先日、と言っても3月末のことになるがエドウインの今秋冬展示会にお邪魔した。
そのことは以前にも書いたが、そのときに書いていなかったのが新ラインの「Eスタンダード」である。

エドウインのほとんどの商品は生地から縫製、洗い加工まで国産なのだが、それに加えて海外輸出を視野に入れた新ラインである。
価格はちょっと幅が広くて、8000~12000円くらいである。
クラッシュ・リメイク加工商品のみが15000円~16000円となっている。

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メイン商品群は8000~12000円だが、8000円、8500円、9000円、10000円という価格が多く、11000円、12000円はどちらかというと少数派である。
ざっと型数だけを見ると、全社が6・5割くらい、後者が3・5割くらいだろうか。

これなら海外輸出をしても現地価格120~200ドルの間で販売できる。
一般的に日本製ジーンズは評価が高くて比較的高額でも売れるといわれているが、それでも限度はある。
ある程度の数量を販売したいのなら200ドルが限度だろう。

ラグジュアリーブランドにはもっと高額なジーンズも売られているが、欧米でラグジュアリーブランドを買うのは一部の富裕層に限られている。
日本のように低所得層が背伸びをしてバカ高いラグジュアリーブランドを購入することはない。
だから、ラグジュアリーブランドの高額ジーンズは極めて少数派に向けた商品だと考える方が適切であろう。

かつて旧ドゥニームが3万円弱する国産ジーンズをイギリスに輸出したところ、現地価格が5万~7万円になってしまい、あまり売れずに撤退したことを書いたことがあるが、いくら品質が良かろうとたかがジーンズに5万円とか7万円を支払う消費者数というのは限られているということである。

そういう意味では、いわゆる「中価格帯」を企画製造している国内ナショナルブランドが海外輸出に本腰を入れたというのは、朗報といえる。
もちろん、ここには新たに親会社となった伊藤忠商事の思惑も多分に含まれていると考えられるが。

まれに「ラグジュアリーブランドのジーンズはもっと高くても売れているのだから、国内のマニアックブランドの商品も同等の価格で売れるのではないか?」と主張する人がいるが、これはとんでもない勘違いである。
ラグジュアリーブランドと国内マニアックブランドではブランドステイタスが圧倒的に異なる。

例えば10万円のジーンズを買いたいと思ったときに、多くの人はラグジュアリーブランドを思い浮かべる。
それだけブランドステイタスが高いからだ。ラグジュアリーブランドはそのブランドステイタスを獲得するために莫大な広報・告知・販促予算を毎年計上している。
ほとんど告知活動もしていないようなマニアックブランドがなぜ同じ結果を得られると考えるのだろう?

それほど安易にブランドステイタスが獲得できるなら誰も苦労はしない。

以前、中価格帯の国産ジーンズを海外輸出できないかと考えたことがある。
ある先輩に相談したところ、この企画が動き始めた。
デニム生地はクロキさんが協力してくれることになった。
ところが昨年末にこの先輩が急逝されてしまい、この企画は終わった。
非常に残念だったが、その分、エドウインの「Eスタンダード」に期待したいと思う。

ところで、この「Eスタンダード」のメンズはスキニー、スリムテイパード、レギュラーストレート、ルーズストレート、ワイドストレートの5シルエットがあるが、個人的には5シルエットも必要だろうかと疑問に感じている。
とくにルーズストレートとワイドストレートはどちらか片方に絞った方が良いのではないかと思う。
あまり選択肢を増やしすぎても逆に消費者には違いがわからずに選びにくい結果になる。
それはこれまで国内ナショナルブランド各社が経験してきたとおりではないか。

昨今、「日本製」の大々的キャンペーンが行われているが、いくら日本製と言えども超高価格品を購入できる消費者数はそれほど多くない。
日本製品を再度広く普及させようと考えるなら、低価格はコスト的に無理なので、中価格帯を目指すしかないと個人的に考えている。
超高価格品・高価格品を広く普及させるというプランは無理がある。
はっきり言えば「無い袖は振れない」のである。

ワイシャツなら鎌倉シャツの4900円、ジーンズならエドウインの8000~9500円というところが「中価格帯」といえるだろう。

このあたりの商品を作って、売り方を工夫して「今よりも」普及させることが現実的だろう。
もちろん、もう少し工夫して「児島ジーンズ」のように5900・6900円あたりを国産で企画製造しても良いだろう。

ブランドステイタスのないアパレルや製造工場が「国産」という看板だけで超高価格品・高価格品を企画製造したところで到底売れない。なぜならブランドステイタスがないからだ。ブランドステイタスは一朝一夕に築けるものではない。
ならば、比較的買いやすい中価格帯を企画製造する方が現実的ではないだろうか。
とはいえ、そこでも売り方・見せ方・伝え方に工夫は必要だ。

単に「国産品」という看板だけでは売れない。
それは衣料品に限らずどの分野の製品も同じである。
作って店頭に並べるだけで売れた時代はとっくの昔に過ぎ去っているし、そんな時代はもう二度と戻ってはこない。
その前提に立ってビジネスを組み立てるべきであろう。