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南充浩 オフィシャルブログ

まさにデジャヴ

2013年11月12日 未分類 0

 今朝、こんな記事を目にしてふと90年代後半から2000年代前半に戻ったのかと思った。

盛り上がる「JSファッション」 女子小学生がおしゃれ楽しむ時代
http://www.sankeibiz.jp/business/news/131112/bsc1311120600007-n1.htm

おしゃれ好きな女子小学生向けの子供服市場がここ数年、好調だ。頭文字をとって「JSファッション」と呼ばれ、人気ブランドは売り上げを伸ばしている。ファッションショーでは、トレンドをバッチリ決めた女子小学生らがかわいさや着こなしを競い、百貨店も顧客参加型イベントを開催。アパレル、小売り、メディアがタッグを組み、市場を盛り上げている。

とのことだが、90年代後半から2000年代前半に同じような文言の記事が経済誌や業界紙に踊っていた。
その当時の立役者はナルミヤインターナショナルの「エンジェルブルー」だ。
雑誌「ニコラ」とのタイアップがブームをけん引した。

記事中では雑誌「ニコ・プチ」とのタイアップが人気を引っ張っているというが、「ニコラ」と「ニコ・プチ」は姉妹誌なのだから構図は当時と瓜二つだと感じる。

ナルミヤインターナショナルは「エンジェルブルー」の好調によって全社売上高を急上昇させていき、ピーク時の2004年度には353億円にまで達している。
しかし、ブームは長続きしなかった。その後、ナルミヤインターナショナルの経営が悪化し、社長も交代したことは記憶にも新しい。2010年には上場を廃止しており、その際の売上高は174億6900万円となっているので、ピーク時のおよそ半分である。
わずか6年で売上高が半減したなら、それは厳しい状況だっただろう。想像は容易である。

当時のジュニアファッションブームがあっけなく崩れ去ったのを目の当たりにしていると、ここで言われているJSファッションなる市場が一体どれほどの成長性を持っているのか、筆者には疑問に感じられる。

現在は記事によると、阪神百貨店の子供服売り場が「聖地」だとされているというが、当時は大阪では阪急百貨店うめだ本店だった記憶がある。さかんに「ニコラ」との共同イベントを開催していた。
筆者からすると、市場が拡大しているというよりは、単にプレイヤーが新旧で交代しただけのように見える。

バブル崩壊、その後のリーマンショックを受けて各家庭の可処分所得は減少している。
子供服全体の消費支出は90年の5000億円をピークとして、2004年には4000億円にまで減少している。2013年現在、支出額はもっと減少しているだろう。

子供服はどんなに品質が高くともデザインがかわいくても、子供の体が成長するので着用できるのは、少し大き目の服を購入してもせいぜい2年ほどだ。
この記事の文中にあるように「ぴったりのサイズ」となると、1年で着られなくなる。
いくらJSだといっても彼女らはまだ成長期段階にあるので、ぴったりのサイズを選べば選ぶほど、その着用期間は短くなる。

そんな非効率的な商品に通常の平均的な会社員の家庭が年間に何万円投入できるだろうか?
文中では

同ブランドはコートから小物まで多品種を展開し、全身をコーディネートできるのが強み。ワンシーズンで数十万円分を購入する顧客も多いという。

と紹介されているが、そんな無駄使いのできる世帯は数が限られている。
マスマーケットではない。そういう無駄使いのできる世帯が増えているのなら、なぜ、超低価格子供服チェーンの西松屋が毎年売上高を伸ばしているのだろうか。
なぜ、フーセンウサギは倒産したのだろうか。
なぜ、ミキハウスの三起商行は経営が悪化して、一時期ファンド傘下になったのだろうか。
なぜ、ナルミヤインターナショナルは数年で売上高が半減以下になったのだろうか。

これが答えではないか。

いくらJS市場(かつてはジュニア市場と呼んだ)が活況とは言え、それはマスではない。
ニッチとまではいわないが、マスとは到底呼べないほどの市場規模といえるだろう。
たしかに活況なのだろうが、それはかなり限定された局所的な動きだと推測される。もし、JS市場への新規参入を考えておられるアパレルが存在するなら、この状況を念頭に置かれることをお勧めしたい。

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