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南充浩 オフィシャルブログ

日常カジュアル衣料の買い場に困っている低価格マス層はそんなにいないのではないか?

2024年6月6日 トレンド 1

先日、思いもよらぬ形で25年ぶりくらいの人に再会を果たした。(注;もちろんオッサン)

で、あれやこれやと25年ぶりに話したのだが、お互い50代・60代となっており、最早ジジイである。当方なんて気分はすでに終活中である。

同じ業界なので、お互いの洋服の話になったわけだが、やっぱり「昔ほどあの服やブランドが欲しいという物が無くなった」という意見が一致した。

それは恐らく老化による良い意味での落ち着き、悪い意味での諦めというものだろうと思うが、世間一般的にも熱狂的な洋服好きというのは昔に比べて比率的には減っているのではないかと思っている。

全国各店舗で発売日に長蛇の列ができたのは、2020年秋のユニクロの+J復活くらいである。あとは特定の店舗のみ、例えば伊勢丹新宿本店とか、に行列ができたという程度である。

伊勢丹新宿本店に行列はできても静岡伊勢丹には行列はできない。阪急うめだ本店に行列はできても川西阪急には行列はできない。そういうものである。

 

 

自身の老化も含めて、恐らく衣料品への渇望というのはマス層ではかなり低下しているのではないかと思っている次第である。

そんな中、この記事を拝読した。

「ユニクロ」が抜けた“空白マーケット”を手にするのは誰か【小島健輔リポート】

生活圏で日常衣料を供給するエッセンシャルストアは「ファッションセンターしまむら(以下、しまむら)」や「パシオス」などのコンサバな衣料スーパーに限られた感がある。皆が上って空いたカジュアルの「空白マーケット」は一体誰が埋めてくれるのだろうか。

 

という問題提起をされていて、この問題提起自体は有用なことだと思うが、当方も含めて恐らく低価格マス層はそんなに「不便を感じていない」というのが実態ではないかと思っている。

まあ、他人の心は分からないから、自分のことを基準に類推するしかないわけだが、当方は全く困っていない。従って、困っているという低価格マス層は業界人が心配するほどには多くないのではないかと考えている。

 

 

まず、前提として多くの現役世代は仕事や学校で通勤通学をしている。そのため、自分の家が例え郊外や地方にあっても都心ターミナルへ行く(もしくは通過する)という人は少なくない。

そうした場合は、電車やバスの定期券を持っているから、都心ターミナルでユニクロ、ジーユ―を変わらず買っているのではないかと思う。

実際に当方が平日にJR大阪環状線や大阪市営地下鉄に乗ると、ユニクロかジーユーの大きな紙袋をぶら下げた老若男女、外国人観光客が数多く乗車している光景を目にする。

余談だが、インバウンド外国人のユニクロ、ジーユ―購買比率はかなり高いと感じる。大阪市内で見かけるインバウンド外国人の多くがユニクロかジーユー、もしくは両方の大きな紙袋をぶら下げている。

そういう光景を見ていると、低価格マス層の多くは変わらずユニクロ、ジーユ―を買っているのではないかと推測される。

 

 

地方・郊外に住んでいて勤務先が地方・郊外で自動車通勤をしている人ならまた少し行動様式は変わるだろう。

ロードサイドのユニクロ、ジーユ―で買うという人もいるだろうが、ここでは「しまむら」の利用者が多いだろう。またイオンモールやアピタなどの大型ショッピングセンターへ足を伸ばしてその中にテナント出店しているユニクロ、ジーユ―、ハニーズなどの低価格ブランドを買っていると推測される。

それと忘れてはいけないのが、大型・中型のスーパーマーケットの存在である。スーパーマーケットの衣料品部門の凋落が叫ばれて久しいが、売上高はゼロにはなっていない。むしろ縮んだとはいえ最低でも数百億円の売上高があるわけだから、それなりの数量が売れていると考えるべきだろう。

例えばイオンのトップバリュやライフやイズミヤ、ユニーあたりの衣料品売り場で買う人も相当数いると考えた方が良い。特に自宅近隣の老人を見ていると、そういうスーパーマーケットの衣料品売り場で購入したと思われる人が多い。

 

「ハニーズ」(24年4月末で876店舗)もコンサバなフェミニンモード通勤服主体でカジュアルもナチュラルフェミニンに偏り、そもそもメンズやキッズの扱いがない。

 

という一節がこの問題提起記事にあるのだが、ここでは恐らく、メンズとキッズ服はどこで買っているのか?ということを指摘しているのだと思われる。

これについて私見を述べると、現役世代の男性の多くは週5日で働いているわけだから、カジュアル服を着る機会は週2日である。となるとそれほどの枚数は必要ではない。

近年は、オンタイムの服装がカジュアル化しているが、Tシャツ1枚に半ズボン、サンダル履きみたいなドカジュアルでの勤務はほぼ不可能である。いわゆるビジカジが最低ラインであるため、現役世代の男性多くはオンオフ共用可能なビジカジ服を購入していると考えらえられる。となると、買い場はユニクロ、青山、AOKI、オリヒカあたりで十分だろう。

キッズに関しては親戚や近所からの使い古しのもらい物で済ませている可能性も低くなく、西松屋あたりで買った安物を1年か2年で使い捨てるという人も多いだろう。

 

 

さらに自他の行動を思い起こすと、ネット通販で購入するという手もある。ZOZO、Amazon、楽天には低価格衣料品ブランドが溢れているし、ユニクロ、ジーユ―もネット通販がある。特にユニクロなんてネット通販だけで1500億円くらい売っており大手アパレル1社と変わらない売上高がある。それらだけで飽きるのなら、当方のようにドットエスティ、ベイクルーズストア、アーバンリサーチストアあたりの値下がり品を買えば事足りてしまう。

このように紐解いてみると、実は「低価格日常カジュアルの買い場が無くて困っている」というマス層はさほど存在しないのではないかというのが当方の結論である。

 

 

衣料品業界の人は自分が衣料品が好きでたくさん買うから、他人もそうであるだろうと考える場合が多い。しかし、業界外の人はそこまで衣料品に強い興味を持っていないというのが実状で、そこの読み違いが生じ続けたままというのが現状ではないか。もちろん、全裸で生活している人はいないから全員何らかの洋服を買って着ているわけだが、色柄やシルエット、素材、ブランド名にさほどこだわらないのであれば、上に述べたような手段で賄うことが可能で、買い物難民が発生しやすい状況とは考えにくい。

まあ、そんなわけで今後も低価格マス層はそういう買い方をするだろうから、短期間では業界の勢力図はそんなに変わらないだろう。

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 comment
  • ミナミミツヒロ的けちんぼ人間 より: 2024/06/06(木) 4:17 PM

    ナミさんの考察をふまえると、GMSには十分商機がある
    といっけん思えます。しかし、最後まで読むと
    GMSにはやはり勝算はないと思わざる得ません

    万人に絶対必要なのは食い物。それを買うお店の2F3Fで
    服を売るのは理に適っています

    ただし、対象者はファッションに興味がない層です
    だから実用性のみの服だけ売っていればいい

    ところが、GMS各社それはやりたくないんですね・・・
    んで、自社ネーム・自社企画にこだわりドボンの繰り返し

    最悪例がヨーカドーでしょう

    ヨーカドーの売場でゴルチェなりケンゾーが関わった服が
    売っていた事すら今では誰も覚えちゃいないと思います

    そして、プライドが災いして、セールで投売りをやらない
    せいぜい3割引き程度にしかしない

    服を売るにしても、ファッションさえやらなければ
    十分いけるんですけどねぇ・・・

    各社どこもそこそこの人材はいるから
    それが災いするんですよね

    ちょっと賢い人ほど「カコイイこと洗練されたこと」
    をやりたがるものです

    でも、お金になるのは、岐阜物のディズニー服を
    ドンキ状態の売場でテキトーに売るほうだったり
    しますから

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