先日のダイヤモンドオンラインの森岡毅さんのインタビューが面白かったので、早速、Amazonで「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」(角川文庫)を買って読んでみた。

それほど分厚い本ではないが、テーマパークのみならずさまざまな業種に参考となる事例が書いてあった。
もちろんアパレル業界にもだ。

それを一度に書くと異様な長文になって読みにくいだけなので、今回は1個だけ取り上げたい。
そのほかは、またネタが無くなったときにでも。(笑)

USJというのはもともとハリウッド映画のテーマパークとして開設された。
映画そのものをほとんど見ない当方にとってはハリウッド映画の魅力はほとんどわからない。
年に1本も見ないし、見るのはほとんど日本のアニメか日本の特撮映画くらいだ。
あ、例外としては「永遠のゼロ」を見た。映画よりも小説の方がよかったというのが率直な感想だ。
今春は「ウルトラマンジード」の映画を久しぶりに見ようかと迷っているところである。

なので、USJがハリウッド映画をテーマとしているにおいては、まったく興味がなかった。
いまだに一度もUSJに行ったことがないし、多分これからもよほどのことがないと行かないだろう。

オープン当初、そんな当方なので、USJはピンと来なかった。
案の定、オープンして3年目くらいから凋落し始めてきた。

ところが2010年あたりからUSJの人気が回復してきた。
この本の著者の森岡さんがその立役者だとされている。

人気が回復してきたあたりからハリウッド映画以外の取り組みが増えた。
例えば、漫画やアニメで人気の高いワンピースや、人気ゲームのモンスターハンターである。
正直に言って、当方のような人間からするとハリウッド映画よりこちらの方がずっと親しみやすい。
しかし、ハリウッド映画ファンからは「なんで日本のアニメやゲームを取り込むんだ?」という疑問の声があることも事実だ。

施設のコンセプトと照らし合わせるとおかしいのは明らかだからこの批判は正しい。

しかし、森岡さんは著書の中でこんな内容のことを書いておられる。

「USJが年間集客400万人で良ければ、ハリウッド映画に特化したテーマパークのままでも行けた。しかし、年間集客1000万人を獲得するにはハリウッド映画に特化した施設では実現できなかった」

とのことで、森岡さんは

「映画に特化した施設ではなく、映画を含めたフィクションエンターテイメントを包括した施設に再定義した」

とも書いておられる。

400万人ならハリウッド映画に特化したマニアックな施設で運営が可能だったが、1000万人を獲得するにはマス層に向けた施策が必要だったということになる。
当方のようにハリウッド映画に何の興味もない日本人だって少なからずいる。

この部分を読んだときに、アパレル業界はここの区別ができていないのではないかと感じた。
いや、常々感じていたことを森岡さんに言語化してもらったというべきだろうか。

アパレル業界やそれに付随するメディア業界、ウェブ業界はいまだにこの区別ができていない。

マニア向けの商品をマス層に売ろうとして、それが売れないからといって「消費者の感性が退化している」と責任転嫁をしているのが、業界の実情といえる。

業界の人の多くは、マニアな嗜好を持っていて、その己の嗜好をそのままマス層に売ろうとしているに過ぎない。

例えば、デニム生地だ。
スキニーブームによって必然的にストレッチ混のデニム生地が主流素材となる。
肌に貼りつくようなという意味を持つスキニージーンズは、当然、ぴったりとした細身シルエットになる。
これを綿100%デニム生地で作ってしまえば、相当に動きにくくなる。
スキニージーンズはストレッチ混デニム生地があってこそ生まれたデザインといえる。

ストレッチ混デニムは、伸縮性があるから動きやすく、それに一度慣れてしまうとスキニーに限らず、細身ストレートやレギュラーストレートにもストレッチ性がないと消費者は快適さを感じなくなる。
ノンストレッチでそれなりに支持されるのは、現在ではワイドパンツくらいだろう。
そのワイドパンツですら、形状を安定させる目的からストレッチ混素材が使用されることもある。

そこに対して「ポリウレタン弾性繊維は数年で断裂するから綿100%デニムの方が優れている」といくら叫んだところで徒労でしかない。
なんでそんな動きにくい生地のズボンを我慢して大衆が穿く必要があるのか。
それにストレッチポリエステルも開発されており、こちらならポリウレタンよりも耐久性がある。

「綿100%デニム生地が良い」というのは単なるマニアの嗜好で、その嗜好をマス層に押し付けるからブランドは支持されないのである。
ポリウレタン混のストレッチ生地が嫌いなら、耐久性のあるストレッチポリエステルを使ってストレッチ生地を作れば良いのである。
その努力なしに「綿100%ガー」なんて叫んでもアホの遠吠えでしかない。

ツイードしかり、ウールのスーツしかり、革底の革靴しかり、だ。

最近のツイードはほとんどが薄く軽くなっている。おまけにストレッチ混のものもある。
本来の重くてガッシリしたツイードとはまったく異なってしまっているが、「ツイードとは重くてガッシリしたもの。軽量ツイードは邪道」なんていくら叫んでも大衆は昔ながらの重くてガッシリしたツイードジャケットなんて着用しようとは思わない。
「本物ガー」なんて叫んでも無意味だ。

ここで優れた企画マンなら、己の趣味と大衆向けの商品を切り離して考えることができる。
自分はガッシリした昔ながらのツイードを着るが、大衆向けにはそれよりも軽量化したツイードを発売する。
そしてそれとは別個に(別ブランド、別ライン、特別品番などで)マニア向けツイードを作る。
デニム生地も同じだ。

マニアが満足するマニア向け商品は少数からしか支持されない。
マス層に売りたければ、そこが求める商品を提供するしかない。
USJがハリウッド映画縛りをやめたのはそういう理由だ。

ところが業界人はどうだろうか。いまだにマニア向けの「本物」がマス層に売れると思っているし、売ろうと試みて散々失敗を繰り返している。

それはかつて、我が国アパレルがDCブームやビンテージジーンズブームを経験した成功体験が忘れられないからだろう。
何万円もするようなDCブランドやビンテージジーンズがマス層に飛ぶように売れた。
ビンテージジーンズなんてマニアックな仕様であればあるほど評価された。

しかし、そんな時代は2005年までで終わっている。
今後、そういうマニアな服のブームは絶対に起きない。
そういうブームの復活を夢見続けている間に、我が国アパレル業界はますます斜陽化する。
まあ、企業数が多すぎるので何割か減ったくらいがちょうど良いのだろうけど。
せいぜい、売れないマニアな嗜好をいつまでも大衆に押し付け続けるがいいさ。

それにしても、「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」は一読をお勧めする。

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プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
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