先日、サザビーリーグが展開するセレクトショップ、アメリカンラグシーの日本撤退が発表された。店舗数がこのところ極端に減っていたからさもありなんとしか思わなかった。
サザビーリーグは以前にもセレクトショップ、アンドエーを閉鎖していて「セレクトショップ」を長続きさせることは難しいということが改めて認識されたのではないかと思う。

アメリカンラグシーは2008年の売上高をピークに相次いで店舗を閉鎖しており、現在では全国に5店舗を展開するのみとなっていた。アンドエーの末路とほぼ同じような状態だった。

先日、Yahoo!ジャパンにこんな記事が掲載された。

サザビーリーグが「アメリカンラグ シー」事業から撤退、セレクト業態が抱える構造的課題が浮き彫りに
https://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20180415-00084027/

これは当方の旧知の松下記者が書いたものだが、記事中にこんな一文がある。

現在、セレクトショップといわれる多くのブランド・ストアでも、オリジナル比率は50%近くまで高まっているところが多い。セレクトショップでもある程度の規模を確保し、価格競争力のある商品を企画・生産できるだけの調達プラットフォームが必要不可欠な時代に突入しているといえる。

とのことで、松下記者は控えめに「オリジナル比率は50%近く」と書いているが、実際のところ、ユナイテッドアローズやビームスなどの大手セレクトショップのオリジナル商品比率は7割から8割くらいになっている。ただし、7割と言っても、こと衣料品に限ればオリジナル比率は8割~9割にもなっている。じゃあどうして1割~2割くらい構成比率が下がるのかというと、バッグや靴がオリジナル比率を下げているからだ。

洋服は業界全体での製造インフラが整っているから、カネさえ支払えばいくらでもオリジナル品が作れるようになっている。しかし、靴やバッグは専門性が高いために、洋服に比べるとそう簡単にオリジナル品は作りにくい。だから必然的に他ブランドからの仕入れ品が増えざるを得ない。このためオリジナル品比率が洋服よりも低くなってしまう。

本来は、いろいろなブランドから仕入れてきた商品を集めたのがセレクトショップだが、事業を拡大するには、収益性の面や商品デリバリーの面から考えると、オリジナル商品比率を高めざるを得ないのが実態である。

例えば、5000円の商品を他ブランドから仕入れたとする。現在の国内の仕入れの慣習からすると、2700円くらいだろう。店側の儲けは2300円くらいしかない。ところが、同じ5000円でも自社が企画して製造を委託したオリジナル商品の場合は1700円くらいで製造できるから、儲けが3300円になる。オリジナル商品の方が明らかに利益率が高いく儲けが多い。

また、仕入れ品だと「欲しいときに追加発注しても商品がなくなっている」という可能性が高い。メーカー側はなるべく早く売り切りたいから、商品を多めには作らない。よほど売れに売れているなら追加生産するが、ポテンヒットやシングルヒットくらいの当たりでは追加生産はしない。その結果、店が追加発注しても生産せず、商品が入荷しないということも珍しくないから、仕入れ品のみでは店作りが難しくなってしまう。期初は商品がキチンと並んでいるが、期中になると棚やラックがスカスカということにもなり得る。

だからセレクトショップ各社は業績を拡大するにつれて段々とオリジナル商品比率を高めていった。大手セレクトショップの内情はすでに「ほぼSPA(製造小売り)」化してしまっている。
実は売上高500億円や1000億円を越えるような大手セレクトショップという「不思議な」業態が存在するのは日本だけである。欧米のセレクトショップは、仕入れ品のみを頑なに守っているので大規模な業容拡大をしていない。していないというよりできないのである。

つい先年、閉鎖が話題となったパリの有名セレクトショップ「コレット」だが、多店舗化していない。今回閉鎖が決定したアメリカンラグシーもアメリカ本国では多店舗化していない。一時期多店舗化を志向したものの失敗しており、個店に戻っている。そもそも「セレクト」というコンセプトで多店舗展開することは不可能に近いといえる。理由は、上に挙げたように、利益率が低く儲けにくいから大規模な投資につなげにくいということと、仕入れ品のみでは店作りが困難だからということの2つが挙げられる。
大手セレクトショップなる業態が林立しているのは日本独特の奇観だといえる。

大手セレクトショップ各社が「ほぼSPA」と化したしまった現在、弊害も徐々に現れ始めている。オリジナル商品の各社の同質化である。自社企画製品といっても、元来が小売店であるセレクトショップ各社にはデザイナーもパタンナーもいない。必然的に、そういう専門の会社に商品の製造をデザインから委託する。平たくいえば丸投げしているのである。

そうすると専門の会社はいくつものセレクトショップやSPAブランドの商品作りを手掛けているから、自然とそれらの商品は似てしまう。
出来上がった商品はどれも似ているから、それを並べた店頭は似てしまうのは当たり前である。こうして同質化が起きると、消費者が購入する動機は低価格ということになる。同じ商品・似たような商品なら人は誰でも安い方で買う。いずれ、大手セレクトショップ各社も否応なく価格競争に巻き込まれることになると考えられる。

今回のアメリカンラグシーの日本撤退からもわかるように長年にわたって、他社ブランドの仕入れだけで収益性を維持し、店作りをすることは困難を極める作業である。かといって、安易にオリジナル比率を高めてしまっては同質化が進んでしまう。これがアメリカンラグシーとアンドエーが苦戦に転じた背景で、他の大手セレクトショップも表面化していないだけで同様の課題を抱えている。

2000年ごろから国内ファッション業界を牽引してきた日本独自の「大手セレクトショップ」という不思議な業態もそろそろ曲がり角に差し掛かっているのではないだろうか?何事も盛者必衰だし無限成長することはできない。

そしてこれらの課題の解決方法を誤れば、2015年ごろから一気に経営不振に陥った大手アパレル各社と同じような結末を迎えてしまう可能性もある。

衣料品ビジネスで儲け続けることの難しさを改めて感じる。

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心斎橋筋商店街がドラッグストア街に変貌した理由とこれまでの変遷の推移
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さらばアメリカンラグシー