルエットのガウチョパンツが今春夏流行した理由の一つには、丈が短かったからということもあるのではないかと思っている。

ワイドのロングパンツはバランスがとりにくいからコーディネイトしにくい。
ところがガウチョパンツはだいたいがふくらはぎの真ん中あたりまでしか丈がない。
ワイドロングよりもコーディネイトしやすく、また裾が短いからあまり不便でもない。
少なくともワイドロングよりも裾は邪魔にはならない。

来年以降、フレアが復活してもくるぶし丈が中心になると見られている。
ワンクッションが復活しない理由はおそらく不便だからということもあるのではないだろうか。

以前だと「オシャレは我慢だ」と言われたが、今はそうではなくなっている。
素材面で見てもこれだけ機能性素材が開発されると、重くて硬くて動きづらい素材は敬遠される。
タイトシルエットの洋服にはストレッチ機能が必須だ。

よくマニアの人(業界内外問わず)は「本物のツイードはもっと硬くて重くないと」とか「ストレッチ混は邪道。綿100%のヘビーオンスデニムが王道」みたいなことを言うが、そんな不便な生地を着たがるのは一部のマニア層だけである。
その一部のマニア層に向けて売るブランドならそういう本物追求志向でも良いが、ある程度のマスに売りたいのなら、便利さとか機能性、快適さは無視すべきではない。
むしろ便利さとか機能性、快適さを重視すべきだろう。

まあそんなわけで、シルエットの変化はその時々によってあるだろうが、ズボン丈は当分の間、短め(くるぶし丈周辺)が主流であり続けるだろう。


 



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