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南充浩 オフィシャルブログ

日本製ブームに反して国産品比率はさらに低下している

2015年5月1日 未分類 0

 国産回帰と言われている衣料品だが、実態はそうではない。
国産品は増えているどころか減っている。そんな実態を繊研プラスがコラムで報じている。

http://www.senken.co.jp/column/metemimi/madeinjapan0430/

14年の衣類の輸入浸透率が97.0%となった。国内市場に供給される製品のうち日本製はわずか3%。消費者の「安心」「安全」意識の高まりや外国人観光客の増加で日本製の需要が高まっていると言われてきたが、国内生産量は10%減となり実態は異なった

とのことである。

つい2年ほど前までは国産品比率は4%と言われていたから、そこからさらに減ったことになる。

さらにこのコラムは国産品の厳しい現状を突きつける。

繊研新聞社が「メード・イン・ジャパン」製品の販売動向について聞いたところ、アパレル・小売りの51.6%が増加していると回答した。一方、製造業で「増えた」と回答した企業が32.7%で「変わらない」が55.1%という結果だった。製造業からは「多くの消費者はまだ安い商品を求めている」ため「減っている」と答え、国産回帰を実感している企業は限定的だった。

とのことで、この部分は以前にも繊研プラスが別の記事として掲載している。

国産品が以前よりは脚光を浴びているのにどうして製造業は増えないと答えるのかというと、
生地製造にしろ、縫製にしろ、製造量を増やすためには人員と機械設備を増やさねばならない。

この先、日本製ブームが10年後も続いているということになれば、各社とも人員と設備を増やすだろう。
しかし、日本製ブームがいつまで続くかはわからない。
そんな不透明な状況で資金を投入するわけにはいかない。
筆者が経営者でもそう判断する。当然の判断である。

そして、

最大の供給国である中国が全輸入量に占める割合は75.7%、前年比4.9ポイントも下がった。それに代わって増えたのがコストの低いアジアだ。統計上でも消費者の安い商品を求める傾向が裏付けられた格好だ▼店頭では「日本製」のタグを付けた製品を目にする機会が増えた。数字の変化は、ファッションビジネスに携わる多くの人たちにとって日本が中国やアジアと同じ選択肢の一つであることを示している。

と続く。

中国品が減ったのは人件費高騰によるコスト増である。
円安基調は言い訳にならない。なぜなら他のアジア諸国もその条件は同じだからだ。

消費者が安い商品を求める傾向にあると書かれているが、それはそうだろう。
筆者も含めてすっかりと安い服に慣れてしまっている。

服は安くて当たり前という状況になっている。

ここで誤解されがちなことは、ユニクロや外資ファストファッションの登場で服が安くなったと思い込んでいる人が多数業界にもいるが、低価格衣料品は35年以上前から存在していた。
イトーヨーカドーやジャスコ、イズミヤ、ダイエー、マイカルなどのいわゆる総合スーパーマーケットが低価格衣料品を販売していたし、今もしている。

また、キャビンやらリオチェーンやらの低価格チェーン店も存在した。

これらに商品を納入する量販店向けアパレルというのも多数存在したし、現在も存在している。

筆者は大学を卒業するまで自分で服を購入したことがなく、亡き母がジャスコかイズミヤで購入してきた1900円くらいのトップスとズボンを年間5着くらいで着まわしていた。

23歳くらいまでジャスコとイズミヤの1900円の服で育てられた。

そんなわけだから低価格衣料品の生き証人みたいなものである。

ただし、今と20年前が異なる点は、低価格衣料品の「見た目」がグレードアップしている点にある。
20年くらい前までは低価格衣料品といわゆるブランド品は見た目自体が異なっていた。
トレンド物が欲しければ、ブランドで買うほかなかった。

今はほとんど同じ「見た目」になっている。
逆にいえばブランドの企画力が低下したともいえる。

似たような見た目なら、安い方で良いと思う人が増えることは当然である。

かくして現在の状況になった。

そしてこのコラムはこう締めくくっている。

ただ、国内の生産基盤は、何とか維持できている状況。日本製を付加価値の源泉として位置付けるのであれば、選択肢を失わないための努力も必要なのでは。

まったくその通りだが、正直にいうと、「日本製=付加価値の源泉」という構図はあまり賛同できない。
この記事がその構図に賛同しているという意味ではない。

業界に広く蔓延している認識に対して賛同できない。

なぜなら、日本製であろうとモサっとしたデザインの商品は誰もほしくないからだ。
しかも価格が高い。
高くてモサっとした商品なんて存在価値自体がないと考えている。

産地の製造加工業者や業界のエライさんが勘違いしている場合が多い。
「日本製だから価値がある」と考えている場合があるが、いくら日本製でも商品デザインがダサければそんな物は売れるはずもない。

産地ブランドが失敗するのは商品デザインが悪いからという場合が相当数ある。

「日本製=付加価値の源泉」となりうるのは、商品デザインがそれなりに良い場合に限られるというのが個人的な意見である。

「日本製」だけに胡坐をかいているようなブランドは淘汰されても当然である。



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