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南充浩 オフィシャルブログ

「販売員は五年で使い捨て」では人員は集まらない

2017年8月3日 企業研究 0

 景気回復の実感は伴わないといわれながらも人件費は上がり始めている。
アルバイトの時給は上がっており、現在の大阪市内では800円台の時給の店にはアルバイトの問い合わせはほとんどない。

例えば、先日、バッタ屋の聖地である天神橋筋商店街で顔見知りのバッタ屋のお兄さんと立ち話をした。
「求人を出してもさっぱり問い合わせがない」とのことだった。
時給はおそらく最低賃金で900円未満なのだろうが、その条件だと他の店の時給がもっと高いから問い合わせすら来ない。
他のバッタ店でも似たり寄ったりだと聞いたことがある。

一方で、ファッション専門学校生でユニクロやジーユー、牛丼のすき家でアルバイトをしている学生が毎年何人かいる。
一昨年くらいから話を聞いてみると、時給はかなり高い。夜間勤務になると時給は1000円を越えているだろう。
学校が終わってからの平日夕方と、土日の休みにフルに入ると、月額20万円以上の給料は当たり前にあるという。

給与条件はかなり改善されており、そりゃ、時給900円未満の店にはアルバイトの問い合わせすらないのは当然といえる。

顔見知りのバッタ屋に限らず、アルバイトですら販売員が集まらない洋服店が急増している。
理由は給料が低く、待遇が悪いからだ。

一方で、高額が稼げるユニクロやジーユーなどの店がある。

どちらに人が集まるのかというと当然後者となる。

苦戦する洋服店は多いが、その苦戦を理由に待遇を低くしたままだと、さらに人員は集まらなくなりつつあり、人員が集まらないからさらに店舗運営に苦慮するという悪循環スパイラルに陥っている。

麻布テーラーが提案する「販売員は五年で使い捨て」な粋なスタイリングのお話
http://ryoheiyotsumoto.com/5year/

悪循環スパイラルに陥りながら、それに気が付かず「人件費抑制は絶対正義」という周回遅れの考えを持った企業の話である。

「契約社員募集」という求人に対して、「5年で辞めてもらうけどイイ?」と面接官が尋ねたというが、景気が緩やかに回復しつつあり、販売員の人手不足が顕著になりつつあるこの環境下で、「ハイハイ」とその条件を呑む人はほとんどいないだろう。

この会社は2008年のリーマンショックで脳内が停止しているといえる。

そもそも「麻布テーラー」はメルボメンズウェアーが運営するオーダースーツショップで、現在30店舗弱ある。

メルボメンズウェアーはメルボ紳士服の子会社という形態をとっているが、メルボグループは2001年に一度民事再生法を申請している。

90年代後半から2000年前半は、メンズビジネスウェア関連企業が数多く経営破綻した。
ワイシャツメーカーだと、カネタ、信和シャツ、トミヤアパレル、松屋シャツなどなど。
ネクタイ問屋だと、朝倉商事、安藤、アルプスカワムラなどなど。
スーツだと、メルボ、トレンザ、エフワンなど。

メルボの経営破綻はそのうちの一つだった。

メルボの現在の方針はこのときの教訓?によるものだと思われるが、そろそろ時代も環境も変わりつつある。

人余り現象はなくなり、現在はあらゆる分野で人手が足りなくなりつつある。
それを反映してかつて「ブラック企業」と揶揄されたユニクロ、マクドナルド、すき家あたりは従業員とアルバイトの待遇を大幅に改善して、それが業績慎重につながっている。
マクドナルドもすき家も一時期の不振は完全に脱した。

メルボのスタイルは完全に周回遅れだし、メルボと同じ思想のアパレル企業は完全に周回遅れになってしまったといえる。

大学卒業者の内定率も、高校卒業者の内定率も過去最高となっている。

少ない人件費と休日でワンオペ労働を強いるローコスト経営なんてやり続けていたら、ますます、アルバイトも正社員も集まらなくなる。これが今の状況であり、それが理解できないアパレル企業は今後さらに淘汰されることになるのは間違いない。

メルボの2001年当時の経営破綻には驚いたが、その後、民事再生から復活したのも驚きだった。
アパレル企業で民事再生法を申請して、復活できる企業はほとんどないからだ。
先に挙げた企業でも現存しているのは、メルボ、トレンザ、トミヤアパレル、エフワンくらいだ。
あとはすべて倒産した。

民事再生法が認められてメルボに資金投入された理由は、新業態だった「麻布テーラー」が評価されたことにあった。

その後、麻布テーラーは有名店に成長するが、断続的に外野から見ていると、それほど成長する理由がわからなかった。
キーマンとなった役員がおられたと聞くが、その方も何年か前にお亡くなりになったとも聞く。

その役員のキーマンぶり以外で、そこまで成長できる要素は外野からは見当たらないから、メルボの復活も奇跡(当時の麻布テーラーが成長エンジンだと評価されるとは思わなかった)だし、麻布テーラーのそのあとの成長も奇跡だと思っていて、二重の奇跡が重なったと個人的には思っている。

まあ、そんなわけで、リーマンショックのまま思考停止したアパレルと、そこから脱したアパレルとは今後ますます優勝劣敗が明確化し、リーマンショックのまま思考停止したアパレルは淘汰され消え去ることになるだろう。

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