日経ビジネスの「買いたい服がない」特集は実に読み応えがあるし、ほぼ正論で埋め尽くされている。
筆者の主張とも重なる部分が多いので、賛同する部分が多い。

大手アパレルと百貨店、GMSのことに事例が終始しているが、我が国アパレル産業が衰退した理由をほぼ網羅していると感じる。

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しかし、いくら特集しようと、警鐘を鳴らそうと、大手アパレルと百貨店、GMSの上部メンバーの顔触れは変わらないし、今さら彼らの考えが変わるわけでもないので、このまま我が国アパレル産業は縮小し続けると個人的には見ている。

この特集も折に触れて紹介していきたいと思っている。

それはさておき、この特集と連動した連載企画が日経ビジネスオンラインで掲載されている。
その中で驚くべき企業が紹介されている。

ファストリが恐れる米アパレル「エバーレーン」
米ファッション業界を席巻する「ブランドディスラプタ―」の波
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/092900020/100300006/?n_cid=nbpnbo_twbn

米国ではエバーレーンやエムエムラフルールという話題の企業が登場したそうだ。
その特徴は要約すると

1、完全オンラインSPAであること
2、原価と自社の利益を明示していること
3、世界各国の協力工場を紹介していること
4、従来の季節制度にとらわれない供給
5、売り切り御免の物作り
6、実店舗は試着のみの機能に限定

というところで、とくに重要なのは、1、2、6だろうか。

引用抜粋しながら紹介したい。

1と6は連動しているのだが、実店舗販売はせずに実店舗を試着のみの機能に限定し、購入はあくまでもウェブだけとしている。ちなみにエバーレーンの店舗はアメリカに2店舗しかないそうだ。

これについては、先ごろユニクロがアンドルメールを発売した際に、発売当日は大人気で品切れも続出したことから、「実店舗では試着のみに限定して、購入はオンラインにすればどうか?」という案が出たことがあるが、それを実現しているといえる。

何よりも重要なのは2だろう。

エバーレーンが多くの支持を得る理由の一つが、生産過程の透明性にある。
生地や縫製、流通コストがどれくらいかかり、エバーレーンがどれくらいマージンをとるか、といった情報をオンラインで明確に開示する。
例えば、下記のシャツであれば、1枚当たり生地に16.81ドル、生産地の労働力に7.59ドル、関税で1.79ドルなど費用合計が28ドル、エバーレーンがそこに40ドルを上乗せし、68ドルで販売すると開示されている。
一方、“伝統的なブランド”では、同じ商品が140ドルで販売されているということも併記される。

とある。

これに比べれば、我が国で注目されつつある縫製工場と直結したファクトリエや、日本製を謳ったユナイテッドトウキョウなども古臭いシステムに見える。
彼らのビジネスは従来型アパレルの延長線上にしかなく、経路を簡略化しただけであったり、商品供給地を自国に回帰させただけという風にしか感じられない。

ここまでオープンな見せ方、売り方はいまだに我が国では生まれておらず、次の新しい形が提示されているといえる。

で、これと連動して生産工場が紹介されているわけだが、

価格の横には、このシャツが中国の杭州市の工場で作られたことも掲出している。工場の詳細も商品ページから閲覧でき、工場の場所や内部の様子など詳しい情報を紹介。労働条件にも配慮を怠っていないことをアピールする。

ほかにも、スペインやイタリアのレザー工場や、ベトナムのニット工場など、世界各国に工場があることを紹介し、その一つ一つについて、従業員数や工場主などを紹介し、内部の様子や従業員を写真付きで掲載している。

とある。

我が国でよくあるような、「臭い物語」が極度に強調されているふうではない。
単純に淡々とした事実紹介にとどまっているようで、そこには共感が持てる。
個人的には、強調されすぎた「臭い物作り物語」には辟易している。100倍盛りもいい加減にしてもらいたいと思う。

続いて、エムエムラフルールについては、従来の季節感による商品供給を行っていないそうだ。
もちろん、この企業もエバーレーン同様にウェブ販売のみのSPAである。

季節ごとに決まって大量に商品を生産する旧来のアパレルとは真逆のやり方で、納得のいくまで商品開発を行い、小ロットで売り切る。

一方で、旧来の商習慣や“季節性”を疑い、消費者にとって適切なタイミングで商品を提供できるような体制でものづくりを行う。例えば、店頭では8月になれば秋冬物が並ぶところ「それはメーカー側の論理。8月だったらまだ半袖を着たい人の方が大半でしょう」と旧来の商品展開や季節性について疑問を呈する。

とある。

我が国でも需要はどんどんと体感気温に即した形になっており、そこに適合させる必要があるのではないか。
適合させる努力もせずに毎月のように「高気温が、低気温が、雨が、」などと販売不振を天候要因に押し付けていては100年経っても改善なんてするはずもない。
だったら詳細な天候予想データを100万円くらいで買えよって話になる。

こういう革新的な企業が登場したのはさすがはアメリカだと感じる。
アメリカ社会を基にしたチェーンストア理論が我が国の流通や大手アパレルの基本にある。
いわく「欠品させれば、機会損失が起きる」。

この理論に基づいて大手流通もそれと一体化してきた大手アパレルは組み立てられている。
低価格の生活必需品なら「欠品させない」取り組みは必要かもしれないが、中価格帯以上の「ファッション衣料」を売りたいのだったら、「欠品させない」ことはマイナスに働く要素が大きい。

価格は需給バランスで決まる部分が多い。
いくら人気のトレンド衣料でもその供給が多すぎれば、店頭では売れ残りが出る。
売れ残った商品は値下げされる。
それでも残ればさらに安くなる。

別に服に限らず、大根でもサンマでも同じ理屈だ。

じゃあ、売れ残らないようにZARAのように、今回紹介されているエムエムラフルールのように売り切り御免の体制にすればよいのではないか。
そうすれば投げ売り価格まで値引きせずとも売り切ることができるだろう。

いつまで40年も前に提唱されたチェーンストア理論に縛られているのか。
40年前の高度経済成長期と、2016年の現在ではまったく社会の風潮も環境も異なっている。
いい加減に目を覚まさないとチェーンストア理論と心中することになる。

我が国のアパレルも流通も大手企業は長引く不況ですっかり萎縮しており、新しい取り組みを始める気さえない。
ファクトリエやユナイテッドトウキョウなどの新興企業も出てきているが、それは従来型モデルのマイナーチェンジにしか見えない。

根本的にやり方を変えたエバーレーンやエムエムラフルールが登場するところは、さすがはアメリカというほかない。個人的にはそんなにアメリカという国が好きではないが。

もし、この2社ないし、この2社の方式を完全コピーした企業が日本に上陸すれば、我が国の大手アパレル、大手百貨店、大手スーパー、大手SPAは壊滅的打撃を受けるだろう。