新規参入でマス市場に飛び込むためにはセールスポイントか大資本が必要
2015年1月23日 未分類 0
新規ブランドを立ち上げる際、「今、このテイストが人気だから」という分析を基にそこに飛び込む企業が多いように見える。これは何もアパレルに限ったことではなく、産地の製造加工業者でも同じである。
いや、むしろ産地の製造加工業者の方がこの手法を多用するように見える。
しかし、後発ブランドがその人気市場へ割って入るためにはよほどのセールスポイントか資本力がないと不可能である。
セールスポイントとは価格競争力、高品質、高デザイン性、雰囲気の良さ、プロモーションの上手さなどを指す。
もしこれらが決定的に欠落していたとしても大資本なら急激な多店舗出店によって、無理やりに、一時的にでも注目を集めることは可能になる。
この両方が無い場合、後発ブランドがすぐさま成果を得られることはかなり難しい。
そこを産地の製造加工業者は真剣に見つめなおしてもらいたい。
それはさておき。
では、マス市場ではないが、ファッションには必ずニッチな市場がある。
現状のジーンズ業界で言うならビンテージレプリカジーンズはマニアに向けたニッチな市場だといえる。
後発ブランドはそういうニッチな市場をあえて狙うというのも一つの成功方法ではないか。
今回はその一例ともいえる記事をご紹介したい。
「ワル」な「オトナ」がメンズファッションの隙間だった
http://t-f-n.blogspot.jp/2015/01/blog-post_19.html
少し前になりますが、12月8日の繊研新聞で三陽商会のセレクトショップ、
ラブレスとギルドプライムが取り上げられていました。
記事から概要を抜粋すると
「既存の大手セレクトショップが得意とするトラッドベースのカジュアルな商品とは一線を画」す為に
「オリジナルも万人が好むような値頃なベーシック」にはせず、
「買い付け品に負けない”攻めた企画”がほとんど」となっているそうです。
「モード系でクセの強い品揃えがコアなファンを中心に支持を広げ」、
「業績はこの5年ほど右肩上がり」となっているそうです。
とのことである。
ラブレス/ギルドプライムのオリジナルアイテムのターゲットは
いわゆる「お兄系」を卒業したような、
少し「ワル」な雰囲気を持った男性をターゲットにしていると思います。
とある。
要するに、昔、お兄系を着用していてそのままのテイストで年を取ったような男性がターゲットということである。
商品の画像を見ていただければわかるが、カジュアルはお兄系か元ヤンキーという風情だし、スーツ類はどうみてもホスト崩れか崩れホストかという雰囲気である。
(ドクロのマークがついたダウンジャケット)
(パンツのバックポケットにジッパーとドクロマークの装飾)
(同ブランドのドレスシャツ)
個人的にはこの手のファッションはまったく好きではないし、この手のファッションで固めた男性と言うのも苦手であり、あまりお近づきになりたいとは思わない。
商品画像ではデカデカとドクロマークが付けられているが、ヤングならいざ知らず、ヤングを卒業した年代以上でデカデカとドクロマークを付けた服を着用して似合っている人物は、キャプテンハーロック以外にあまり見たことがない。
それでも市場としてはマスではないが確かに存在する。
そこに向けて商品を供給するというのは立派なビジネスモデルといえる。
需要があるから小なりといえども5年連続で増収しているのだろう。
またこの記事中では昨年秋に新加入が発表されたアースミュージック&エコロジーのメンズラインについても言及されている。
記事中のリンクからジャンプして商品写真を見ると、なぜこれが今更必要なのか?と首を傾げざるを得ない。
このテイストのメンズは郊外型ショッピングセンターにあふれかえっている。
チャオパニックティピーでもコーエンでもセンスオブプレイスでも似たような商品がいくらでも安く購入できる。
マス市場かもしれないが、競合がひしめき合っており、なぜ今更そこへわざわざ飛び込まねばならないのかと疑問を感じる。この記事主の主張には大いに賛同する。
現在の衣料品市場を考慮するなら、後発新規参入組はニッチ市場を狙うべきであり、同質化しやすいメンズはとくにそうあるべきだろう。よほどの大資本以外はマスを狙うべきではないと考える。
メンズに比べると市場規模が大きいレディースでも状況は同じである。
キャリアからミセス向けレディースアパレルの合同展示会主催者は、「卸売り業態で新規ブランドを立ち上げても現状では売上高3億~5億円くらいがピーク。それ以上伸ばすことは至難の業」との分析を示したことがある。これをSPA形式に換算(卸売りの売上高ではなく、店頭販売価格による売上高)すると数億~15億円程度ということになる。
よほどの大資本でない限りは、レディースのSPA型ブランドでもこのあたりが新規参入の限界点だということになる。
新規ブランドを開発する際にはこれらの事例を下敷きにすると、失敗する可能性が低減できるのではないか。