日経BP社から、5月29日に発売される「誰がアパレルを殺すのか」を贈呈され読み終えた。

これは昨年秋に日経ビジネス誌で特集された「買いたい服がない」を下敷きにして、詳細にまとめ直した本である。

国内アパレルの不振(米国でもアパレルは不振だが)の原因を過去から遡って追っているのは納得である。
その他の検証や新ビジネスモデルの例示で微妙に疑問を感じるところはあるが、全体的に見れば、100点満点で90点くらいの内容といえる。

IMG_2919

一読して損はない。

今後、何度かにわけて散発的に感想を書きたいと思う。

第1章ではアパレル業界の不振ぶりとその様々な病巣が語られており、業界をよく知る人は「あるある」と肯きながら読んでしまうだろう。

その1章のなかで、「経営もトレンドに流されやすい」とまとめられている。
これはまったくその通りで、アパレル企業各社の経営者は本当にミーハーで「トレンド」に流されやすい。
ひとくくりに年代で分けるのはどうかと思うが、若手経営者よりも古株の経営者の方が流される傾向が強いように感じる。

90年代半ばならSPA(製造小売り)化
90年代後半から2000年にかけては低価格競争
2000年代半ばはラグジュアリー化
2000年代後半ならライフスタイルブランド競争
2015年ごろからはネット通販、ウェブ通販

というのがざっとした業界の「トレンド」である。

ああ、そうそう、なんだかよく分からない「日本製ブーム」なんていうのもあった。

アパレル企業の古株経営者は本当にそのときどきのトレンドに流されやすい。
猫と杓子しかいないのではないかと思う。いっそのこと猫経営者にでもしたほうが人気が出て物販も好調になるのではないかとすら思う。

本文中でも業界関係者の言葉として

「なにかがヒットしていると聞けば、それに飛びつかずにはいられない。洋服だけでなく、経営もトレンドに流されやすい」

が挙げられており、本当にその通りである。

これは恐らく、かつての70年代・80年代・90年代前半のアパレル活況期のビジネスモデルが「ヒット商品の後追い」「先行企業のキャッチアップ」「海外ブランドからのグッドチョイス・グッドコピー」だったからで、70年代・80年代・90年代前半に現場を担当していた人が今、経営者に昇っている。
このため若いころに染みついた体質を変えられないのだと思う。

そもそも彼らは若いころからファッションが好きで、彼らの若いころのファッション好きというと「単なるミーハー」であまり理論的でないというタイプの人が多かった。
三つ子の魂百までという言葉があるように若いころからの性格というのはそう簡単には変わらない。
昨今の逆切れ暴走老人に見られるように、若いころと比べて老化による劣化も起こりうる。

「三つ子の魂百まで」タイプと「老化劣化した」タイプが多く、ミーハーで深く考えないことに拍車がかかっているといえる。

本書ではこの部分の例として昨年末に発表された三陽商会の新経営計画を引き合いに出している。

新社長の岩田功氏が発表した内容で、本書が指摘するまでもなく、新機軸のまったくない方針計画だったといえる。

「ネット通販の強化」
「ショッピングセンターや駅ビルにも販路を広げる」

など、漠然とした方針にとどまっており、方針だけを見ると陳腐すぎて劇的なV字回復はまず見込めない。

もちろん岩田新社長にも三陽商会にもいろいろなしがらみやら事情があったのだと推察するが、出てきた方針だけを見ると、「ふーん」という感じしかない。

三陽商会に限らず、苦戦に陥った旧大手アパレル各社はそろいもそろって「ネット通販の強化」を打ち出しているが、本当に「三つ子の魂百まで」だなと失笑を禁じ得ない。

以前にもこのブログで紹介したように、ネット通販市場は15兆円にまで拡大しており、それだけを見ると売上高の拡大が期待できそうな気がする。
しかし、実態はあくまでも「気がする」だけなのである。

永江一石さんが指摘するように、ネット通販の売り場の数は10年間で数十倍から数百倍にまで拡大している。

例えば、不振といわれる楽天市場でさえ4万店の出店がある。
Yahoo!ショッピングは40万店、ファッションではナンバーワンのZOZOTOWNも1000店以上の出店がある。
そしてAmazonも出店数が増えている。

良く知られた総合通販サイトでさえ、これだけの出店数がある。
さらには今では零細業者ですら、自社のウェブサイトに通販ページを併設している。
これを含めるとネットでの売り場の数は数百倍に増えたことになる。

普通に通販サイトを開設したところで埋没してしまうことは間違いない。

現在の主流だと、ブログやインスタグラム、ツイッター、フェイスブックなどのSNSから通販サイトに誘導するが、三陽商会も含めて旧大手アパレル各社はSNSに極端に弱い。若年層に企業名・ブランド名がほとんど知られていないのはそのためでもある。

SPAブームはファイブフォックスの「コムサ・デ・モード」の躍進がきっかけだった。
ワールドの寺井秀蔵・前社長は嬉々として毎年の決算発表で「SPA比率を今期これだけ高めました」と報告していたことが今では懐かしい。(笑)

低価格ブームはユニクロがきっかけ。
生産数量や生産システムの違いなどまったく気にもしないで、表示価格の低さだけをむやみに競って、その結果、各社とも大爆死した。本当に「考える」ということが苦手な人たちである。

ラグジュアリーブームは2005年ごろの景気回復がきっかけで、2008年のリーマンショックで簡単に死滅した。

洋服が売れなくなったので、雑貨が売れるライフスタイル提案型に注目したが、「単に雑貨を置いただけの店」をライフスタイル提案型ショップだと勘違いしたブランドが続出した。

これの派生形になるが、ロンハーマンのヒットを見て、西海岸型ショップも増えた。
早い話、ロンハーマンの低価格パクリ版である。

その結果、とりあえずサーフボードが飾ってあって看板を外したら区別ができない店が増えた。

そして今が競合の多さも考えずに市場規模の拡大だけで「ネット通販強化」である。

おそらく大半以上の企業が結果を出せずに終わるだろう。

経営陣から変えないと旧型アパレル企業の回復はありえないだろう。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25