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南充浩 オフィシャルブログ

ECの速さ競争にそんなに意味があるの?

2016年2月9日 FLAG 0

 アパレルブランドにおけるEC化というのは消費者の利便性を考える上では不可欠なものといえる。
例えば全国の大都市圏に20店舗しかないブランドだとすると、それ以外の地域の人が買えるための手段としてEC化は必要である。
しかし、EC化比率を闇雲に高めることが優れた経営指針ではないことは昨日も書いた。

個人的にはどんなにEC比率が高まったとしても50%以上にはならないのではないかと考えている。

試着はできないし、生地の風合いを触ってみることもできない。
一度は実物を見てから決めたいと思う人も少なくはないだろう。

返品・交換は何度でもできるとはいえ、そのたびに荷造りして配送業者を読んだり、持ち込んだりするのは相当面倒だ。少なくとも筆者はそういう作業がめんどくさい。
何度もしなくちゃならないならそんな通販は利用しない。

さて、昨日に続いて、The FlagのECについてのお題を取り上げてみる。

【 ECにおいて”速さ”より重要な事とは? 】

というものだが、すごく漠然とした問いで受け取り方によってはいかようにも受け取れる。
そもそも速さがそれほど重要かということにもなる。

何日で手元に届くのが「速い」という範疇なのか人それぞれだと思うが、3日~5日くらいは当たり前ではないかと思っている。

このお題の主旨とはいささかズレるが、今後は「速さ」はますます実現しにくくなるのではないかと思う。
ECが伸びれば伸びるほど配送業者に負担がかかる。
早い話が配送業者がパンクしかねない。もうすでにその兆しは出ているのではないか。

個人的な経験談でいうと、筆者はネット通販をほとんど利用しない。
年に10回にも満たない。

昨年11月にユニクロのネット通販を利用した。
その前に利用したのは何か月か前である。

11月の中旬ごろに「ユニクロ×ルメール」のニットジャケットがネット限定割引で4990円にまで値下がりしていた。
これを買おうと実店舗に行ったのだが売り切れていた。
そこで久しぶりにネット通販で買った。

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(4990円に値下がりしたときに買ったニットジャケット)

その前に買ったときは注文してから2,3日以内に到着した。
すごい速さだと感心した。

昨年の夏にアマゾンで、HGリヴァイブ「フリーダムガンダム」のガンプラを買ったのだが、1日半後くらいに到着してこの速さにも感心した。
ちなみにこれが初めてのアマゾンの利用である。

IMG_0093

(HGフリーダムガンダム)

で、11月のユニクロは到着までに5日かかった。
めずらしいなと思って、サイトを見ると「混雑している際は5日くらいかかることがあります」という注意書きがあったが、よほど混雑しているのだと思った。

ユニクロの物流倉庫でバイトをしている知人がいるのだが、その人によると、「昨年秋のネット通販の混雑ぶりはすさまじかった」という。かなりの注文が殺到していたようだ。

年末に、アマゾンでリアルグレードZガンダムのガンプラを買った。
41%引き価格でどこの家電量販店よりも安かったからだ。

今回は2日間が過ぎても届かない。

11月のユニクロの例もあるから「かなり混雑しているのだろう」と予測して、何日でも待つつもりでいた。
一分一秒を争ってリアルグレードZガンダムを組み立てなくてはならないという理由がない。

あるとき、不在票が投函されているのを見つけた。

配送業者に電話してみると、「すみません。まだ午前中の配送が終わっていないので今日何時に届けられるかわかりません」という。
こちらも別に急いではいないので「まあ、年内に届けていただければ大丈夫ですよ」と電話を切ったのだが、その2時間後くらいに届いた。

このやりとりをしたときも相当に荷物が込み合っていたようだ。

こういうことがすでに起き始めている。
今後、各社がEC比率を高めれば高めるほどこういうことは頻繁に起きる。

「EC比率を3割まで高める」とか簡単に言うが、配送業者の問題はどう考えているのだろうか。
このままだと配送業者はいずれパンクしてしまう。

そうなれば「速さ」も何もない。

速さ以上に重要なことは配送業者をどうパンクさせないかということではないかと思う。
これが最重要課題ではないか。

それ以外に、各ブランドが取り組む「速さ」以外の需要なことは、例えばサイトを見やすくする、問い合わせをしやすくする、コーディネイト提案を強化する、など数え上げるとキリがない。

あ、そうそう、モデルに服を着せて背中をピンや洗濯バサミで摘まんでシルエットを修正するなんていうことはご法度だろう。
それは嘘の着用感を提示していることになり、それを買ったお客はリピーターにはならない。
一度は買うかもしれないが、二度目はない。

逆にいうと、各社はECに対する価値作りを「速さ」しかないと考えているのだろうか。
そういうブランドは十中八九失敗するだろう。

ユニクロブーム以降各社が一斉に「安さ」を最大の価値だと考えたことと似ているのではないか。

かつて「安さ競争」で疲弊した業界が、今度は「速さ競争」でさらに疲弊しようというのだろうか。
いつも通りの画一的思考で、ちょっと笑えてくる。
ファッションは自由だとかいう業界のくせに、いつも画一的に横並び競争をしたがる。
この業界は相変わらずである。




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