若者に限らず「洋服離れ」「ファッション離れ」というのは少なからずあると思う。
一番の要因は、「低価格品の見た目が良くなったから」だと思う。

何度も書いているが、90年代中ごろまでは、量販店や低価格専門店に並ぶ服と、有名ブランド店で並ぶ服はデザイン性や色柄などの「見た目」が大きく異なっていた。
それが2000年以降、低価格商品の「見た目」(物性品質ということではない)が上昇したことに加えて、ブランド側がOEM/ODMに企画を丸投げしすぎて、商品の見た目が悪くなったため、消費者の間に「低価格品でも十分におしゃれができる」という認識が広まった。

事実、筆者もそのように思っている。

凡百の百貨店ブランドが丸投げして作ったジーンズより、ユニクロのストレッチセルビッジジーンズの方が物性品質も見た目も良い。
これにユニクロのコットンカシミヤケーブル編みセーターを合わせれば、十分におしゃれに見える。

中には変てこりんな商品もあるが、選ぶ側の目がある程度確かなら低価格品の組み合わせでもそれなりにオシャレに見える。

で、ここからが本題だが、そういう要因もあって売上高が低下しているアパレル企業は新しい方策を立てることが求められている。
そのうちの一つがレンタルであり、リユースである。
で、そのレンタルについてだがこんな記事がファッションスナップドットコムに掲載されていた。

小売とレンタルは両立できるか?
クロスカンパニーが「ファッション離れを食い止める」新事業に積極投資
http://www.fashionsnap.com/news/2016-02-25/crosscampany-rental-reuse/

結論から言えば、レンタルで「ファッション離れ」は食い止められないと思うし、小売店との共食いはある程度は起きると思っている。

石川社長はメディア向けのリップサービスが上手い人だから、本気では言っていないと推測するのだが。

昨年9月に日常着のレンタルサービス「メチャカリ(mechakari)」を始動。「アースミュージック&エコロジー(earth music&ecology)」といった自社製品を対象に月額5,800円で借り放題にするサービスで、現在は約2,000人の会員が利用している。新作もレンタルの対象になり、60日間借り続けるとユーザーのものになるサービスが特徴だが、店舗の売上に影響はないという。

(中略)

平均のレンタル着数は1ヶ月7着で、約65%はこれまで同社が展開しているブランドを利用したことがない新規ユーザーが占めることからも「新規顧客を取り込んでいる」と見る。

とのことである。

筆者は個人的にはレンタル衣料にもその市場にもまったく興味はない。
そういう属性の人間が自らの行動に照らし合わせて考えるので、いささか世間常識とは乖離が出るかもしれないがそこはご容赦願いたい。

月額5800円で借り放題という価格設定だが、商品を買うよりはずっと割安である。
クロスカンパニーはタイムセールとか、全品80%オフからさらにレジにて20%オフ、みたいな安売りを得意とするが、定価販売で考えるならレンタルする方が割安である。

5800円という支出でクロスカンパニーの店舗で買える洋服は、下手をすると1枚、上手く買い合わせても3枚が限界だろう。1900円のTシャツ3枚で5700円である。

5800円で借り放題、おまけに60日間かり続けると自分の物になる。
これなら下手に定価で買うよりもずっと「コストパフォーマンス」が高い。
コスト意識に敏感な人なら間違いなくこちらにシフトする。
記事では「店舗の売上に影響はない」としているが、その要因は現在の会員数が少ないからだろう。

会員数は2000人。クロスカンパニーの全店舗数はいくつあるのか?
あれだけ店舗数があれば全国で2000人の顧客が減ったところで、たしかに影響はない。
一地方都市だけで2000人の会員数があるわけではないのだ。

ちなみにレンタル事業での売上高は、単純に掛け算をすると5800円×2000人で、1160万円ということになる。
いろいろとオプションもあるだろうからもう少し増えるとしたって2000万円を越えることはないだろう。
クロスカンパニーの年商規模からすると、かなり構成比は低い。
そりゃ影響はないだろう。なくて当たり前である。

レンタルサービスというのは新規販路の模索という点においては画期的とは思うが、開始半年後で会員数わずかに2000人くらいでは、「将来性云々」という視点で取り上げる方が間違いではないか。

一方で、「新規顧客を取り込める可能性がある」というのはその通りではないか。

というのは、これだけ割安感があるのなら、今までクロスカンパニーという企業の商品を利用しなかった人たちが「めちゃ安いから利用してみようか」と考える可能性はある。
そういう意味での「新規顧客」開発は十分にあり得るだろう。
その点だけは期待できるのではないか。ただし、安さに釣られて来る人は、「安い物」が好きなのであって、そのブランドのファンになる割合は低い。

もっと安い物が現れればそちらに移る。

逆に他社ブランドもレンタル市場に参入すればどうなるだろうか。
ここからは想像の話になるが、おそらく小売店の売上高は激減するだろう。
もしかしたらネット通販の売上高も減るかもしれない。

レンタル売上高は増えるだろうが、その増え方は小売店・ネット通販の売り上げ減をカバーできるものではない。そう推測する。

フォーマル市場が衰退したのはレンタルサービスが普及したからだという意見がある。

それはなるほどそういう一面はあるだろう。
一生のうちに何度かしか着用しないフォーマルをわざわざ高い金を払って買うのもバカらしい。
よほどの金持ちなら別だが。
なら何万円か支払ってレンタルした方が賢い。買えばもっと高い値段を取られるのだから。
もしくはそれこそリユース店で買うかである。

今度は、カジュアルにこれを持ち込もうとしているのだから、会員数が現在の2000人程度ではなく、激増すれば確実に小売店・ネット通販の売上高は減る。
当たり前ではないか。

同じブランドが格安でレンタル、しかも借り放題なら、だれだってそちらに移る。
ブランドが異なるのだったら、「安さはやっぱり魅力だけど、こちらのブランドが好きだから小売店を選ぶ」という選択肢はあるが、ブランドが同じだったら絶対に安い方を利用する。

ジュースが定価販売の自動販売機で売れなくなっているのと同じ理屈だ。
食品スーパーなら割引されて同じ物が販売されているし、コンビニで買えば定価販売でもポイントが貯まる。
自動販売機だけが何の特典もない。

これと同じ事態が起きる。
同じ物は絶対に安い方で買うのが人間の心理である。

レンタル、リユース市場への挑戦というのは、既存手法での販売が伸びないことを考えると重要なことだとは思うが、広まれば広まるほど既存店・既存通販の売上高を侵食する可能性が高い。
筆者にはそう思えてならない。